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それは畏怖を孕んだ羨望に似た 4

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(ナディア視点)


 先生はさして気にした風でもなく赦してくれて。

「貴女が無事で良かった」

 そう口にして微笑んだ先生の笑顔が吃驚するぐらい優しくて。
 近寄りがたさに勝手に苦手意識を持っていた私は、後悔に胸がチクリと痛んだ。

 先程のアレクサンドラ様の時と同じ、自分が酷く情けなくてちっぽけな存在だと自覚して。


 誰もかれもが勝手な期待や幻想を通してしか“私”を見てくれない、そう嘆きつつ
 結局私も自らが勝手に造り上げた虚像を通してしか“彼ら”を見ていなかった。

 実際に触れ合った彼らは思っていたよりずっと“普通”で、
 遠い世界の触れることの出来ない存在なんかじゃなくて、優しく血の通った存在だった。


 だけど__________。

 思ったよりもずっと親しみやすくて、優しくて暖かい。


 それでも__________。

 やっぱり私は“”が苦手だ。



 零れそうな程の満点の星空。
 深い闇と、臓腑に染み入るような昏く冷たい夜の静寂。

 雲に隠れた月。

 一瞬の静寂の後、
 昏い昏い闇を切り裂いて顕れた煌々と輝く満月。

 息を呑むほどに綺麗な。
 瞳を奪われる程に美しい。

 その満月と同じ色彩いろの瞳で月を仰いでいた美しい人。

 闇を従え、星々を導いて、孤高に輝く黄金の月。
 同じ色彩いろを宿す人。

 それは一服の絵画のようでいて、神聖で厳かなその光景に誰もが眼を奪われた。

 同時に思った。
 ああ、やっぱり この人は苦手だ。



 心の奥底から浮かび上がってくる記憶。

 何処か危うげな手つきで、おくるみを揺らす一人の女性。
 夢見るような、陶酔した笑みを浮かべて、胸に抱いたおくるみを覗きこむ。

「ぐっすりね。だけど早くその瞳を見せて?ママをその瞳に映して?」

 謳うように、囁くように紡がれる声。


「ああ、可愛い子。可愛い、可愛い私の


 ああ、この人は、
 この人は、まるで_______________。



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