40でなぜかもう一度人生をやり直すことになりました

ジカ

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３．小学校時代

２．賢太くん、モテモテ

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　血は争えないというのか。

　小学校から入ってきた新しい女の子たちが賢太くんを取り囲み、きゃあきゃあと黄色い悲鳴をあげている光景をまざまざと見せつけられる羽目になった。

　それもそうだな。
　賢太くんは父親に似て美形だから。

　困った顔も麗しく、余計に放っておけないのだろう。

　腕を組みながらウンウン、と頷いていると、賢太くんが私の方を見て合図をしきりに送ってくるではないか。

　――さしずめ、ヘルプミー！　と言ってるのであろうか？

　分かりきったことを格好をつけて物思いにふける。

「何よ、モテモテだからって調子に乗ってんじゃわよ」

　私の近いところで、一人の女の子がそうぼやくのが聞こえてきた。
「ん……？」

　色素が薄いのか？　と思うほどに真っ白な肌をした女の子だった。

　――百合子ゆりこちゃん。

　百合子お嬢様。

　幼稚園組からの級友であり、圓山財閥まるやまざいばつのお嬢様だ。
　はるばるとこの名門幼稚園に入り、小学校にそのまま上がったのだ。

「百合子ちゃん、気にくわないの？」
　前の人生でも百合子ちゃんは賢太くんをいじめ抜いたのだ。

　私は自分のことで精一杯で周囲のことに無関心だったせいで、記憶にない。

「宣子ちゃん、気にならないの？」
　瞳の色も薄く、くっきりとした白茶色の目だ。

「全く。私には関係ないもん」

「おいっ！　助けろよ、宣子ちゃん！」

　遠くから賢太くんの声が聞こえてくる。
　振り返ったが、相変わらず女子たちに囲まれているため、スルーする。

「おぉぉい……助けてぇ」

「ねえ？　調子に乗ってるよね？」
　百合子ちゃんが訊ねてきたので、私は「乗ってないと思うよ。本当に困ってると思う」と答えた。
「じゃあ何で助けてあげないのよ！？　あんた、冷たいわね、割と」
　百合子ちゃんがぎょっとして私の顔を見つめる。

「いや……」

　女の敵を作りたくないのだ、正直。
　賢太くんと大の仲良し位置がばれると困るのだ、色々と。
　静かにしていたいので、賢太くんをスルーしているのだ。

「……ふん、まあ、分かるわよ」

　百合子ちゃんが賢太くんの周囲にいる女子たちを一瞥して独りごちた。

「何が分かるの？」
　どうして百合子ちゃんが賢太くんをいじめたのか気になる。

　あからさまな嫌がらせに、賢太くんがピイピイと泣いたのをかすかに覚えている。

「気に入らないのよ。私よりも注目されているのが」

　――おお、お嬢様らしい答えというか……蝶よ花よと育てられたら、そうなっちゃうのかな……。うちの母みたいに。

　要はすねているのか。

「構ってほしいの？」

「なっ……そんなんじゃないわよ！」

　図星だったのか、百合子ちゃんは顔を真っ赤にさせて私を怒鳴りつける。

「大丈夫だよ、百合子ちゃん。私がいるじゃん」
　にこっと微笑んで、百合子ちゃんの手を取る。

「仲良しだよ！」

　そう言うと、百合子ちゃんはパッと手を離して、「ふんっ！」とそっぽ向いたが、すぐにちらっと振り返って、「本当？」と小さな声で確認してきた。

「本当だよ。百合子ちゃん、本当はとても優しい子って知ってるもん」
「……分かってるじゃない」

「じゃあ仲良しだね！」

　私たちは友達になった。

　まさか、この時をきっかけに百合子ちゃんと大親友になり、近い未来に百合子ちゃんのおかげで人生が開けるとは思わなかったのだ。

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