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覚悟と決意と、記憶に焼き付いた声 1

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 八つ当たりを兼ねて拳を震わせていた俺はひとつ大きく溜息を吐いて気持ちを切り替えた。

 今出来ることは八つ当たりでも、打ちひしがれることでもなく、今後をどうするか考えること。

図書室ここに魔族とか魔王に関する書籍ってある?出来れば生態や風習、欲をいうなら育児本みたいのが欲しいんだけど。あと魔族について知ってる知識、教えて下さい」

 さらっと無茶ブリも織り交ぜつつ、姿勢を正して頭を下げる。

「……育てる気、なんだ…」

「本人も望んでるし、今のところは。だけど俺には圧倒的に知識が足りない」

 暫く無言を保った彼がゆっくりと立ち上がった。
 基本座ったところしか見た事がない彼が歩く姿を見るのは初めてだ。

 謎の感動を覚えつつ、つい脚がちゃんとあるか確認してしまったのは無意識。
 透けてもないし、ちゃんとあったよ。

「ここと、そこ。あとこれかな。ご希望の育児本は残念ながら存在しないけど」

「だよね」

 あったらいいなとは思ったがあるとは思ってない。

 何だ魔族の育児本って……。
 誰が書いた誰向けの本だよって感じだよね。

 数冊の書籍を引き抜いて重ね、俺達はカマルの居る場所へ戻った。

「で?知りたいことは何?」

 たった今俺が運んだばかりのそれを一冊手に取って、パラパラとめくりながら彼がそう問いかける。
 答えてくれる気はあるようだ。

 ゲームのお助けキャラで “何でも知ってる図書室の妖精さん” 。

 実は今までだって聞きたいことは沢山あった。
 あのレプリカの宝石や魔族売買の黒幕、これからのこと、そして謎に満ちた彼自身のこと。
 
 だけど積極的に彼に尋ねることをしなかったのは……。

 利用するみたいで嫌だったから。

 彼自身のことを尋ねなかったのは、拒絶されるのが嫌だったから。

 彼とカマル。
 図書室で偶然出会ったこの不思議な友人たちを俺はことのほか気に入っている。
 あっちが友人と思ってくれるかどうかは別として。

 だから博識な彼の知識を借りることに抵抗があったのだが、今回ばかりはその知識を借りよう。

「…魔王は、危険な存在?」

「抽象的な質問だね。聞いたと思うけど、魔王は“種”だよ。人に性格があるように、魔王も同一の存在じゃない。ただ、強い力を持つという点では人にとって脅威かもね」

「“魔王種”は必要に従い生まれると聞いたけど、魔王にはその役目みたいのが本能的にあるのか?悠々自適に過ごす魔王もいるって聞いたんだけど…」

「本能的にはあるかな。でもそれに捕らわれない魔王もいる。逆に逃れられない個体もいるのかも知れないけど」

「じゃあもし、その役目がなくなったら?」
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