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これが敵に塩を送るということか 4
しおりを挟む「魅了でダイアを縛り付けて、自分を好きになってもらって。それでベアトリクスは満足出来るかい?」
俺の問いにふるふると振られる頭。
「だけど後悔しても、一生、後悔しつづけることがわかっていてもその願いを望む時がくるかも知れない」
ひゅっっと小さく息を呑む音。
「残酷だけど、この世界には叶わない想いも叶わない願いもある。だから、沢山悩みなさい。一時の感情だけに流されて呑まれてはいけない。何かを成すなら覚悟をしなさい」
「お兄様?」
戸惑いを持って上げられた顔へと笑いかける。
「異能なんかに頼らなくても、胸を張ってダイアに振り向いて貰えるようまずは自分で頑張ってごらん?頑張って、悩んで、努力して。それでももし、もしもベアトリクスが間違えて道を踏み外してしまったその時は」
たった一つだけ、俺に出来ること。
「その時は私も共に責められてあげる」
糾弾され、投げられる礫の盾となろう。
ただ、絶対の味方で居続けよう。
「一つだけ、覚えておいて欲しい。何があろうともベアトリクスは私のたった一人の大切な妹で、私は絶対にベアトリクスの味方だということを」
こんなことが何の救いになるかはわからない。
だけどゲームのベアトリクスのように孤独に追い込まれることのないように。
僅かでも心の慰めとなりますように。
勿論断罪させる気もないし、万が一断罪されたとしてもその後も不自由なく養えるだけの財はある。公爵家の財とは別に店舗経営も順調だし!
その後、抱きついてきたベアトリクスを存分に甘やかし、気分転換という名のもとにデートの約束を取り付けた。
役得でしかない。更には…。
「こうやって慰めるのもいずれは他の男に譲らなければならないんだね」
髪を撫でながら感慨深く呟けば、
「もし将来誰かと結婚しても、カイザーお兄様は私の大切なお兄様に変わりありませんわ。私は一生、カイザーお兄様とガーネストの『妹』なんですから」
赤くなった頬をぷうっと膨らませて上目遣いでそう言われた俺の衝撃。
「嫁にはやらん!!」と叫びたくなった俺の心境がお分かりだろうか。
だけど実際は……。
俺の言葉に従ってベアトリクスはちょっぴり積極的にダイアへアプローチを開始し、結果二人の仲はより親密に。
妹の倖せが第一だけど、ひょっとして俺がその時期を早めた?
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