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限りある資源を大切に 4
しおりを挟む何はともあれ、今の俺に出来ることはせめて彼女たちにとって頼れる大人であることだけだ。彼女たちが手を伸ばせる相手である為にも、こんな情けない様は誰にも見せられない。
濡れて張り付いた髪を払いのける。
俺に何が出来るのか_____?
転生に気づいたあの日から、繰り返し何度も問いかけたそれ。
俺はどう生きるのか______?
未来は変えられるのか、変えられるとしてそれはモブな俺でも可能なのか。
出来る、出来る筈だ。
何度もそう繰り返し、だけどいつだって一抹の不安が心を過る。
本当に?
ただの脇役でしかない俺にそんなことが可能なのか?
切り株の上の剣を手に取った。
鞘から抜けば、現れる漆黒の刀身。
吸い込まれるように美しいそれに俺の姿が映る。
「…っ、知ったことかっ!」
睨みつけるように眼の前の樹々を見据え、走り出す。
跳躍と共に一閃。
太い幹に飛び込むように足をつけ、反動をつけて後ろへと飛びすさる。
大木から視線を放さぬまま、迫りくる幹に更に数度刃を放つ。降りかかる枝を避け、バックステップで下がりながら身を屈めて迎え撃つように倒れ込んでくる大木に斬撃を叩き込んだ。
「俺はっ」
強く強く剣を握り込んだまま、俺は低く呟いた。
「カイザー・フォン・ルクセンブルクだ」
モブだとか、ゲームだとか、無駄かもしれないとか。
そんなこと全部知ったことか!
俺はカイザー・フォン・ルクセンブルクで、この世界の住人だ。
王であるティハルトたちの親友で、可愛いあの子たちの兄貴で、俺を支えてくれる皆の主で、大切な人達がこの世界に生きている。
ズドォオオン。
地響きと共に砂埃が舞う。
片肘を上げて砂埃から口と眼を守る。
俺の脇に舞う、緑豊かな葉っぱと、小枝に、幾つかに両断された大木。
……。
し、森林を伐採してしまったっ!!
予想外に大きく響いた大木が倒れた音にやっと俺は現状を把握した。
慌ただしく此方へ向かって響いてくる幾つかの足音と「何事だっ?」という声。
切り倒された大木と、その横で剣を手に佇む俺。
ど、どうしよう?!
近づいてくる足音に、未だびしょ濡れな俺は先程までとは違う汗に背を濡らした。
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