331 / 363
まさかの俺だった! 3
しおりを挟む“リャナンシー”とは「妖精の恋人」などと呼ばれる美しい女性の姿をした妖精だ。彼女の愛を賜った者は詩の才や美しい歌声を与えらえる。だが代償に生気を吸われ早死にするという。
希代の芸術家が短命に終わるのは彼らが彼女に恋をして作品を紡いだからだとも言われる妖精。
そんな妖精を主題に沿えた恋物語らしい。
仮面舞踏会の際に出会ったクリスティーヌ嬢の繊細でいて眼を惹く美貌を思い出し、確かにはまり役だなと納得した。
「次の公演がもう決まっているのですか?」
期待に満ちた瞳を向けるシェリルちゃんにアイリーンは意味深に微笑む。
「次回作はオペラ座を舞台にした物語らしいわ。主役は勿論クリスティーヌで役どころはプリマドンナを夢見るオペラ歌手。お相手は仮面をつけた謎の男性。サスペンスも混ぜたミステリアスなゴシック・ロマンスよ」
……何それ?
モロにオペラ座の怪人じゃないですか??
クリスティーヌにオペラ座に仮面の男とか確実にアレじゃん。
頭の中で『THE PHANTOM OF THE OPERA』が思わず木霊した。
脳内で有名なあの楽曲を奏でる俺へアイリーンが思わせぶりに流し目を送る。
とっても色っぽいんですが、含みのある眼差しにドキドキが嫌な部類のドキドキなのが凄く残念。
今更だけどそもそも何で女性三人のこの空間に俺が混ざってんの?
正解はベアトリクスを迎えに来てアイリーンに捕まったからですね、わかります。
「何でも今回の題材はクリスティーヌ本人の提案らしいわよ?」
「クリスティーヌ様が?」
「まぁ、役者が提案をするなど珍しいですわね」
「そうね。でもどうしても歌いたかったらしいの。実は彼女、仮面の男性に恋をしているらしいわ」
「劇中でということですか?」
きょとんと首を傾げるベアトリクスとシェリルちゃんにアイリーンはふふふっと偲び笑う。
「秘密だけどね。彼女、先日オークションが行われた子爵邸に居たらしいの」
えっ!と二人の瞳が見開かれた。
「囚われていた彼女を助けてくれた方がいたそうよ。その御方は仮面をつけていて顔を隠していたけど、仮面で隠しきれないくらい美しい殿方だったらしいわ。白皙の美貌と射干玉の髪、満月のような蠱惑的な黄金の瞳をしていたそうだけど……。
そういえば、カイザー様も先日の仮面舞踏会にいらっしゃったわよね?何か知らない?」
身を乗り出してわっざとらしく問いかけてくるアイリーンは確信犯だ。
102
お気に入りに追加
439
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢の独壇場
あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。
彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。
自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。
正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。
ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。
そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。
あら?これは、何かがおかしいですね。
傍観している方が面白いのになぁ。
志位斗 茂家波
ファンタジー
「エデワール・ミッシャ令嬢!貴方にはさまざな罪があり、この場での婚約破棄と国外追放を言い渡す!」
とある夜会の中で引き起こされた婚約破棄。
その彼らの様子はまるで……
「茶番というか、喜劇ですね兄さま」
「うん、周囲が皆呆れたような目で見ているからな」
思わず漏らしたその感想は、周囲も一致しているようであった。
これは、そんな馬鹿馬鹿しい婚約破棄現場での、傍観者的な立場で見ていた者たちの語りである。
「帰らずの森のある騒動記」という連載作品に乗っている兄妹でもあります。
【完結】妃が毒を盛っている。
佳
ファンタジー
2年前から病床に臥しているハイディルベルクの王には、息子が2人いる。
王妃フリーデの息子で第一王子のジークムント。
側妃ガブリエレの息子で第二王子のハルトヴィヒ。
いま王が崩御するようなことがあれば、第一王子が玉座につくことになるのは間違いないだろう。
貴族が集まって出る一番の話題は、王の後継者を推測することだった――
見舞いに来たエルメンヒルデ・シュティルナー侯爵令嬢。
「エルメンヒルデか……。」
「はい。お側に寄っても?」
「ああ、おいで。」
彼女の行動が、出会いが、全てを解決に導く――。
この優しい王の、原因不明の病気とはいったい……?
※オリジナルファンタジー第1作目カムバックイェイ!!
※妖精王チートですので細かいことは気にしない。
※隣国の王子はテンプレですよね。
※イチオシは護衛たちとの気安いやり取り
※最後のほうにざまぁがあるようなないような
※敬語尊敬語滅茶苦茶御免!(なさい)
※他サイトでは佳(ケイ)+苗字で掲載中
※完結保証……保障と保証がわからない!
2022.11.26 18:30 完結しました。
お付き合いいただきありがとうございました!
乙女ゲームはエンディングを迎えました。
章槻雅希
ファンタジー
卒業パーティでのジョフロワ王子の婚約破棄宣言を以って、乙女ゲームはエンディングを迎えた。
これからは王子の妻となって幸せに贅沢をして暮らすだけだと笑ったゲームヒロインのエヴリーヌ。
だが、宣言後、ゲームが終了するとなにやら可笑しい。エヴリーヌの予想とは違う展開が起こっている。
一体何がどうなっているのか、呆然とするエヴリーヌにジョフロワから衝撃的な言葉が告げられる。
『小説家になろう』様・『アルファポリス』様・自サイトに重複投稿。
過程をすっ飛ばすことにしました
こうやさい
ファンタジー
ある日、前世の乙女ゲームの中に悪役令嬢として転生したことに気づいたけど、ここどう考えても生活しづらい。
どうせざまぁされて追放されるわけだし、過程すっ飛ばしてもよくね?
そのいろいろが重要なんだろうと思いつつそれもすっ飛ばしました(爆)。
深く考えないでください。
悪役令嬢はモブ化した
F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。
しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す!
領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。
「……なんなのこれは。意味がわからないわ」
乙女ゲームのシナリオはこわい。
*注*誰にも前世の記憶はありません。
ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。
性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。
作者の趣味100%でダンジョンが出ました。
このやってられない世界で
みなせ
ファンタジー
筋肉馬鹿にビンタをくらって、前世を思い出した。
悪役令嬢・キーラになったらしいけど、
そのフラグは初っ端に折れてしまった。
主人公のヒロインをそっちのけの、
よく分からなくなった乙女ゲームの世界で、
王子様に捕まってしまったキーラは
楽しく生き残ることができるのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる