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本物の偽物と偽物の本物 2
しおりを挟むいや……、ごめんリフ。
俺は別に宝飾品のおねだりがしたかったわけじゃないんだよ?
そして完全に高価な本物以外身に着けさせる気ねぇな、これ。
しかも何やかんやで結局宝飾品を作らされることになりました。別にいいけど。
ついでだからとガーネストとベアトリクスにも宝飾品を贈ることに決めた。近々馴染みの宝石商が手を擦り合わせて邸を訪れることになるだろう。
ポトリと落ちたソレをペリドットの瞳がまじまじと見つめる。
ふんふんと鼻先を近づけるカマルに、口に入れでもしたら大変だと慌ててカマルの頭を押さえてもう片方の手でそれを拾った。
好奇心旺盛な瞳は俺の掌にのったそれをじぃっと眺める。
「カマルー、コレは食べ物じゃないぞ?」
抑えた頭をわしわしと撫でながらそう口にすれば、「わかってる」とでも言いたげな不満そうな瞳を向けられた。
ポケットから零れ落ちたソレは、先日の模造宝石だ。
うっかり落としたのは何となく持ち歩いてた、深く澄んだ翠を宿した大粒のエメラルド。
きらきらと好奇心に輝く瞳は同じくきらきらな石に釘付けだ。
おっきな肉球のある手でつんつんとしては、俺の掌から転がり落ちたそれを床の上でコロコロしてる。光を受けて絨毯の上にきらきらとした翠や黄色の光の模様が浮かぶのが楽しいようだ。
鋭い爪を当てずに柔らかな肉球の部分で触れてるのが何気にお利口さんだ。
尤も、俺が持参したおやつを取り出せばすぐに興味は逸れたけど。
「本物?」
カマルが興味を失ったエメラルドをハンカチの上へ拾い上げていると不意に声が掛かった。
端的な疑問は俺の扱い故だろう。
剥き出しの宝石を、しかもカッティングだけで宝飾も施されていない宝石をポケットに無造作に突っ込んでる人間はそうは居ない。
偽物をポケットに入れてる奴も滅多にいねぇけど。
「んにゃ、偽物。見る?」
摘み上げれば、華奢な指がそれを受け取る。
光に翳し、前が見えているかも怪しい長い前髪に阻まれた瞳がそれをじっと見つめ……。
「莫迦みたい」
酷く無機質な声が呟いて、ソレは俺の掌へと戻った。
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