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穴あけるのはドキドキした

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「は、はわわわわわわ」

よくわからない声を漏らしながらぷるぷるするシルク。

真っ赤な顔でクラレンスを凝視する彼女からは「かっこいい」とか「かわいい」の単語がとぎれとぎれ漏れる。
ピシリと整えられた姿は、恋する乙女フィルターも相まってかなりのダメージを与えたようだ。

もちろん、シルク本人もエリシュオンたちもおめかし姿。
いつもより一段と華やかなドレスで装った姿は、類まれな美貌によりそれこそお姫様そのもの。

「わぁ!シルクすっごくきれいだね」

対面してそうそう、キリッ!の表情が崩れた。さっそくです。

だが放たれた言葉にシルク、1000のダメージ。

ボフンっ!

音を立てる勢いでさらに全身真っ赤になるシルクに構わず、「髪型も大人っぽいね」とか追撃を加えるクラレンス。

本人、とくに口説いてるつまりは皆無です。
この年頃の男子にして照れもせずに素直に褒め言葉を口にできるのはマイペース男子のたまものです。

「おい!とっととこっち来い」

ちょっと不機嫌そうな顔のフェリックに呼ばれ、慌ててキリッ!を再装着。
いまさら遅い感もあるが、引き締めたお顔のままで部屋の奥で待つ王族ファミリーにご挨拶。

ちなみに、フェリックがいるのは「可愛い従妹いとこの記念日に……」と同席をねじ込んだからだ。
つまりイリーネたちと同類。
そしてラブラブっぷりを見せつけられてぐぬぬっとなってる。

当主同士のご挨拶もすんで(クラレンスは父が貴族っぽい口上をちゃんと述べる様をポカンと見てた。意外すぎた)、うやうやしく高級感のあるケースが運ばれてきた。

ビロードの生地のうえに置かれた二つの箱。
箱を見つめるシルクの瞳はうるうると潤んでおり、じっと食い入るように見つめている。

「さ、二人とも開けるとよい」

王様に促され、クラレンスとシルクはリングのケースをパカリと開けた。

ケースに鎮座しているリングは、中央にダイヤモンドによく似た希少な魔法石があしらわれ、その左上に小振りなアメジストとさらに小振りなアヤナスピネルのピンクが彩りを添えている。
形状は流麗なラインを描く優美なデザインでプラチナリングの右サイドにはダイヤモンドが連なっていた。

魔力の供給を、と言われてリングにそっと手をかざす。

ふつうに魔法を使うときと同じ感覚でいいのかな?と思いつつ、瞳を閉じてリングに魔力を注ぐ。

エリシュオンの「わぁ」という感嘆の声にそっと瞳をひらくと、リングの中央の魔法石はクラレンスの瞳と同じ空色に染まっていた。
その鮮やかな変化と、最初とずいぶんイメージのことなるリングに「おおっ!」と思わず声をもらした。すごい!

興味深そうにクラレンスの手元を覗き込んでくる兄姉にも見せれば二人も同様におどろいていた。

シルクもシルクで、クラレンスの手元にあるよりややシンプルなつくりのリングの魔法石の色が彼女の瞳の紫色に変わったようだ。

「ここに両名の婚約を認める」

王様が渋く威厳のある声で自身の名に懸けてリングの所有者登録の立会と婚約の言祝ぎを宣言し、蓋をあけたままのケースに戻したリングをお互いに交換する。

本来ならここで指輪を指にはめたいところだが…………。
このリングは婚約指輪ではなくあくまで結婚指輪なので指にはめるのはまだ先だ。

切なそうな、もどかしそうな表情でリングをじっと見つめるシルクに「結婚式のお楽しみだね」とにこっと笑いかければ、ようやくシルクも少しだけ笑ってくれた。

そしてさらに小振りな二つのケースが運ばれてきた。

ごくごく小さなケースに収まっているのは青と紫、二つの色石が組み合わされたピアスだ。
この世界では婚約指輪のかわりに一般的に贈りあうピアスをそれぞれの耳へとつける。

そうして、二人の婚約は正式に結ばれた。

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