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4.中学校時代

13.罪の意識はどこから?

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 なんで賢太くんがこんな時間に私の家の前にいるのだろう。

「どうしたの? 何かあったの?」
 急いで賢太くんの傍まで駆けて、彼の様子を窺う。

「どうもしない……いや、十分あったんだけど……疲れた……」

 ゆっくりとどこかで腰を落ち着けて話したいが、そうもいかない。
 それを賢太くんは分かっていたのか、「ちょっとだけ」と言いながら、私を抱き締めた。

「ごめん、少しこのままで」
「うん……」

 私も賢太くんの背中に手を回し、ぎゅっと抱き締める。

 この罪の意識はどこから?
 何に対しての罪なのだろうか。

 賢太くんへの罪の意識なのか、それとも神田先輩への罪の意識なのかよく分からない。

 神田先輩とは好き同士ではあるが、付き合ってはいない。

 だけどなんだか後ろめたいのだ、何となく。

 賢太くんに隠れて逢瀬を重ねていることに対する罪なのか、神田先輩という人がいながら、他の男と抱き合っていることなのか。

「わりい、ありがとう」

 賢太くんがパッと私を離した。
「ねえ、何があったの? 明日、学校が終わったら話せる?」
「無理。予定があるんだ。だけど、週末なら大丈夫」
「分かった。じゃあ週末、会おう?」
「了解、ありがとな。じゃあまた」

 賢太くんの背中が若干小さく見えた。
 何があったのか、気になりすぎてその晩は眠れなかった。

 -------------------------------

 さすがに百合子ちゃんに賢太くんの様子を話すことが出来なかった。
 言えば、週末ついていく、と言いかねない。

 週末になって、賢太くんと公園で待ち合わせた。
 相変わらず賢太くんの美しさに、周囲の大人たちが見とれている。

「ここじゃ人の目があって話しづれえ」

 ということで、カラオケルームに入ったのはいいが、かなりの密室にちょっとどぎまぎしてしまう。
 これだけの美形だ。
 薄暗い中で隣り合わせて座り、密着している状況だ。
 キスでもしそうな勢いである。
 それだけ、賢太くんが私に密着して離してくれなかった。

「あー……疲れた」
「一体、どうしたの?」

 賢太くんは私の肩に額を乗せる。

「ん……、いわゆる、妬みかな」

 賢太くんの話によると、賢太くんの男子校の近くにある共学の中高一貫校があるのだが、そこに通う女子学生たちが男子校付近を最近うろついているという。
 目的は賢太くんらしい。

 毎日誰かしらに声をかけられ、デートしようと誘われるのだという。
 適当にあしらえばそれで終わりだが、そう簡単に終わらなかった。

「別に他学生はいいんだよ。問題は学校内のやつだ。勉強は出来ても人間性まで出来てるやつはそう多くはない」

 賢太くんがすべてを持っているが故に妬みも相当にすごいのだという。

 小学校ではみんながお金持ちだったから、そこまでイジメはなかった。むしろ賢太くんは羨望の的だった。

 けれど、今の学校はお金持ちのみが通っているわけではない。
 熾烈な入試を突破した一般家庭の子も来るのだ。

 すべてを持っていて、他学校の女子からも言い寄られてもなびかない姿が癪なのだろう。

「友達はいないの?」
「いねえよ。全員がライバルだ」

 前の人生でも同じだったのだろうな。
 たった一人きりで戦っていたかと思うと、切なくなる。

「そっか……私がいるから安心してね。ほら、百合子ちゃんもいるじゃん」
「ははっ、百合子か。まあ、そうだな」

 猫のように私に甘えてくる賢太くんは、私の首筋に鼻をくっつけた。
「くすぐったいってば」
「良い匂いする」
 私の匂いを嗅いで、深い吐息をする。

 それが妙にエロチックでヤバかった。

「ちょ……、恥ずかしい……」
「もうちょっとこのままでいさせて?」
「い、いいけど……」

 性的な興奮を覚えてしまう自分がいて、ばつが悪い。
 13歳の子供に興奮してどうするんだろう……。
 賢太くんは特別なのかな……妙に色気があるし。

 もう少し大きくなれば、賢太くんとそういうことをするのだろうか。
 いやでも……、賢太くんは女になりたいんじゃ――。

「んっ……」
 首筋に賢太くんの鼻がかすれたのを感じてしまい、変な声が洩れてしまった。

「ごめん」

 賢太くんがパッと顔を離して、再び大きなため息をつく。

「ありがとな、聞いてくれて」
 誤魔化すように礼を述べた賢太くんの耳が真っ赤に染まっていた。

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