216 / 242
215話 魔界死地誘引
しおりを挟む
その不気味な声の鳴った方に皆が注視すると、ズングリと大柄なジビエの背後に、影のごとく張り付いていた何者かが、真横にずれるようにしてその姿を現した。
「はえ?な、なんですか? ジビエさんの後ろに誰かいるんですか?
ひゃっ! アレは……ま、魔物!?」
ユリアが、その闖入者(ちんにゅうしゃ)に指を差して戦慄した。
なるほど確かに、その者の姿とは、まさしく魔物と形容するに相応しく、月光の下にさらされたその風体とは、どう見ても人間の"乾物(かんぶつ)"。
あの木乃伊(ミイラ)そのものであり、それが聖者のごとき金刺繍の煌めく羽衣(はごろも)を緩やかに身にまとい、目玉のない暗黒の眼窩(がんか)を勇者団に向けて立っていた。
その妙に生白い、動く屍としか云えぬ者は、どうやら呼吸をする度ごとに、体内の心臓が内部より輝いているようで、その胸骨(アバラ)の輪郭をオレンジ色に縁取って明滅させる姿とは、さながら屍のランプのようであり、窮(きわ)めて不可思議なる外見をしていた。
「やあやあ皆様、初めまして。我輩こそは、このジビエ=マルカッサンの盟約者にして、彼(か)の誉れ高き選(よ)り抜きの七人集。
"暗黒鹵獲団"(あんこくろかくだん)のクワォリーと申すもの。
どうか以後お見知りおきを──」
屍蝋化(しろうか)したような長身の男が再度発言をすると、その頭髪のない頭上に、無数の光のナイフようなものが現れ、それらが後光のように、彼の後頭部辺りの空間に放射線状に配置され、キュラキュラと廻っては目映(まばゆ)く発光した。
その様、言うなれば、悍(おぞ)ましき邪聖の偶像(イコン)、といったところか──
「ひゃっ!! しゃ、喋った!?」
ユリアは魔法杖を握りしめ、その不死系の上級な魔物にしか見えぬ者へと神聖魔法を唱えるべく身構えた。
と同じく、その背後の神聖魔法に長じたアンとビスも臨戦態勢に入っている。
「へぇ、よーやくソレらしいののおでましかい。
フンフン。チョイと見たところ、不死系(アンデッド)のソコソコのオヤダマってーところだね?
ねぇねぇカミラー? アンタさ、コイツに見覚えは?」
マリーナも背中に担いだ大剣の柄(つか)に手を這(は)わせながら腰を落とした。
「──知らんわ」
どうやらカミラーの死霊騎士部隊の所属ではないようだ。
「うん。話の筋からいくと、お前がその光属性の勇者を堕落させた張本人となるわけか。
だが、その暗黒鹵獲(ろかく)──とやらはなんだ?」
シャンも、胸前で腕を交差させる形で両腰のケルベロスダガーに手をかける。
「フム、ジビエ君。今宵はまた、かように美しい女性たちを消し炭にするか。
よかろうともよかろうとも、いつも通り我輩が手を貸そうではないか。では失礼をばして──」
クワォリーと名乗る謎多き化生(けしょう)の者は、シャンの問いかけになんら答えることもなく、再びジビエの背後に回った。
「ん、じゃ腹一杯喋ったことだし……あとはお楽しみといくか」
ジビエ=マルカッサンは、その場に革の手袋と靴とを乱雑に放棄し、逞(たくま)しい両腕を上げつつ、大きく仰(の)け反り始めた。
「あえっ!? ちょ、ちょっと待ってくださいっ!! お、お楽しみってなんですかー!?」
ただならぬ殺気の膨張に、思わず後退(あとずさ)るユリアだった。
「フム、古来"享楽"とは、行き着くところすなわち是(これ)虐殺と、まぁ相場は決まっておるが……まぁなんとも捻(ヒネ)りのないヤツじゃて。
三色馬鹿娘らよ、来るぞ……」
カミラーは軽侮を込めて、妖しく発光するジビエを睨(ね)めつけた。
「ンフフフフフ……きたきたきたきたァッ! こここ、これだから用心棒稼業は止めらんねぇってんだぁッ!!」
どうやらジビエの体内には、背後からクワォリーが溶けるように侵入を果たしたようであり、その禍々しき人魔融合術により、その顔と云わず手と云わず、その表皮のすべては鋼の光沢を備えてゆき、ピシッ!パキッ!とひび割れ、その内よりオレンジの輝きを外部に漏れ出させていた。
また、体格もひとまわりほど肥大化したようで、黒いインバネスの各所が、ミリミリ、バツッという厭(イヤ)な音を放っていた。
さらに、その頭部の左には、水牛を想わせるような鋼鉄の角が一本、焦げ茶色の長髪をかき分けかき分け夜空へと伸び、両の瞳は鞴(ふいご)で吹かれた石炭の如く燦然(さんぜん)と輝いてゆく。
「さぁて! 待たせたなお嬢ちゃん達ッ!!
一気にいくぜー!!」
そう吼(ほ)えるように怒号を放ったジビエは、唐突にその場にしゃがみ込んだかと想うと、その鋼の左拳で草の大地を打ったのである。
すると、打撃の落ちた地面は揺れ、その拳の触れたところから、恐るべき速度で深紫の光が放射線状に広がり、それは瞬時にして光のドームへと拡大しつつ、スッポリとドラクロワたちを包み込んだのである。
「ウム。戦場を半魔界へと移しおったか……。
なるほどな、こうしてゴルゴン某(なにがし)に都合の悪い人間を闇から闇に葬ってきたと、そういう訳か……」
ドラクロワが、ちっとも面白くもなさそうに察して述べた通り、もし一般の人間、例えば近所の何者かが、最前からのこのやり取りを観ていたとすれば、突然半透明なドームがジビエの足元より広がり、それが激しく閃光したかと思うと、そこはもう只の冷たい秋の裏庭があるのみ。
ジビエを含むすべての登場人物が忽然と消失したことに大層肝(きも)を冷やしたことであろう。
この一切の予告なしの空間移送に、ユリア達は揃って戦慄し、恐れるように辺りの景色を見回した。
そうして見えた景色とは、汚ならしい紫と黒とが煙るような暗い廃墟そのものであり、よくよくと見渡せば、風化したような石畳に、ぬいぐるみや朽ち果てたような子供の玩具類が、そこここで小山を形成しており、なんとも云えぬ気色の悪さを演出していた。
ドラクロワは、そのドロンとした真夏の黄昏時のような、温い空気を吸い込むと、心地好さそうにわずかに眼を細めた。
「ウム。"暗黒鹵獲団"とは、確か先々代魔王が考案したとかいう、七大女神達に帰依する聖者らを堕(お)とすために特別に編成された、あくまで正攻法ではなく"搦(から)め手"を得意とする特殊部隊のことなのだが……」
何とはなしに、シャンに答えを授けてやるドラクロワ。
「はえっ!? ななな、なんですかそれっ!?
せ、先々代の魔王!? か、搦め手ぇっ!?」
今見える人外魔境の景観の不気味さより、遥かに好奇心のが勝る者がいた。
「フフフ……詳しいことは、また帰ってから教えてやる。
それよりユリアよ、さっさと魔法障壁を呼び出せ」
ドラクロワは、どうでもいいように警告を放った。
だが、この気の抜けた忠告により、過去幾度となく命を拾ってきたユリア達である。ユリア、アン、ビスは、疑うより早く、すぐさま自己の発現させ得る最高位の魔法障壁、その詠唱を開始した。
そして、早口のそれが切り結ばられて、魔法の障壁(バリアー)が完成するかしないかのところに、それは来た。
「ッヒャア!!」
ユリアが叫んだ眼前で、凄まじいエネルギー爆裂が起き、半透明なる赤の八角形の魔法障壁を可視化させた。
しかも、その衝撃(インパクト)は一撃では終わらず、重なるような連続の轟音を響かせ、さらにユリアを半狂乱におとしめた。
「ん、なーんか魔法使いらしいのがいるから、神聖魔法も併(あわ)せて使われて、後々面倒臭ぇことになるかと思って、とりあえず一発かましたんだが……。
まぁた見事に防ぎやがったもんだな……」
オレンジ色に輝く連続の火炎系の攻撃魔法を投げつけたジビエが、その燃え盛る瞳でユリア、またアンとビスの、どす黒い煙と陽炎をまとう防御壁を憎々しげに睨んだ。
「ユ、ユリア様!! 大事ないですか!?」
ビスがユリアに寄って声をかける。
「は、はいっ! すすす、スッゴイ威力のファイアーボールでしたが、な、何とか防ぎましたぁー。
て、アレ? 今のジビエさんてば、特に魔法詠唱をしてなかったような……」
ユリアは頬に落ちてきた冷たい汗を押さえつつ、鋼鉄の片角魔人を見つめた。
「ま、いっか。あの三匹は後回しにして、と。じゃソコのアサシンと戦士の味見といこうかっ!」
ジビエが言葉の尾を引きつつ、恐ろしい速度でシャンに迫った。
そして猛烈な金属音。
ジビエが下からカチ上げた右腕の鉤爪(かぎつめ)が、反射的に胸前で交差させたシャンのダガーと衝突し、一瞬目映いほどの火花を放った。
その刹那、それを追うように、またジビエの鋼鉄の回し蹴りの踵(かかと)が、オレンジの尾を引きつつ、シャンの側頭部を薙(な)いだように見えた。
が、シャンは紙一重でそれを交(か)わしつつ、はるか後方に華麗なるとんぼ返りをして、音もなく着地を果たしていた。
「うん。早い……な」
低く言ったシャンの左頬に、ひとつまみほどの毛髪の束と、ドロリとした血潮が下がって来て、そのままマスクの下の顎まで汚した。
どうやら融合魔人の放ってみせた迅雷の蹴りとは、それが只かすめただけで、脳まで揺らす威力を振るったようで、シャンはそのまま地面に吸い込まれるようにして、前のめりに倒れ付し昏倒した。
「シャンッ!!」
それを横目で認めたマリーナだったが、今度はその頭上から銀色の巨大な鎌が落ちてきた。
そしてまた重い金属の打ち合う、猛烈な衝突音。
下方から迎撃のマリーナが、惚れ惚れするような流麗の抜き打ちで、間一髪打ち上げた大剣と、ジビエの回転式踵落しがまたもや火花を撒き散らした。
「わ重(おも)っ」
と、黒革眼帯の反対の左眼を見張るマリーナの鳩尾(みぞおち)に、魔人の電光の足刀が射し込まれたが、これを本能的に察知し、左の深紅のガントレットでガードしたマリーナ。
「っうおっ!?」
だが、その蹴りのあまりの威力に、自らの左前腕を抱き込むようにして、はるか後方にすっ飛んでゆく。
「ヒャッ!! マリーナさんッ!!」
と叫ぶユリアが眼で追えないほどの速度でマリーナは飛び、ガントレットの赤い破片をばら蒔きつつ、なんら受け身もなく玩具の瓦礫の山に突っ込んだ。
続けざまに、ドラクロワの周囲にて、またほとんど重なるような、けたたましい衝撃音が連続した。
見れば、眼にも留まらぬ速度で、なにやら銀色とピンクの幻影が、上下左右の空間に縦横無尽に吹き荒れ、それらがほぼ同時にかち合い、至るところで火花を撒き散らしているではないか。
無論、亜高速で駆けるカミラーと、魔人ジビエとの一騎討ちの相である。
「アッヒャア!!」
ユリアが蜂蜜色の頭を抱えるのも無理はない。
今その凄まじいエネルギーの連続衝突に空気は揺れ、耳を覆いたくなるような爆音と、音速を超える物体の放つ、まるで大気が連鎖爆発したような衝撃波が辺りを蹂躙していたのだから。
そして、また遠くの瓦礫の山が唐突に吠え、小さなカミラーを吸い込んだのである。
「ん、てか、なあんで真正のバンパイアが混じってんだよ……。
ったく、ちょこまかとこうるせぇもんだから、つい本気(マジ)で駆けちまったじゃねえか……ん、しんど」
ズタボロのインバネスがドラクロワの背後で文句を垂れた。
「ドラクロワさん! う、後ろですっ!!」
と、驚愕のユリアが指すまでもなく、暗黒色の貴公子は、瞬間移動を果たした魔人がどこに下り立つかなど重々承知していたようで、眼を伏せてわずかに後方に顔を傾けた。
「ウム。それなりにやるようだな。ジビエとやら……」
「ハッ、そらぁどうも。しっかし、よかったな色男のアンタ。なにせオレは男を殺す趣味はねぇから、よぉッ!!」
言って、両の腕の先を組んでユリアとアン達に突き出す豪傑のジビエ。
すると、その組んだ拳がオレンジ色に輝き、またもや一切の詠唱なしで、そこを中心に衛星のごとく無数のファイアーボールが出現。
そのそれぞれが大人一抱えほどの灼熱弾に膨張したかと思うと、またもや恐るべき速度で女たちへと飛翔した。
無論、ユリア達もその尋常ならざる殺気を捕らえるや、再度魔法障壁を喚び出し、苛烈な炎の洗礼に備えていた。
そして、また緋色の閃光炸裂が連続し、魔法障壁を撃ち抜かんとする驚異的な破壊突貫力による轟音とユリアの絶叫が轟いた。
「っきゃあああーッ!!」
その大迫力の連続衝撃に後退るユリアと、流石にいつものお澄ましを歪めるアンとビス。
「ユリア様! 我らと魔法障壁の重ね掛けを!!」
アンが目映いオレンジの世界で喚いた。
「はっ! はいっ!!」
すぐにユリアはそれに応じ、即時魔法障壁の詠唱を開始。
それに背後のライカン姉妹らも同じ詠唱を切り結ぶと、それぞれの眼前に喚び出された八角形の神聖魔法障壁が拡張し、瞬く間に三名を護る大きなドームへと拡充した。
また更にその魔法障壁は、その内側から急速に膨張して、未だ撃ちてし止まむ、致命の灼熱弾を頼もしくも弾いてゆくのだった。
「あ、ありがとうございます! アンさんっ! ビスさんっ!」
強固なる合体魔法の相乗効果による盤石具合を認めたユリアが、涙眼で後方を振り返ると、なにを仰いますか、とオレンジに輝く女神のごとく美しい双子らが微笑んだ。
だが、防戦一方ではなにも変わらないと、ユリアがあくまで正当防衛の延長にて、それなりに有効な攻撃魔法を選(よ)りすぐろうとした、そのとき──
「ん、お嬢ちゃん達、中々やるじゃねぇか、と言いてぇとこだが……な」
と、ジビエが何かを含ませるような鋼鉄の微笑を作った。
「……な、なんだか、あのぅ──ち、力が……」
最後の火炎弾を弾いた辺りで、爆裂する閃光にも青ざめたユリアが、額に無数の汗の珠を浮かべつつ呻(うめ)くように言った。
「ユ、ユリア様?」
アンも同様の辛そうな面持ちで、力なく萎(しお)れゆくユリアの後ろ姿を見つめた。
「フフフ……ヤッパリ、このオレが単に目隠しのためだけに、ここに場所を移したとしか思ってなかったようだな。
ん、お嬢ちゃん達のように、ちっと魔法に自信のある手合いなんかは、今のようにガンガンに強力な魔法を使わせながら、まずは精神力をカラッポにさせて、そんでもって魔界の瘴気に当てさせて弱らせる! とー、コイツが常套手段ってえわけさ」
ジビエは、巧妙な仕掛けで以(もっ)て毛傷を負わせた獲物を追い詰めた狩人のように、遂に両の膝を屈したミニスカローブと、鋼鉄の六角棒にすがるような灰銀色のメイド服の二つを見下ろした。
「ウム。俺にとっては心地好い魔界第一階層の風も、コイツらにしてみれば致命的であったか。
フム、それでシャンもマリーナも、あの体(てい)たらくであった、か……」
ドラクロワもユリア達が倒れ臥(ふ)してゆくのを認めて呟(つぶ)くように言った。
「さて、と──次は色男のアンタなんだが、アンタまったく瘴気の影響を受けてないように見えるが、ソリャやせ我慢てえやつかい?」
「フフフ……そう見えるか?」
「ケッ! まぁどうでもいいさ。ん、とりあえずゴルゴンのお嬢様達から仰せつかってんのは、例のお茶っ葉を奪えってえこったから、まぁアンタだけは足腰立たねぇようにやり込めるのは勘弁してやるよ。
んなぁアンタよ? ここまで仲間がボコボコにされたとなりゃ、さっすがに素直に茶を出す気にもなっただろ?」
ジビエがドラクロワの至近距離にて燃える瞳を輝かせた。
「ウム、よかろう。ではこの俺が相手をしてやろう」
「おいおい! アンタ気は確かかい!? さっきからこのオレの人を大きく凌駕した、それこそ、北の城に住んでるとかいう、昼行灯(ひるあんどん)魔王もブッ飛ぶ、無敵の強さってえのを見といて、ウム、この俺が相手をしてやろう、てか? アンタのやせ我慢にゃ呆れた……ぜ!?」
ジビエは突然、自身の身体が総毛立つのを感じ、窮(きわ)めて不可解に思い、今一度ドラクロワを見直した。
「なん……だと? 魔王がどうした、と?」
今やドラクロワの瞳は赤光を放ち、その全身からは、魔界の瘴気を陽炎(ようえん)とさせるほどに恐るべき鬼気が放出させれていたという。
「はえ?な、なんですか? ジビエさんの後ろに誰かいるんですか?
ひゃっ! アレは……ま、魔物!?」
ユリアが、その闖入者(ちんにゅうしゃ)に指を差して戦慄した。
なるほど確かに、その者の姿とは、まさしく魔物と形容するに相応しく、月光の下にさらされたその風体とは、どう見ても人間の"乾物(かんぶつ)"。
あの木乃伊(ミイラ)そのものであり、それが聖者のごとき金刺繍の煌めく羽衣(はごろも)を緩やかに身にまとい、目玉のない暗黒の眼窩(がんか)を勇者団に向けて立っていた。
その妙に生白い、動く屍としか云えぬ者は、どうやら呼吸をする度ごとに、体内の心臓が内部より輝いているようで、その胸骨(アバラ)の輪郭をオレンジ色に縁取って明滅させる姿とは、さながら屍のランプのようであり、窮(きわ)めて不可思議なる外見をしていた。
「やあやあ皆様、初めまして。我輩こそは、このジビエ=マルカッサンの盟約者にして、彼(か)の誉れ高き選(よ)り抜きの七人集。
"暗黒鹵獲団"(あんこくろかくだん)のクワォリーと申すもの。
どうか以後お見知りおきを──」
屍蝋化(しろうか)したような長身の男が再度発言をすると、その頭髪のない頭上に、無数の光のナイフようなものが現れ、それらが後光のように、彼の後頭部辺りの空間に放射線状に配置され、キュラキュラと廻っては目映(まばゆ)く発光した。
その様、言うなれば、悍(おぞ)ましき邪聖の偶像(イコン)、といったところか──
「ひゃっ!! しゃ、喋った!?」
ユリアは魔法杖を握りしめ、その不死系の上級な魔物にしか見えぬ者へと神聖魔法を唱えるべく身構えた。
と同じく、その背後の神聖魔法に長じたアンとビスも臨戦態勢に入っている。
「へぇ、よーやくソレらしいののおでましかい。
フンフン。チョイと見たところ、不死系(アンデッド)のソコソコのオヤダマってーところだね?
ねぇねぇカミラー? アンタさ、コイツに見覚えは?」
マリーナも背中に担いだ大剣の柄(つか)に手を這(は)わせながら腰を落とした。
「──知らんわ」
どうやらカミラーの死霊騎士部隊の所属ではないようだ。
「うん。話の筋からいくと、お前がその光属性の勇者を堕落させた張本人となるわけか。
だが、その暗黒鹵獲(ろかく)──とやらはなんだ?」
シャンも、胸前で腕を交差させる形で両腰のケルベロスダガーに手をかける。
「フム、ジビエ君。今宵はまた、かように美しい女性たちを消し炭にするか。
よかろうともよかろうとも、いつも通り我輩が手を貸そうではないか。では失礼をばして──」
クワォリーと名乗る謎多き化生(けしょう)の者は、シャンの問いかけになんら答えることもなく、再びジビエの背後に回った。
「ん、じゃ腹一杯喋ったことだし……あとはお楽しみといくか」
ジビエ=マルカッサンは、その場に革の手袋と靴とを乱雑に放棄し、逞(たくま)しい両腕を上げつつ、大きく仰(の)け反り始めた。
「あえっ!? ちょ、ちょっと待ってくださいっ!! お、お楽しみってなんですかー!?」
ただならぬ殺気の膨張に、思わず後退(あとずさ)るユリアだった。
「フム、古来"享楽"とは、行き着くところすなわち是(これ)虐殺と、まぁ相場は決まっておるが……まぁなんとも捻(ヒネ)りのないヤツじゃて。
三色馬鹿娘らよ、来るぞ……」
カミラーは軽侮を込めて、妖しく発光するジビエを睨(ね)めつけた。
「ンフフフフフ……きたきたきたきたァッ! こここ、これだから用心棒稼業は止めらんねぇってんだぁッ!!」
どうやらジビエの体内には、背後からクワォリーが溶けるように侵入を果たしたようであり、その禍々しき人魔融合術により、その顔と云わず手と云わず、その表皮のすべては鋼の光沢を備えてゆき、ピシッ!パキッ!とひび割れ、その内よりオレンジの輝きを外部に漏れ出させていた。
また、体格もひとまわりほど肥大化したようで、黒いインバネスの各所が、ミリミリ、バツッという厭(イヤ)な音を放っていた。
さらに、その頭部の左には、水牛を想わせるような鋼鉄の角が一本、焦げ茶色の長髪をかき分けかき分け夜空へと伸び、両の瞳は鞴(ふいご)で吹かれた石炭の如く燦然(さんぜん)と輝いてゆく。
「さぁて! 待たせたなお嬢ちゃん達ッ!!
一気にいくぜー!!」
そう吼(ほ)えるように怒号を放ったジビエは、唐突にその場にしゃがみ込んだかと想うと、その鋼の左拳で草の大地を打ったのである。
すると、打撃の落ちた地面は揺れ、その拳の触れたところから、恐るべき速度で深紫の光が放射線状に広がり、それは瞬時にして光のドームへと拡大しつつ、スッポリとドラクロワたちを包み込んだのである。
「ウム。戦場を半魔界へと移しおったか……。
なるほどな、こうしてゴルゴン某(なにがし)に都合の悪い人間を闇から闇に葬ってきたと、そういう訳か……」
ドラクロワが、ちっとも面白くもなさそうに察して述べた通り、もし一般の人間、例えば近所の何者かが、最前からのこのやり取りを観ていたとすれば、突然半透明なドームがジビエの足元より広がり、それが激しく閃光したかと思うと、そこはもう只の冷たい秋の裏庭があるのみ。
ジビエを含むすべての登場人物が忽然と消失したことに大層肝(きも)を冷やしたことであろう。
この一切の予告なしの空間移送に、ユリア達は揃って戦慄し、恐れるように辺りの景色を見回した。
そうして見えた景色とは、汚ならしい紫と黒とが煙るような暗い廃墟そのものであり、よくよくと見渡せば、風化したような石畳に、ぬいぐるみや朽ち果てたような子供の玩具類が、そこここで小山を形成しており、なんとも云えぬ気色の悪さを演出していた。
ドラクロワは、そのドロンとした真夏の黄昏時のような、温い空気を吸い込むと、心地好さそうにわずかに眼を細めた。
「ウム。"暗黒鹵獲団"とは、確か先々代魔王が考案したとかいう、七大女神達に帰依する聖者らを堕(お)とすために特別に編成された、あくまで正攻法ではなく"搦(から)め手"を得意とする特殊部隊のことなのだが……」
何とはなしに、シャンに答えを授けてやるドラクロワ。
「はえっ!? ななな、なんですかそれっ!?
せ、先々代の魔王!? か、搦め手ぇっ!?」
今見える人外魔境の景観の不気味さより、遥かに好奇心のが勝る者がいた。
「フフフ……詳しいことは、また帰ってから教えてやる。
それよりユリアよ、さっさと魔法障壁を呼び出せ」
ドラクロワは、どうでもいいように警告を放った。
だが、この気の抜けた忠告により、過去幾度となく命を拾ってきたユリア達である。ユリア、アン、ビスは、疑うより早く、すぐさま自己の発現させ得る最高位の魔法障壁、その詠唱を開始した。
そして、早口のそれが切り結ばられて、魔法の障壁(バリアー)が完成するかしないかのところに、それは来た。
「ッヒャア!!」
ユリアが叫んだ眼前で、凄まじいエネルギー爆裂が起き、半透明なる赤の八角形の魔法障壁を可視化させた。
しかも、その衝撃(インパクト)は一撃では終わらず、重なるような連続の轟音を響かせ、さらにユリアを半狂乱におとしめた。
「ん、なーんか魔法使いらしいのがいるから、神聖魔法も併(あわ)せて使われて、後々面倒臭ぇことになるかと思って、とりあえず一発かましたんだが……。
まぁた見事に防ぎやがったもんだな……」
オレンジ色に輝く連続の火炎系の攻撃魔法を投げつけたジビエが、その燃え盛る瞳でユリア、またアンとビスの、どす黒い煙と陽炎をまとう防御壁を憎々しげに睨んだ。
「ユ、ユリア様!! 大事ないですか!?」
ビスがユリアに寄って声をかける。
「は、はいっ! すすす、スッゴイ威力のファイアーボールでしたが、な、何とか防ぎましたぁー。
て、アレ? 今のジビエさんてば、特に魔法詠唱をしてなかったような……」
ユリアは頬に落ちてきた冷たい汗を押さえつつ、鋼鉄の片角魔人を見つめた。
「ま、いっか。あの三匹は後回しにして、と。じゃソコのアサシンと戦士の味見といこうかっ!」
ジビエが言葉の尾を引きつつ、恐ろしい速度でシャンに迫った。
そして猛烈な金属音。
ジビエが下からカチ上げた右腕の鉤爪(かぎつめ)が、反射的に胸前で交差させたシャンのダガーと衝突し、一瞬目映いほどの火花を放った。
その刹那、それを追うように、またジビエの鋼鉄の回し蹴りの踵(かかと)が、オレンジの尾を引きつつ、シャンの側頭部を薙(な)いだように見えた。
が、シャンは紙一重でそれを交(か)わしつつ、はるか後方に華麗なるとんぼ返りをして、音もなく着地を果たしていた。
「うん。早い……な」
低く言ったシャンの左頬に、ひとつまみほどの毛髪の束と、ドロリとした血潮が下がって来て、そのままマスクの下の顎まで汚した。
どうやら融合魔人の放ってみせた迅雷の蹴りとは、それが只かすめただけで、脳まで揺らす威力を振るったようで、シャンはそのまま地面に吸い込まれるようにして、前のめりに倒れ付し昏倒した。
「シャンッ!!」
それを横目で認めたマリーナだったが、今度はその頭上から銀色の巨大な鎌が落ちてきた。
そしてまた重い金属の打ち合う、猛烈な衝突音。
下方から迎撃のマリーナが、惚れ惚れするような流麗の抜き打ちで、間一髪打ち上げた大剣と、ジビエの回転式踵落しがまたもや火花を撒き散らした。
「わ重(おも)っ」
と、黒革眼帯の反対の左眼を見張るマリーナの鳩尾(みぞおち)に、魔人の電光の足刀が射し込まれたが、これを本能的に察知し、左の深紅のガントレットでガードしたマリーナ。
「っうおっ!?」
だが、その蹴りのあまりの威力に、自らの左前腕を抱き込むようにして、はるか後方にすっ飛んでゆく。
「ヒャッ!! マリーナさんッ!!」
と叫ぶユリアが眼で追えないほどの速度でマリーナは飛び、ガントレットの赤い破片をばら蒔きつつ、なんら受け身もなく玩具の瓦礫の山に突っ込んだ。
続けざまに、ドラクロワの周囲にて、またほとんど重なるような、けたたましい衝撃音が連続した。
見れば、眼にも留まらぬ速度で、なにやら銀色とピンクの幻影が、上下左右の空間に縦横無尽に吹き荒れ、それらがほぼ同時にかち合い、至るところで火花を撒き散らしているではないか。
無論、亜高速で駆けるカミラーと、魔人ジビエとの一騎討ちの相である。
「アッヒャア!!」
ユリアが蜂蜜色の頭を抱えるのも無理はない。
今その凄まじいエネルギーの連続衝突に空気は揺れ、耳を覆いたくなるような爆音と、音速を超える物体の放つ、まるで大気が連鎖爆発したような衝撃波が辺りを蹂躙していたのだから。
そして、また遠くの瓦礫の山が唐突に吠え、小さなカミラーを吸い込んだのである。
「ん、てか、なあんで真正のバンパイアが混じってんだよ……。
ったく、ちょこまかとこうるせぇもんだから、つい本気(マジ)で駆けちまったじゃねえか……ん、しんど」
ズタボロのインバネスがドラクロワの背後で文句を垂れた。
「ドラクロワさん! う、後ろですっ!!」
と、驚愕のユリアが指すまでもなく、暗黒色の貴公子は、瞬間移動を果たした魔人がどこに下り立つかなど重々承知していたようで、眼を伏せてわずかに後方に顔を傾けた。
「ウム。それなりにやるようだな。ジビエとやら……」
「ハッ、そらぁどうも。しっかし、よかったな色男のアンタ。なにせオレは男を殺す趣味はねぇから、よぉッ!!」
言って、両の腕の先を組んでユリアとアン達に突き出す豪傑のジビエ。
すると、その組んだ拳がオレンジ色に輝き、またもや一切の詠唱なしで、そこを中心に衛星のごとく無数のファイアーボールが出現。
そのそれぞれが大人一抱えほどの灼熱弾に膨張したかと思うと、またもや恐るべき速度で女たちへと飛翔した。
無論、ユリア達もその尋常ならざる殺気を捕らえるや、再度魔法障壁を喚び出し、苛烈な炎の洗礼に備えていた。
そして、また緋色の閃光炸裂が連続し、魔法障壁を撃ち抜かんとする驚異的な破壊突貫力による轟音とユリアの絶叫が轟いた。
「っきゃあああーッ!!」
その大迫力の連続衝撃に後退るユリアと、流石にいつものお澄ましを歪めるアンとビス。
「ユリア様! 我らと魔法障壁の重ね掛けを!!」
アンが目映いオレンジの世界で喚いた。
「はっ! はいっ!!」
すぐにユリアはそれに応じ、即時魔法障壁の詠唱を開始。
それに背後のライカン姉妹らも同じ詠唱を切り結ぶと、それぞれの眼前に喚び出された八角形の神聖魔法障壁が拡張し、瞬く間に三名を護る大きなドームへと拡充した。
また更にその魔法障壁は、その内側から急速に膨張して、未だ撃ちてし止まむ、致命の灼熱弾を頼もしくも弾いてゆくのだった。
「あ、ありがとうございます! アンさんっ! ビスさんっ!」
強固なる合体魔法の相乗効果による盤石具合を認めたユリアが、涙眼で後方を振り返ると、なにを仰いますか、とオレンジに輝く女神のごとく美しい双子らが微笑んだ。
だが、防戦一方ではなにも変わらないと、ユリアがあくまで正当防衛の延長にて、それなりに有効な攻撃魔法を選(よ)りすぐろうとした、そのとき──
「ん、お嬢ちゃん達、中々やるじゃねぇか、と言いてぇとこだが……な」
と、ジビエが何かを含ませるような鋼鉄の微笑を作った。
「……な、なんだか、あのぅ──ち、力が……」
最後の火炎弾を弾いた辺りで、爆裂する閃光にも青ざめたユリアが、額に無数の汗の珠を浮かべつつ呻(うめ)くように言った。
「ユ、ユリア様?」
アンも同様の辛そうな面持ちで、力なく萎(しお)れゆくユリアの後ろ姿を見つめた。
「フフフ……ヤッパリ、このオレが単に目隠しのためだけに、ここに場所を移したとしか思ってなかったようだな。
ん、お嬢ちゃん達のように、ちっと魔法に自信のある手合いなんかは、今のようにガンガンに強力な魔法を使わせながら、まずは精神力をカラッポにさせて、そんでもって魔界の瘴気に当てさせて弱らせる! とー、コイツが常套手段ってえわけさ」
ジビエは、巧妙な仕掛けで以(もっ)て毛傷を負わせた獲物を追い詰めた狩人のように、遂に両の膝を屈したミニスカローブと、鋼鉄の六角棒にすがるような灰銀色のメイド服の二つを見下ろした。
「ウム。俺にとっては心地好い魔界第一階層の風も、コイツらにしてみれば致命的であったか。
フム、それでシャンもマリーナも、あの体(てい)たらくであった、か……」
ドラクロワもユリア達が倒れ臥(ふ)してゆくのを認めて呟(つぶ)くように言った。
「さて、と──次は色男のアンタなんだが、アンタまったく瘴気の影響を受けてないように見えるが、ソリャやせ我慢てえやつかい?」
「フフフ……そう見えるか?」
「ケッ! まぁどうでもいいさ。ん、とりあえずゴルゴンのお嬢様達から仰せつかってんのは、例のお茶っ葉を奪えってえこったから、まぁアンタだけは足腰立たねぇようにやり込めるのは勘弁してやるよ。
んなぁアンタよ? ここまで仲間がボコボコにされたとなりゃ、さっすがに素直に茶を出す気にもなっただろ?」
ジビエがドラクロワの至近距離にて燃える瞳を輝かせた。
「ウム、よかろう。ではこの俺が相手をしてやろう」
「おいおい! アンタ気は確かかい!? さっきからこのオレの人を大きく凌駕した、それこそ、北の城に住んでるとかいう、昼行灯(ひるあんどん)魔王もブッ飛ぶ、無敵の強さってえのを見といて、ウム、この俺が相手をしてやろう、てか? アンタのやせ我慢にゃ呆れた……ぜ!?」
ジビエは突然、自身の身体が総毛立つのを感じ、窮(きわ)めて不可解に思い、今一度ドラクロワを見直した。
「なん……だと? 魔王がどうした、と?」
今やドラクロワの瞳は赤光を放ち、その全身からは、魔界の瘴気を陽炎(ようえん)とさせるほどに恐るべき鬼気が放出させれていたという。
0
お気に入りに追加
149
あなたにおすすめの小説
独身おじさんの異世界ライフ~結婚しません、フリーな独身こそ最高です~
さとう
ファンタジー
町の電気工事士であり、なんでも屋でもある織田玄徳は、仕事をそこそこやりつつ自由な暮らしをしていた。
結婚は人生の墓場……父親が嫁さんで苦労しているのを見て育ったため、結婚して子供を作り幸せな家庭を作るという『呪いの言葉』を嫌悪し、生涯独身、自分だけのために稼いだ金を使うと決め、独身生活を満喫。趣味の釣り、バイク、キャンプなどを楽しみつつ、人生を謳歌していた。
そんなある日。電気工事の仕事で感電死……まだまだやりたいことがあったのにと嘆くと、なんと異世界転生していた!!
これは、異世界で工務店の仕事をしながら、異世界で独身生活を満喫するおじさんの物語。
可愛いあの子は溺愛されるのがお約束
猫屋ネコ吉
ファンタジー
酷い虐待を受けてクリスマスの夜死んだ主人公が異世界の神様によって転生した。
転生した先は色々な種族と魔物がいる剣と魔法と呪いがある世界。
そこで転生チートとして大きな魔力と最強の治癒魔法と魔法道具を貰った主人公がいく先々で最強の魔物や勇者に各種王族、民達に美味しい料理や治癒しては溺愛されていくお話し。
主人公は男の子です!女子に間違えられるのがテンプレですけど結構男前な性格かな?
結構テンプレです。
お母さん冒険者、ログインボーナスでスキル【主婦】に目覚めました。週一貰えるチラシで冒険者生活頑張ります!
林優子
ファンタジー
二人の子持ち27歳のカチュア(主婦)は家計を助けるためダンジョンの荷物運びの仕事(パート)をしている。危険が少なく手軽なため、迷宮都市ロアでは若者や主婦には人気の仕事だ。
夢は100万ゴールドの貯金。それだけあれば三人揃って国境警備の任務についているパパに会いに行けるのだ。
そんなカチュアがダンジョン内の女神像から百回ログインボーナスで貰ったのは、オシャレながま口とポイントカード、そして一枚のチラシ?
「モンスターポイント三倍デーって何?」
「4の付く日は薬草デー?」
「お肉の日とお魚の日があるのねー」
神様からスキル【主婦/主夫】を授かった最弱の冒険者ママ、カチュアさんがワンオペ育児と冒険者生活頑張る話。
※他サイトにも投稿してます
私は逃げます
恵葉
ファンタジー
ブラック企業で社畜なんてやっていたら、23歳で血反吐を吐いて、死んじゃった…と思ったら、異世界へ転生してしまったOLです。
そしてこれまたありがちな、貴族令嬢として転生してしまったのですが、運命から…ではなく、文字通り物理的に逃げます。
貴族のあれやこれやなんて、構っていられません!
今度こそ好きなように生きます!
没落貴族と拾われ娘の成り上がり生活
あーあーあー
ファンタジー
名家の生まれなうえに将来を有望視され、若くして領主となったカイエン・ガリエンド。彼は飢饉の際に王侯貴族よりも民衆を優先したために田舎の開拓村へ左遷されてしまう。
妻は彼の元を去り、一族からは勘当も同然の扱いを受け、王からは見捨てられ、生きる希望を失ったカイエンはある日、浅黒い肌の赤ん坊を拾った。
貴族の彼は赤子など育てた事などなく、しかも左遷された彼に乳母を雇う余裕もない。
しかし、心優しい村人たちの協力で何とか子育てと領主仕事をこなす事にカイエンは成功し、おまけにカイエンは開拓村にて子育てを手伝ってくれた村娘のリーリルと結婚までしてしまう。
小さな開拓村で幸せな生活を手に入れたカイエンであるが、この幸せはカイエンに迫る困難と成り上がりの始まりに過ぎなかった。
異世界ネット通販物語
Nowel
ファンタジー
朝起きると森の中にいた金田大地。
最初はなにかのドッキリかと思ったが、ステータスオープンと呟くとステータス画面が現れた。
そしてギフトの欄にはとある巨大ネット通販の名前が。
※話のストックが少ないため不定期更新です。
加工を極めし転生者、チート化した幼女たちとの自由気ままな冒険ライフ
犬社護
ファンタジー
交通事故で不慮の死を遂げてしまった僕-リョウトは、死後の世界で女神と出会い、異世界へ転生されることになった。事前に転生先の世界観について詳しく教えられ、その場でスキルやギフトを練習しても構わないと言われたので、僕は自分に与えられるギフトだけを極めるまで練習を重ねた。女神の目的は不明だけど、僕は全てを納得した上で、フランベル王国王都ベルンシュナイルに住む貴族の名門ヒライデン伯爵家の次男として転生すると、とある理由で魔法を一つも習得できないせいで、15年間軟禁生活を強いられ、15歳の誕生日に両親から追放処分を受けてしまう。ようやく自由を手に入れたけど、初日から幽霊に憑かれた幼女ルティナ、2日目には幽霊になってしまった幼女リノアと出会い、2人を仲間にしたことで、僕は様々な選択を迫られることになる。そしてその結果、子供たちが意図せず、どんどんチート化してしまう。
僕の夢は、自由気ままに世界中を冒険すること…なんだけど、いつの間にかチートな子供たちが主体となって、冒険が進んでいく。
僕の夢……どこいった?
根暗男が異世界転生してTS美少女になったら幸せになれますか?
みずがめ
ファンタジー
自身の暗い性格をコンプレックスに思っていた男が死んで異世界転生してしまう。
転生した先では性別が変わってしまい、いわゆるTS転生を果たして生活することとなった。
せっかく異世界ファンタジーで魔法の才能に溢れた美少女になったのだ。元男は前世では掴めなかった幸せのために奮闘するのであった。
これは前世での後悔を引きずりながらもがんばっていく、TS少女の物語である。
※この作品は他サイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる