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2.幼少時代
6.大人たちの事情が幼稚園にもあった
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……だがしかし、幼稚園という神聖な場所(のはず)が、ここまで穢れていたとは。
私が本当に園児だった頃に全く気付いていなかった大人たちのありとあらゆる事情が蔓延っている。
まず、担任の先生。
彼女は24歳で独身……だが、不倫をしていることが何となく分かる。
他クラスの既婚である先生とだ。
すれ違う際に意味ありげな視線がねっとりと絡みつく。
それだけで私はピンときた。
園児には分からないであろうと高を括っているせいだ。
だが、私以外にも大人の視線に敏感な子供はいくらでもおろう。「~かもしれない」という想像力が欠如しているのか。
だからか、不倫出来るのか。
私とて不倫を全否定するつもりはないが、この二人に限っては何やら深い事情があって不倫をしているわけではなさそうだ。
ただただ純粋にスリルを楽しみ、お互いに違う方向を見ながらの火遊びだ。
「宣子ちゃん? どうしたの?」
私が神妙な顔つきで物思いにふけっていたら、当該の先生がしゃがみ込んで私の顔を覗き込んできた。
「うっ……」
思わず唸ったので、先生がますます心配そうにする。
「なんでもないです……」
「そう? 宣子ちゃん、いつも何かを考えているし、苦しそうだよ?」
――あんたのせいやないかい、と言いたいところだが、我慢。
仕方ない。
この先生はまだ24歳のピチピチ女子で、すっげえ可愛い顔をしている。
それを先輩である既婚先生が手籠めにしてしまったのだ。
もしかしたら騙されているのかもしれない……と思ったが、そうでもなかったようだ。
「ねえ、先生って彼氏いるんですよね」
「? そうよ?」
「どんな人なんですか?」
「なぁに? 宣子ちゃん、恋バナに興味あるのー?」
24歳の女の子らしくキャピキャピとはしゃいでくる先生。
まだまだ大人とは言いがたい。
「うーん、素敵な人だよ! あのね、ここだけの話……先生、もうすぐ結婚するんだぁ」
――え?
「うふふ、宣子ちゃんビックリした? 幼なじみの子と結婚するの」
「へ、へえ……同じ年なんですか?」
「うん!」
――待てよ。不倫相手のアイツは十歳くらい年上のハズだが……?
「いいですね! 私も結婚したい!」
「宣子ちゃんはどんな子と結婚するんだろうね~?」
うふふあはは、と先生は脳天気に笑っていた。
つまりこの先生は、小悪魔系だったのか……。
結婚を約束している幼なじみと付き合いながら、同時に火遊びとして十歳上の既婚者といたす……。
多分、自覚しててやってるんだろうな。
――先生、悪い女っすね。
私がニヤリと不敵な笑いを浮かべると、先生はキョトーンとして首をかしげていた。
その仕草も男が見たらハートを鷲掴みにされるほどの可愛さがある。いやこれも計算なのかな。
何となくだが、こういう悪女たちは、同じ種の悪女とはつるまない。
敵でもないが、かといって味方にもなり得ない、と無意識に分かってるからだろうか。
私もそのクチの悪女だったので、よく分かる。
好きでもない男(しかしヤッてもいい男に限る)をたぶらかして、自分に夢中になっていく様が快感で仕方がなかった時期がある。
先生もそんなタイプなのだろう。
愛されているのに、もっと愛して欲しい貪欲なタイプ。
いや、もしかしたら先生にも毒親がいるのかもしれない。
年を重ねるつれに色んな人の事情を知ることによって、実際に見えているものは表面的なものでしかないと分かってきた。
――いくら複数の男に夢中にされても、満たされないのだ。
もっともっと、と追い求めてしまう様は、まるで餓鬼のようだった。
「ふう……」
仕事のために立ち去る先生の後ろ姿を見て、盛大なため息をついた。
私が本当に園児だった頃に全く気付いていなかった大人たちのありとあらゆる事情が蔓延っている。
まず、担任の先生。
彼女は24歳で独身……だが、不倫をしていることが何となく分かる。
他クラスの既婚である先生とだ。
すれ違う際に意味ありげな視線がねっとりと絡みつく。
それだけで私はピンときた。
園児には分からないであろうと高を括っているせいだ。
だが、私以外にも大人の視線に敏感な子供はいくらでもおろう。「~かもしれない」という想像力が欠如しているのか。
だからか、不倫出来るのか。
私とて不倫を全否定するつもりはないが、この二人に限っては何やら深い事情があって不倫をしているわけではなさそうだ。
ただただ純粋にスリルを楽しみ、お互いに違う方向を見ながらの火遊びだ。
「宣子ちゃん? どうしたの?」
私が神妙な顔つきで物思いにふけっていたら、当該の先生がしゃがみ込んで私の顔を覗き込んできた。
「うっ……」
思わず唸ったので、先生がますます心配そうにする。
「なんでもないです……」
「そう? 宣子ちゃん、いつも何かを考えているし、苦しそうだよ?」
――あんたのせいやないかい、と言いたいところだが、我慢。
仕方ない。
この先生はまだ24歳のピチピチ女子で、すっげえ可愛い顔をしている。
それを先輩である既婚先生が手籠めにしてしまったのだ。
もしかしたら騙されているのかもしれない……と思ったが、そうでもなかったようだ。
「ねえ、先生って彼氏いるんですよね」
「? そうよ?」
「どんな人なんですか?」
「なぁに? 宣子ちゃん、恋バナに興味あるのー?」
24歳の女の子らしくキャピキャピとはしゃいでくる先生。
まだまだ大人とは言いがたい。
「うーん、素敵な人だよ! あのね、ここだけの話……先生、もうすぐ結婚するんだぁ」
――え?
「うふふ、宣子ちゃんビックリした? 幼なじみの子と結婚するの」
「へ、へえ……同じ年なんですか?」
「うん!」
――待てよ。不倫相手のアイツは十歳くらい年上のハズだが……?
「いいですね! 私も結婚したい!」
「宣子ちゃんはどんな子と結婚するんだろうね~?」
うふふあはは、と先生は脳天気に笑っていた。
つまりこの先生は、小悪魔系だったのか……。
結婚を約束している幼なじみと付き合いながら、同時に火遊びとして十歳上の既婚者といたす……。
多分、自覚しててやってるんだろうな。
――先生、悪い女っすね。
私がニヤリと不敵な笑いを浮かべると、先生はキョトーンとして首をかしげていた。
その仕草も男が見たらハートを鷲掴みにされるほどの可愛さがある。いやこれも計算なのかな。
何となくだが、こういう悪女たちは、同じ種の悪女とはつるまない。
敵でもないが、かといって味方にもなり得ない、と無意識に分かってるからだろうか。
私もそのクチの悪女だったので、よく分かる。
好きでもない男(しかしヤッてもいい男に限る)をたぶらかして、自分に夢中になっていく様が快感で仕方がなかった時期がある。
先生もそんなタイプなのだろう。
愛されているのに、もっと愛して欲しい貪欲なタイプ。
いや、もしかしたら先生にも毒親がいるのかもしれない。
年を重ねるつれに色んな人の事情を知ることによって、実際に見えているものは表面的なものでしかないと分かってきた。
――いくら複数の男に夢中にされても、満たされないのだ。
もっともっと、と追い求めてしまう様は、まるで餓鬼のようだった。
「ふう……」
仕事のために立ち去る先生の後ろ姿を見て、盛大なため息をついた。
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