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天使と出会い、ジョブチェンジ 1
しおりを挟むそれから俺が如何したかというと。
滅茶苦茶『努力』を重ねた。
何故かは知らん。
だが、俺が『無能』の判定を受けることはほぼ確実。
モブキャラな癖に何故にそんなことが確かかというと、
俺が異能を持たぬ不義の子疑惑のある子だからこそ弟が公爵の爵位を継ぐことになるからですね。
そして兄を見下した攻略対象者の弟は傲慢な俺様に、悪役令嬢の妹は我儘姫になるわけですね。
ぶっちゃけ、爵位に興味はない。
いや、以前は興味以前に当然自分が将来担うものって思ってましたよ?
だけど、前世の記憶を想い出した今。
爵位?何それ?おいしいの?状態である。
むしろ面倒くさい。
まだ見ぬ弟よ、立派に公爵家を継ぐといい!
爵位に興味はない。
だが、だからといって異能がないことを嘆きながら生きる気もない。
折角のファンタジーな世界なのだから特殊な能力を使ってみたかったという気持ちもなくはないが、元々異能など存在しない世界で生きていた人間だ。
例え 『無能』 であろうと、カイザー自体のスペックは悪くない。むしろ優秀。
ところでカイザーって名前ちょっと恥ずかしいな。
響きは恰好いいけど、 “皇帝” って……。
今は相応しい名だって褒めたたえられてるけど、きっと無能判定下った途端に掌を返したように莫迦にされんだろうなぁって幼気な俺は超憂鬱だった。
「先生、あらゆる知識を私に授けて下さい」
重い書物を何冊も抱え、家庭教師に教えを乞う。
「師匠、私に実戦に活かせる剣技・武術を施して下さい」
何度土につこうとも、鍛え上げられた巨躯へ立ち向かった日々。
特別な才能がないのならば、誰よりも努力するしかない。
それに俺には楽しみがあった。
自分の役回りにも、この乙女ゲームの世界にも思うところは多々あるが、それはそれ。
前世からずっと、俺は弟か妹が欲しかったのだ。
別に前世の兄姉に不満があったわけではない。
若干覆せない力関係があったとはいえ、姉達のことは嫌いではなかった。
同士である兄ちゃんはいっつも小遣いもくれて優しかったし。
何だかんだで一人歳の離れた俺に兄も姉も甘かったし守ってくれた。
だが、それ故に。
ずっと憧れていたのだ。
俺が甘やかし、守れる存在である弟や妹に。
そして乙女ゲームの世界の登場人物である弟と妹は滅茶苦茶ヴィジュアルがいい。
俺の不甲斐なさのせいで傲慢俺様かつ悪役我儘姫となってしまったまだ見ぬ弟妹。
今ならば間に合う!
異能を持たずとも立派な兄となり、いずれ生まれてくる弟妹を真っ当に育て上げてみせる!!!
特に妹。
弟は傲慢俺様になろうとも幸せになれる未来が待っているが、悪役令嬢たる妹はそうはいかない。
全年齢対象だったため死亡エンドはなかったものの、それでもみすみす不幸にする気は毛頭ない。
そんな秘めたる決意を胸に、俺は神童の名を欲しいままにした。
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