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4.中学校時代
7.やくそく
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なかなか百合子ちゃんに都合つかない日がなかったので、正直に言うことにした。
「えっ! それで!? 今日花壇に行くの?」
百合子ちゃんがやや興奮しているので、落ち着かせようとなだめる。
「いや、でもさ、高校生だよ? うちらのことガキだと思ってるじゃん」
「そんな人ばかりじゃないでしょうよ」
少なくとも神田先輩は私のことを子供扱いしない。
そう信じている。
「だからといって、女として見るのもちょっと気持ち悪くない?」
それもそうだが……。
ただ、私の心と体がちぐはぐな今、ちょっと実感が薄いのだ。
そう、私自身は大人な感覚なのが当たり前で、決して12歳、13歳の少女の心ではない。
だから百合子ちゃんの反応の方が至極真っ当なのだ。
「そう……だね」
だんだんと自信を無くしていく。
私は男を見る目がないのだ。残念なことに。
だから、慎重にいくべきなのだろうが……、前の人生では縁の無かった誠実そうな男性にどこかへ行こうと自然に誘ってくれたことに対して、だいぶ浮かれていたようだ。
「じゃあみんなでいこ?」
百合子ちゃんの提案に、ちょっと残念な気持ちになったのは言うまでもない。
憎からず思っていたのだろうな、と自分の気持ちに気付く。
「そうだね。みんなでいこっか。賢太くんもさ……」
「あいつはいいわーと思ったけど、まあ女二人じゃ何かあったときに危ないしね。賢太も誘おう」
ということで、二人で花壇に向かうことにしたのだ。
どうせ神田先輩もデートのつもりで誘ったわけでもなさそうだし、みんなで行った方が賑やかで楽しかろう。
「あれ、会田さん。お友達ですか?」
百合子ちゃんの存在に気付いた神田先輩が開口一番、訊ねてきた。
「はい、私の親友です。植物園のことを話したら彼女も来たいって言ってて……大丈夫ですよね?」
「もちろん! 嬉しいですよ。他にも来たいという人がいたら是非」
やっぱり神田先輩はそんなつもりで誘ったわけではなそうだ。
ちょっぴりガッカリする。
「じゃあーあんたの彼氏も連れてきたらどう?」
百合子ちゃんがこれ見よがしに私に訊いてきた。
「そうだね。声をかけてみようかな」
「彼氏さんもぜひ! 大勢で行くのも楽しそうですね。僕、初めてだから嬉しいです」
そう言って、ニコニコと微笑む神田先輩を見て、本当に内心ガッカリするのだった。
――なんだかんだで好きになっちゃってたんだろうな。
自分の惚れやすさにもちょっと辟易する。
----------------------------------
結局、植物園にはみんなで行く事にした。
夏休みではなく、夏休みになる前の週末に行くことになったのだ。
待ち合わせ場所に、一番乗りしたのは神田先輩のようだ。
二番乗りは私。
「神田先輩、お待たせしました」
「あ、会田さん、おはようございます。いやあー久しぶりの感覚にワクワクしすぎて夜眠れませんでした」
子供のようにはしゃぐ彼を見て、本当に植物が好きなのだと実感した。
「楽しみですね」
神田先輩の服のセンスは普通だ。
どこにでもいる高校生らしいファッション。
それがかえって良かった。
ザ・普通。
40の自分に響くんだろうなあ。
「お、圓山さんが来ましたね」
優雅に駅前のロータリーをぐるりと回って停まった高級外車から降りる百合子ちゃんの姿があった。
その後ろの高級外車も続いて、降りてきたのが賢太くん。
この金持ちがッ! と思いつつ、手を振ってくる彼らに手を振り返した。
「すごいお金持ちなんですねー。あの車、なかなかお目にかかれない」
あはは、と呑気に笑う神田先輩。
「庶民には買えないですよね……」
苦笑いするしかなかった。
「宣子、お待たせ。家まで迎えに行ったのに」
賢太くんが彼氏のふりをして、私の肩に手を回して引き寄せてきたので、その手の甲をはたいた。
「いてっ」
「人の前でベタベタするのは禁止」
神田先輩に誤解されたくない――いや、もう完璧に誤解されているが、少なくともベタベタされているところを見せたくなかったのだ。
「では! 行きましょうか!」
神田先輩は私たちの絡みを気にする素振りは全くなく、植物園に意気揚々と向かおうとしている。
なんだか寂しかった。
「えっ! それで!? 今日花壇に行くの?」
百合子ちゃんがやや興奮しているので、落ち着かせようとなだめる。
「いや、でもさ、高校生だよ? うちらのことガキだと思ってるじゃん」
「そんな人ばかりじゃないでしょうよ」
少なくとも神田先輩は私のことを子供扱いしない。
そう信じている。
「だからといって、女として見るのもちょっと気持ち悪くない?」
それもそうだが……。
ただ、私の心と体がちぐはぐな今、ちょっと実感が薄いのだ。
そう、私自身は大人な感覚なのが当たり前で、決して12歳、13歳の少女の心ではない。
だから百合子ちゃんの反応の方が至極真っ当なのだ。
「そう……だね」
だんだんと自信を無くしていく。
私は男を見る目がないのだ。残念なことに。
だから、慎重にいくべきなのだろうが……、前の人生では縁の無かった誠実そうな男性にどこかへ行こうと自然に誘ってくれたことに対して、だいぶ浮かれていたようだ。
「じゃあみんなでいこ?」
百合子ちゃんの提案に、ちょっと残念な気持ちになったのは言うまでもない。
憎からず思っていたのだろうな、と自分の気持ちに気付く。
「そうだね。みんなでいこっか。賢太くんもさ……」
「あいつはいいわーと思ったけど、まあ女二人じゃ何かあったときに危ないしね。賢太も誘おう」
ということで、二人で花壇に向かうことにしたのだ。
どうせ神田先輩もデートのつもりで誘ったわけでもなさそうだし、みんなで行った方が賑やかで楽しかろう。
「あれ、会田さん。お友達ですか?」
百合子ちゃんの存在に気付いた神田先輩が開口一番、訊ねてきた。
「はい、私の親友です。植物園のことを話したら彼女も来たいって言ってて……大丈夫ですよね?」
「もちろん! 嬉しいですよ。他にも来たいという人がいたら是非」
やっぱり神田先輩はそんなつもりで誘ったわけではなそうだ。
ちょっぴりガッカリする。
「じゃあーあんたの彼氏も連れてきたらどう?」
百合子ちゃんがこれ見よがしに私に訊いてきた。
「そうだね。声をかけてみようかな」
「彼氏さんもぜひ! 大勢で行くのも楽しそうですね。僕、初めてだから嬉しいです」
そう言って、ニコニコと微笑む神田先輩を見て、本当に内心ガッカリするのだった。
――なんだかんだで好きになっちゃってたんだろうな。
自分の惚れやすさにもちょっと辟易する。
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結局、植物園にはみんなで行く事にした。
夏休みではなく、夏休みになる前の週末に行くことになったのだ。
待ち合わせ場所に、一番乗りしたのは神田先輩のようだ。
二番乗りは私。
「神田先輩、お待たせしました」
「あ、会田さん、おはようございます。いやあー久しぶりの感覚にワクワクしすぎて夜眠れませんでした」
子供のようにはしゃぐ彼を見て、本当に植物が好きなのだと実感した。
「楽しみですね」
神田先輩の服のセンスは普通だ。
どこにでもいる高校生らしいファッション。
それがかえって良かった。
ザ・普通。
40の自分に響くんだろうなあ。
「お、圓山さんが来ましたね」
優雅に駅前のロータリーをぐるりと回って停まった高級外車から降りる百合子ちゃんの姿があった。
その後ろの高級外車も続いて、降りてきたのが賢太くん。
この金持ちがッ! と思いつつ、手を振ってくる彼らに手を振り返した。
「すごいお金持ちなんですねー。あの車、なかなかお目にかかれない」
あはは、と呑気に笑う神田先輩。
「庶民には買えないですよね……」
苦笑いするしかなかった。
「宣子、お待たせ。家まで迎えに行ったのに」
賢太くんが彼氏のふりをして、私の肩に手を回して引き寄せてきたので、その手の甲をはたいた。
「いてっ」
「人の前でベタベタするのは禁止」
神田先輩に誤解されたくない――いや、もう完璧に誤解されているが、少なくともベタベタされているところを見せたくなかったのだ。
「では! 行きましょうか!」
神田先輩は私たちの絡みを気にする素振りは全くなく、植物園に意気揚々と向かおうとしている。
なんだか寂しかった。
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