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まさかの俺だった! 3

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 “リャナンシー”とは「妖精の恋人」などと呼ばれる美しい女性の姿をした妖精だ。彼女の愛を賜った者は詩の才や美しい歌声を与えらえる。だが代償に生気を吸われ早死にするという。
 希代の芸術家が短命に終わるのは彼らが彼女に恋をして作品を紡いだからだとも言われる妖精。

 そんな妖精を主題に沿えた恋物語らしい。
 仮面舞踏会の際に出会ったクリスティーヌ嬢の繊細でいて眼を惹く美貌を思い出し、確かにはまり役だなと納得した。

「次の公演がもう決まっているのですか?」

 期待に満ちた瞳を向けるシェリルちゃんにアイリーンは意味深に微笑む。

「次回作はオペラ座を舞台にした物語らしいわ。主役は勿論クリスティーヌで役どころはプリマドンナを夢見るオペラ歌手。お相手は仮面をつけた謎の男性。サスペンスも混ぜたミステリアスなゴシック・ロマンスよ」

 ……何それ?

 モロにオペラ座の怪人じゃないですか??
 クリスティーヌにオペラ座に仮面の男とか確実にアレじゃん。

 頭の中で『THE PHANTOM OF THE OPERA』が思わず木霊した。

 脳内で有名なあの楽曲を奏でる俺へアイリーンが思わせぶりに流し目を送る。
 とっても色っぽいんですが、含みのある眼差しにドキドキが嫌な部類のドキドキなのが凄く残念。

 今更だけどそもそも何で女性三人のこの空間に俺が混ざってんの?

 正解はベアトリクスを迎えに来てアイリーンに捕まったからですね、わかります。

「何でも今回の題材はクリスティーヌ本人の提案らしいわよ?」

「クリスティーヌ様が?」

「まぁ、役者が提案をするなど珍しいですわね」

「そうね。でもどうしても歌いたかったらしいの。実は彼女、仮面の男性に恋をしているらしいわ」

「劇中でということですか?」

 きょとんと首を傾げるベアトリクスとシェリルちゃんにアイリーンはふふふっと偲び笑う。

「秘密だけどね。彼女、先日オークションが行われた子爵邸に居たらしいの」

 えっ!と二人の瞳が見開かれた。

「囚われていた彼女を助けてくれた方がいたそうよ。その御方は仮面をつけていて顔を隠していたけど、仮面で隠しきれないくらい美しい殿方だったらしいわ。白皙の美貌と射干玉の髪、満月のような蠱惑的な黄金の瞳をしていたそうだけど……。
そういえば、カイザー様も先日の仮面舞踏会にいらっしゃったわよね?何か知らない?」

 身を乗り出してわっざとらしく問いかけてくるアイリーンは確信犯だ。
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