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ほろ苦ビターなコーヒーゼリー
しおりを挟む「はよ、寄越せ~」オーラを出しているお姉さんたちは無視して、クラレンスは調理台に向かい合う。
なんで無視かって?
それはボウルの中の数人分しかないゼリーではとても足りないからですが?
こんなちょびっとのを持って行ったら即・争奪戦に巻き込まれるじゃないですか。
いやです、こわい。
同じ気持ちなんだろう料理人さんたちも入口の方は決して見ずに淡々と作業にかかります。
お鍋に火をかけて、ジュースを注ぎ……人数分のゼリーを量産するお手伝いをしてくれるのが大変ありがたい。
「アンタらっ!いつまで油を売ってる気だい?!休憩時間は終わってんだよっ!とっとと持ち場に戻んな!!」
無言の圧力から厨房の面々を救ってくれたのは頼れる姉御・もとい騎士団長のクラリッサだった。
今日も今日とてイケメン度の高いお姉さまは団員たちの首根っこを掴んで声を張り上げる。
「さぁ、さっさとしないと基礎トレ3セット追加するよ!!」
いやぁーと消え入りそうな悲鳴が響いた。
クラリッサのいう基礎トレは腹筋、背筋などの筋トレにランニング、素振りなどを合わせたメニュー。
クラレンスも一回混じってみたけど、1セットすら無理だった。
それを通常メニューにプラスして3セット追加とか鬼だ。
地獄のメニューから逃れるために、キレッキレの敬礼をして「すぐ持ち場に!」と脱兎のごとく逃げ出すお姉さんたち。がんばれ。
団員たちを見送ったクラリッサはやれやれと首を振ったあと、「うちのが迷惑かけたね」と厨房を覗き込んで謝ってくれた。
中に入ってこないのは、訓練後の汚れを厨房内に持ち込まないためだろうか。
ずっと背中に感じてた圧の原因がいなくなったので、たたたっと入口に近づく。
「みなさんに「あとで差し入れもっていきます」って伝えてください」
「ああ、ありがとね」
二ッと恰好いい笑顔を浮かべてくしゃくしゃと髪を撫でてくれた。役得です。
クラリッサのお陰で背中に嫌な圧を感じながら作業を急かされることもなくなり、お料理(?)再開。
ジュースを使ったのは料理人さんたちがお手伝いして量産してくれているので、クラレンスはまずはお鍋に水を入れた。
そこにインスタントコーヒーを投入!
謎の黒い粉を振り入れるクラレンスに近くにいた料理人さんが興味を示して覗きこんできた。
「それは?」
「インスタントコーヒーです」
「インスタント?ちょっと味見させて」
そのままのインスタントコーヒーを掌に少しだし、口に含んだ彼は盛大に顔をしかめた。
ですよね。それはそのまま食べるものではありません。
多めのインスタントコーヒーを投入したお鍋の中身をスプーンですくって味見。
「にっがっっ!!」
そしてクラレンスも料理人さんと同じく顔をしかめた。
苦っい。
ものすごく苦かった。
それを冷まし、はたしてウォータースライムに味覚は存在するのだろうか?と疑問を浮かびながらお皿の前につれていくと、嫌がる素振りもなく飲みだした。
そもそも感情が存在するのか謎ですが。
漆黒のウォータースライムの核を外せば、コーヒーゼリーの出来上がり!
コーヒーの状態では粉末入れすぎ!苦すぎ!状態だったが、ゼリーになるとほどよい苦みに薄まった。
お子さまのクラレンスにはまだちょっとだけ苦いが、シロップも作ったし、生クリームも用意したので甘さは各自調整です。
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