ブラック・スワン ～『無能』な兄は、優美な黒鳥の皮を被る～

ドキドキ初体験 １

　

　怪我した女性を歩かせるわけにはいかないから抱き上げようと身を屈めたら、

「カイザー様、私が」

　速攻でリフに止められた。
　わりと強めの制止。

　当人の少女も倒れそうな真っ赤な顔で「お願いしますっ！」って喰い気味にリフを見てるし、ダイアたちには温い眼で見られて俺はすごすごと手を引っ込めた。


　ゲームではガーネストとダイアはあまり仲が良くなくて別々の班だった。
　サフィアを選ばない場合、ブレスレットのチャームの色で攻略対象者を一人選ぶ筈だったけど二人が同じ班ってことはその辺どうなってるんだろ。
　
　そんなことを思ってガーネストの手首を何とはなしに見ればチャームの宝石はピンク。

　……ガーネット赤とダイヤモンド白（透明？）の中間ってこと？？

　そーいえば、ベアトリクスのチャームはダイヤだった。

　ガーネットを選んでもダイヤを選んでも外れだったというわけか。
　リリー嬢、アレクサンドラ狙いでいってよかったね！


「ベアトリクス！」

　姿を見つけた途端、甘く顔を綻ばせてダイアが名を呼ぶ。
　その声音には愛しさが溢れていて、ゲームと違って大分イイ性格にはなってるけど、こーいうとこはかなり素直だよなぁとゲームより大分糖度を増したリアル王子様を眺める。

「ダイア様っ！？……それにお兄様たちも」

　シトリンの瞳を大きく見開いてダイアを見つめる可愛い妹。

　お兄ちゃんの姿も認識してくれて嬉しいよ。
　これでシャットダウンされてたら地面にのの字書いていじけてた。

「突然すまない、彼女が怪我をしてしまって。カトリーナ嬢、申し訳ないが貴女の能力を貸して頂けないだろうか？」

「怪我を？大変、勿論ですわ。私に出来ることなら幾らでも」

　ガーネストの申し出に嫌な顔一つしないで心配そうな顔をするカトリーナ嬢はマジ良い子。