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お兄様の域にはまだまだ遠いですわ 1

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(ベアトリクス視点)



 鐘の音が鳴り、教師が教室を去ると共にさざ波のように広がる騒めき。

 ペンを仕舞い、ノートを閉じているとしとやかな声が掛かりました。

「ベアトリクス様、先程の公式の応用はお分かりになりまして?」

 ノートを手に近づいて来たのはカトリーナ様。

「どうぞ、カトリーナ様。僕は友人の所に行くので宜しければお使い下さい」

 不意に隣から掛かる声。
  椅子を引いてカトリーナ様に勧めて下さったのは隣の席のサフィア様。
 それにお礼を言って腰を下ろせば、サフィア様は何でもないことのようににこやかに微笑んで教室を去って行かれた。

「相変わらず紳士でらっしゃいますわね」

「それに凄く優秀でらっしゃるから、わからないところがあっても直ぐお聞き出来て頼もしいばかりですわ」

「それで、こちらの問題ですけど…」

「ああ、これは……」

 華奢な指が指し示した箇所を覗きこみ、解説を始める。
 すると同じところが不安だったのか数名の令嬢が更に近寄ってらして。時々挟まれる質問に答えながら一通りの解説を終えました。

 何てことのない学園での日常。

 楽しみでもあったものの、最初は凄く不安でしたの。

 基本的に屋敷で過ごす生活は、いつだってお兄様達と一緒で。
 お茶会等は偶にあるものの同じ年のお友達というものにはあまり縁なく、私の世界は今までお兄様達と屋敷の人達、それに幼馴染のダイア様たちで出来ていた。

 だけど無事学園にも慣れてお友達も出来ましたわ。

 一番のお友達はカトリーナ様。

 私と同じく公爵家の令嬢で、柔らかそうな淡い金髪に垂れ眼がちな深い翠の瞳。
 優しくて如何いかにも女の子らしい性格と大人し気な外見に反して柔らかな膨らみを主張する胸元が少し羨ましいですわ。

 ダイア様もこういう女の子らしい子の方がお好きかしら…。
 そんなことを思って落ち込むこともあるけど大好きなお友達。

 お隣の席のサフィア様は侯爵家の嫡男で跡取りとして成績も品行もとてもご立派な方。

 透き通る薄水色の長い髪もお顔立ちも女性を凌ぐようなお美しさ。
 今度髪のお手入れを聞いてみようかしら。
 でも男性にそんなことを聞くのは失礼かしら?

 サファイアのような蒼い瞳はご本人の冷静な性格もあって冷たく見える方もいらっしゃるようだけど、とっても優しくて紳士的な方。

 他にもダイアナ様にマリア様…沢山のお友達が出来て毎日が楽しいですわ。

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