ブラック・スワン  ~『無能』な兄は、優美な黒鳥の皮を被る~ 

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甘い誘惑 3

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「ガーネスト、ダイア様もお誘いしましょう」

「折角ならカイザー兄上がお菓子を作ることは当日まで内緒にしとこう。吃驚びっくりするだろうし」

「そうですわね!私もカトリーナ様達には内緒にしときますわ」

 ちょっと悪い顔をして笑うガーネストにベアトリクスも楽し気に同意する。
 真剣に日取りを相談しあう二人を見ながら俺は眼の前に置かれた焼き菓子へと手を伸ばす。

 当家のシェフ筆頭のトーマス作。

 丁度いい具合に焼き色のついた菓子は見た目にも美味しそうで、味も勿論美味しい。
 正直素人しろうとの作ったお菓子より本職のお菓子の方がよほど美味しいと思うが、我が家の姫君が特別をお望みならば仕方がない。
 公爵家嫡男の手作り菓子というのは珍しいだろう。

 ベアトリクスのお友達にも会ってみたいし。
 悪役令嬢フラグのあるベアトリクスの周りには一人でも多く頼もしい味方が欲しいところだ。

 それに丁度女の子に聞いてみたいこともあるし。

 実は小規模なお店を経営したいなーと考え中です。

 順調にガーネストが公爵家を継ぐことになったら俺、無職じゃん?
 一応色々技能もコネもあるし生活に困ることはないだろうけどちょっと将来に向けてお小遣い稼ぎがしたいと考えておりました。出資は勿論ポケットマネー。

 装飾品とかも利率が高くていいなと思いつつ、あんま高級にしすぎても失敗した時のリスクやあと貴族の客ばっかだと接客面倒。食べ物もいいなと迷った結果。

 お菓子&小規模な装飾品にしようかと。

 お菓子は目玉としてマカロンを考え中。
 この世界にまだないしね。
 ケーキとかよりは日持ちや持ち運びの面で便利だし、何よりあのビジュアルは女の子受けすると思うんだ。

 そしてこんな時のお役立ちメイド、リリアさん!!

 俺が水を差し向けたら前世情報をぺらぺら提供してくれたよ!

 そして無事、マカロンの話題を引き出して俺が知っていたんじゃなくて我が家のメイド発案って体をGETしたぜ。
 利用してごめんリリア。
 店舗を構える際にも一枚噛んでもらうつもりです。
 でも報酬提示したら本人大喜びで乗り気だったから問題なし!

 マカロンとそれから綺麗な細工を施したショコラがメイン。
 店舗の一部でチャームやアクセサリーなど小振りな商品を扱い、中にはお菓子とセットにしたものも取り扱おうかなと。

 バレンタインとかでもよくあるじゃん?
 ちょっとお高いチョコレートで入れ物がそのまま小物入れとして使用出来たり、リボンの代わりのゴムがそのままヘアアクセとして使えたりする商品。
 あんな感じで入れ物が美しい商品や、チャームを包装に取り入れた商品、紐の部分に小さな宝石をつけて栞としても使えるしプレゼント用にメッセージを書いて送れる商品などを検討中。

 客層としては女性&女性へのプレゼント狙い。

 なので俺としては年頃の女の子にリサーチしたい狙いもあります。


「ああ、そうだ。ガーネスト、当日はリアンを貸して欲しい」

「僕、ですか?」

 突然名指しされたリアンがきょとんとした顔で自分を指す。
 それに「頼む」と返せばわけもわからずに頷くリアン。

 不思議そうな彼はガーネストの従者。
 グレーの髪にブルーグレーの瞳、ガーネストとは同じ年だが童顔で小柄なリアンは仔猫を思わせるような大人しい少年だ。

「お菓子を作るのにリアンの異能を貸して欲しいんだ」


 こうして、ベアトリクスのお友達を招いたお茶会が決定された。

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