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続・敵に回してはいけないお方 1

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「まぁ、美味しい」

 口元に手を当て、上品に驚きを見せる妙齢の女性。

「恐縮です」

 にこやかに答える俺。
 その心境は言葉通り恐縮しまくっている。


 発端は数日前。

 仕事で城へ出向いたある日。重役たちとの会議を終えた俺は足取りも軽くティハルトと回廊を歩んでいた。
 会議とかマジ面倒くせぇ。会議自体もだけど、この妙な能力が目覚めてからというもの、人が多い場所は俺の鬼門だ。
 狸共の心の内が煩い、煩い。
 まぁ、便利な一面もあるけど……いい加減人間不信になりそうですよ?

 夜会も嫌い。
 笑顔の裏の罵り合いがダイレクトだから。
 着飾って微笑んでる分、その落差がデカい。

 ちょっと可愛いなーとか、綺麗だなーって眼を奪われてた女性がにこやかに微笑みながら仲良さげにしてた友人への嫉妬と怨嗟に塗れてる様を見るのはちょっとしたホラーです。

 女性不信になりそう…。
 俺、結婚出来るのかな……?

 そんなこともあり、面倒な場所から解放された俺はるんたった気分でスキップせんばかりに弾んだ気持ちだった。(しないけど)

「そういえば」

 口を開いたティハルトへ視線を向ける。

「母上がお前の菓子を食べたいといっていたぞ」

「流石、耳が早いね」

 俺の出店がバレてる。
 まぁ、王家に隠せるとも思ってないし、問題はないけど。

「いや、そっちもあるが。お前のお手製の菓子のことだ」

「…」

 思わず足が止まった。
 そして危うく手に持った資料を落とすとこだった。

「はい?」

「シュー菓子のことだ。見事な出来栄えだったとダイアが言ってたし、大方他の令嬢からも話を聞いたんだろうな。と、いうことで今度持ってこい。何なら厨房を使っても構わないぞ」

「決定事項なんだね?」

「勿論。あの母上が引くと思うか?俺の分も頼むな」

「ええー」

「何だ?母上と二人で茶会をしたいのか?」

「いえ、是非、同席でお願いします」

 そんな経緯があり、まさかの素人の手作り菓子を一国の王妃様&王子殿下に献上です。

 城の厨房を借りた際にも料理人たちに二度見されました。

 ですよね。
 俺でも二度見するわ、そんなん!


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