上 下
347 / 350

俺は音楽教師です。カウンセラーではない 4

しおりを挟む


 誰の得にもならん色気を垂れ流し、悩まし気な表情で懊悩するアレクサンドラ。

 光により色を変えるその瞳が切なさや嫉妬、様々な感情を孕んで俺を捕らえるのを見たシリウスもはっとした表情を浮かべる。

 いや、待て。
 待て、待て、待って。
 勝手な勘違いの連鎖、マジ勘弁して下さい。

 その想いのまま、俺は口を開いた。

「もしかして、リリー嬢が私のことを好きとか勘違いしてます?」

 ピクリと揺れる二人の肩。

 いや、ねーよ。
 あるのは隠しキャラとしての間違った興味だけだわ!

「だが……」

「だが、何です?」

「ベアトリクスたちが以前話をしているのを聞いたことがある。その時は余もまだ彼女のことを好いてはいなかったから特別気にはしていなかったが……、メイドとリリーが貴殿を取り合って熱く争っていたと」

 あれか…。

 リリー嬢とナディア嬢がウチに遊びにきた日のことを思い出して俺は遠い眼をした。
 ベアトリクスもナディア嬢もどきどき、わくわくしながら見てたもんね。

「それに先日の仮面舞踏会でも…」

 これは多分情報源、メラルドかな?

 そんな風に現実逃避気味な思考をしつつ、俺は額を手に覆って大きく息を吐き出した。溜息出ちゃう。

「あれはそういうのじゃないです」

 ええ、全く。
 あれが恋の遣り取りだとか認めない。

 俺をゲームの隠しキャラと勘違いした二人が、お互いが俺のこと狙ってると勘違いして張り合ってるだけだから。

 なんだこの勘違いの連鎖。
 そして俺はただの巻き込まれ被害者。

 詳しくは説明出来ないものの、何とか悩める青少年の誤解を解いた。

「あ、なら仮面舞踏会の時のパートナーの方がカイザー様のお相手ですか?」

「違います!!」

 主人の恋敵疑惑が解け、晴れやかな表情で問いかけてきたシリウスの疑問には即座に否定を返した。

 ランは男だ。

 そして何故か話は恋愛相談に発展。
 女性に言い寄られることは日常茶飯事だけど、誰かを好きになるのは初めてだとか。彼女が自分のことをどう思ってるかとか。

 何なの?自慢?
 俺ナチュラルに喧嘩売られてる?

 そしてまさかの初恋。

 恋多き男と見せかけて本命にはどう接していいかわからんとか純情か!

 俺の音楽準備室ベストプレイスがいつも間にやら悩める王子サマの恋愛相談室へと変わっていた。

 何がどうしてこうなったのか誰か教えて下さい。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

策が咲く〜死刑囚の王女と騎士の生存戦略〜

鋸鎚のこ
ファンタジー
亡国の王女シロンは、死刑囚鉱山へと送り込まれるが、そこで出会ったのは隣国の英雄騎士デュフェルだった。二人は運命的な出会いを果たし、力を合わせて大胆な脱獄劇を成功させる。 だが、自由を手に入れたその先に待っていたのは、策略渦巻く戦場と王宮の陰謀。「生き抜くためなら手段を選ばない」智略の天才・シロンと、「一騎当千の強さで戦局を変える」勇猛な武将・デュフェル。異なる資質を持つ二人が協力し、国家の未来を左右する大逆転を仕掛ける。 これは、互いに背中を預けながら、戦乱の世を生き抜く王女と騎士の生存戦略譚である。 ※この作品はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※本編完結・番外編を不定期投稿のため、完結とさせていただきます。

過程をすっ飛ばすことにしました

こうやさい
ファンタジー
 ある日、前世の乙女ゲームの中に悪役令嬢として転生したことに気づいたけど、ここどう考えても生活しづらい。  どうせざまぁされて追放されるわけだし、過程すっ飛ばしてもよくね?  そのいろいろが重要なんだろうと思いつつそれもすっ飛ばしました(爆)。  深く考えないでください。

【 完 結 】スキル無しで婚約破棄されたけれど、実は特殊スキル持ちですから!

しずもり
ファンタジー
この国オーガスタの国民は6歳になると女神様からスキルを授かる。 けれど、第一王子レオンハルト殿下の婚約者であるマリエッタ・ルーデンブルグ公爵令嬢は『スキル無し』判定を受けたと言われ、第一王子の婚約者という妬みや僻みもあり嘲笑されている。 そしてある理由で第一王子から蔑ろにされている事も令嬢たちから見下される原因にもなっていた。 そして王家主催の夜会で事は起こった。 第一王子が『スキル無し』を理由に婚約破棄を婚約者に言い渡したのだ。 そして彼は8歳の頃に出会い、学園で再会したという初恋の人ルナティアと婚約するのだと宣言した。 しかし『スキル無し』の筈のマリエッタは本当はスキル持ちであり、実は彼女のスキルは、、、、。 全12話 ご都合主義のゆるゆる設定です。 言葉遣いや言葉は現代風の部分もあります。 登場人物へのざまぁはほぼ無いです。 魔法、スキルの内容については独自設定になっています。 誤字脱字、言葉間違いなどあると思います。見つかり次第、修正していますがご容赦下さいませ。

奪われ系令嬢になるのはごめんなので逃げて幸せになるぞ!

よもぎ
ファンタジー
とある伯爵家の令嬢アリサは転生者である。薄々察していたヤバい未来が現実になる前に逃げおおせ、好き勝手生きる決意をキメていた彼女は家を追放されても想定通りという顔で旅立つのだった。

ねえ、今どんな気持ち?

かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた 彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。 でも、あなたは真実を知らないみたいね ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・

私の妹は確かに聖女ですけど、私は女神本人ですわよ?

みおな
ファンタジー
 私の妹は、聖女と呼ばれている。  妖精たちから魔法を授けられた者たちと違い、女神から魔法を授けられた者、それが聖女だ。  聖女は一世代にひとりしか現れない。  だから、私の婚約者である第二王子は声高らかに宣言する。 「ここに、ユースティティアとの婚約を破棄し、聖女フロラリアとの婚約を宣言する!」  あらあら。私はかまいませんけど、私が何者かご存知なのかしら? それに妹フロラリアはシスコンですわよ?  この国、滅びないとよろしいわね?  

ざまぁされるための努力とかしたくない

こうやさい
ファンタジー
 ある日あたしは自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生している事に気付いた。  けどなんか環境違いすぎるんだけど?  例のごとく深く考えないで下さい。ゲーム転生系で前世の記憶が戻った理由自体が強制力とかってあんまなくね? って思いつきから書いただけなので。けど知らないだけであるんだろうな。  作中で「身近な物で代用できますよってその身近がすでにないじゃん的な~」とありますが『俺の知識チートが始まらない』の方が書いたのは後です。これから連想して書きました。  ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。  恐らく後で消す私信。電話機は通販なのでまだ来てないけどAndroidのBlackBerry買いました、中古の。  中古でもノーパソ買えるだけの値段するやんと思っただろうけど、ノーパソの場合は妥協しての機種だけど、BlackBerryは使ってみたかった機種なので(後で「こんなの使えない」とぶん投げる可能性はあるにしろ)。それに電話機は壊れなくても後二年も経たないうちに強制的に買い換え決まってたので、最低限の覚悟はしてたわけで……もうちょっと壊れるのが遅かったらそれに手をつけてた可能性はあるけど。それにタブレットの調子も最近悪いのでガラケー買ってそっちも別に買い換える可能性を考えると、妥協ノーパソより有意義かなと。妥協して惰性で使い続けるの苦痛だからね。  ……ちなみにパソの調子ですが……なんか無意識に「もう嫌だ」とエンドレスでつぶやいてたらしいくらいの速度です。これだって10動くっていわれてるの買ってハードディスクとか取り替えてもらったりしたんだけどなぁ。

このやってられない世界で

みなせ
ファンタジー
筋肉馬鹿にビンタをくらって、前世を思い出した。 悪役令嬢・キーラになったらしいけど、 そのフラグは初っ端に折れてしまった。 主人公のヒロインをそっちのけの、 よく分からなくなった乙女ゲームの世界で、 王子様に捕まってしまったキーラは 楽しく生き残ることができるのか。

処理中です...