ブラック・スワン  ~『無能』な兄は、優美な黒鳥の皮を被る~ 

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子育てに最強の能力 2

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 おっかなびっくり赤ちゃんに接していた皆も今やデレデレ。
 こうして姿を見せる度に寄ってくる。

 ガーネストやベアトリクスは勿論、大人しいリアンやサスケも興味深々だ。子供組は赤ちゃんを見慣れてないから余計なんだろうけど。

 そして影の皆はあまり姿を現しはしないんだけど、気づくとそっと子供用の玩具が置いてあったり。
 ごんぎつねか。

 つまりマオたんは我が家のアイドルです。

「マオー、元気か?」

「お兄様、私がミルクをあげてみてもいいですか?」

 ぷにぷにほっぺをツンツンしたり、差し出した指を小っちゃい手で掴まれて歓声を上げたり…ここは楽園か?
 天使しかいない…。

 明らかに覚束ない手つきでマオを抱き上げるベアトリクスに抱き方をレクチャーし、リリアから受け取った哺乳瓶を頬に当ててから手渡す。

「それは何をしてますの?」

「人肌の温かさか確かめてるんだよ。あまり熱すぎては駄目だから」

 成程、と頷いたベアトリクスが俺の真似っこをして哺乳瓶を頬に当ててからマオの口元にやるのが可愛い。

「兄上は来週から復帰されるのですか?」

「その予定だけど…」

 現在俺は休職中です。

 まさかの人生初の育児休暇。
 俺の子じゃないけど。

 ジストの話だと一週間程度で意思疎通可能なまでに成長するだろうという話なので、余裕をもって10日間の休みをとった。

 因みに、学園へマオを連れて行く許可も念のためとった。
 お世話が何時までになるかもはっきりわからないし、最悪授業中はリフが面倒みてくれる。

 理事長はびっくりしてたけど俺がこの子の面倒を見ることを決めたのは最終的にはティハルトだし、王命とあれば拒否も出来なかったんだろう。

「マオが大きくなったらどうしますの?」

 問いかけるベアトリクスも、その他の面々も何か訴えるように俺を見る。

 あれだ。仔犬を拾ってきた子供が、
「お母さん、面倒みるからウチで飼っちゃ駄目?」的な雰囲気がバンバンします。

 可愛いもんね、気持ちはわかるよ。物凄く。

 そうなんだよね、成長したマオをどうするかが大問題。

 そもそもどの程度成長するかっていうのもあるし。
 成長したとて、歩行が出来て言語が喋れる程度の幼児みたいな状態ならそのまま放り出すのも気が引ける。

 ジスト曰く、どうにでもなるし弱ければ死ぬだけだって言うけど、こっちとしてはそんな簡単に割り切れない。

「取り敢えず、マオと話をしてみてかな。安易に決められることでもないし」
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