ブラック・スワン  ~『無能』な兄は、優美な黒鳥の皮を被る~ 

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長いものには巻かれよ 1

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 あざけるように、見下すように、余裕ぶって浮かべられた笑み。

 深い藍色の髪をした青年。紫を帯びた蒼の瞳は細められ、真っすぐに俺に向けられている。
 白い肌に細い手足はとても鍛えられたそれには見えない。

 だけど三日月の形に歪められた唇と瞳が、雄弁に告げる。

 お前を消すことなどわけがない、と_______。

 ………が。

 残念ながら俺にはわかる。

 向き合った初対面の青年が、余裕綽々よゆうしゃくしゃくな外面とは裏腹に滅茶苦茶キョドってることが。

 余裕なんて一ミリもない。
 聴こえる心の声は『ヤバい』のエンドレス。

 うん、わかるよ。
 超恐いもんね。ハンゾーさんがマジもんの殺気バシバシ放ってんし。

 俺も恐い。

 さて、この青年が誰かといいますと。
 今、ちまたを騒がせている暗殺者さんです!

 ニュースペーパーや噂話ではお馴染の凄腕の暗殺者。通称『死神』。
 その姿を見たものは全て消されると有名なお方です。

 そしてそんな危険人物と自宅にて向き合っている俺。

 隣にはリフががっちり控えてるよ!!
 そして奴の後ろにはハンゾー!!完璧な布陣!!!

 何故そんな状況に俺がいるかというと、俺がご招待したからである。

 いやね、ウチ敵が多いからさ。
 若造だと思ってめられてるし俺。

 そんな百戦錬磨の死神さんに俺の可愛い弟妹が狙われたら超大変!ってことで、蛇の道は蛇。
 ハンゾーさんに聞いてみたわけですよ。
 そしたら何と見たことあるっていうじゃないですか。

 その姿を見たものは全て消されるんじゃねーのかよ!!

 しかも詳しく聞けば、俺の危惧を悟ったのか「始末しますか?」って言われました。
 超あっさり。俺、吃驚びっくりですけど。

 思わず出来るのか聞けば

「あの程度の者、何時でも殺せます」

 とのお返事。
 ウチの忍者が頼もしすぎる件。

 と、いうことで一先ず殺さずにご招待となりました。


 うん。普通に捕まえてきましたね、ハンゾーさん。

 俺が依頼したの今朝なんですけど。仕事早すぎか。

 そしてなんかめっちゃビビッてらっしゃいますけど、暗殺者さん。
 どんな脅ししたのかは聞かないでおきますね。


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