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底知れぬ人 2

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(アレクサンドラ視点)


 事実がどうあれ、余の一族は魔人と婚姻を結んだ者たちがいる。
 そしてその子孫である子らにも程度の差はあれどその資質は受け継がれてきた。

 そして、数多の妻を持つ我が国の王たる父上の妻の一人。
 余の母上も魔人だ。

 一夫多妻は我が国において珍しいことではない。
 ましては王となればハーレムを持つのは当然のこと。
 だが、他国にとっては魔人の血を引くことも、一夫多妻も一般的でないことは勉学を身に着けるにつれ理解できた。

 だからこそ余は他国へ留学をしようと決めていた。
 他国との縁は我が国にとって必要不可欠。
 他国を知るためには本よりも実際この身で体験するのが一番だと思った。

 そうして訪れた国には幸運にも同じ年の王子が居て親交を結ぶことが出来た。

 同じクラスのダイアやガーネスト、一学年下のサフィアやガーネストの妹のベアトリクスやカトリーナたち。出会った彼らは皆、優秀で才能溢れ、友人として好ましく感じるとともに将来国の一端を担う彼らをみて尚更にジュエラルとの親交を深めるべきだと再認識した。

 そして、アンジェスの末裔であるリリーとナディア。
 末端とはいえ、一国の王子である余が、自国の、世界の火種ともなりかねない彼女らの存在に興味を抱くのは当然のことだった。

 その立場に溺れ、権力を求める輩か否か。
 取り込もうとする連中の傀儡くぐつの成り得る者か否か。

 興味と警戒を抱いて接した彼女たちは、至って普通の少女だった。

 その立場を誇示するどころか、自らの立ち位置に戸惑ってさえいる。
 否…いつだかのサロンでカイザー殿相手に激昂したナディアからは強い拒絶と嫌悪さえ感じた。

 交流を重ねるにつれ、警戒は薄れた。
 彼女らの周囲の思惑はどうであれ、彼女たち自身は警戒するような野心を持っておらず、友人として好ましくさえ感じた。

 そう、友人としての筈だった。

「貴殿が…」

 思い出すのはあの日の学園祭の時のこと。

「貴殿が黒竜に刃を向けた時…リリーは、震えながらそれを止めようとしただろう?」

 あの時、震える彼女を驚愕を持って見つめた。

 ガタガタと、立っているのも辛そうに震えていた躰。
 それでも彼女は声をあげた。

「もしや、その健気な姿に心奪われたということですか?」

 シリウスの問い掛けに頬がうっすらと熱を持つ。

 別に…健気な姿に惚れたとかいうわけではない。

 ただ、意外だっただけだ。
 恐怖していた筈の“魔族”すら救おうとした彼女の姿が。
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