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悪口も褒め言葉も特に反応しない
しおりを挟む感動的な場面に水を差すのは心苦しいが、質問があるクラレンスはとりあえず小さく手を挙げてみた。
「あら、どうしたの?クラレンスくん」
気づいた王妃様が声をかけてくれた。
「被害の規模ってどれくらいなんですか?壊滅状態?」
「いや、ランドバーグはそこまでひどくないな。作物が全て駄目になるというよりは傷がつく、という程度が多い。それでも商品としては致命的だがな」
「市場にはおろせないから農家で消費したり、家畜の餌として利用したりもするけど……それだって限りがあるものね。大体は廃棄することになるわ」
ふむふむ、とクラレンスは頷く。
台風被害と聞いて思い浮かんだのは前世のニュースでよく見た、リンゴなどが収穫前に木から落ちて傷物になってしまうイメージだったのだが、やはりそのようだ。
「食べれるの?」
先ほどのクラレンスをマネてか、はいとエリシュオンが手を挙げて聞いた。
「まぁな」とフェリックが頷けば、幼い顔がパッと表情を明るくした。
「じゃあね、安くしたら売れない?」
小さいながらも必死に頭を使って考える姿が微笑ましい。
だが一同の表情は難しそうに曇った。
それに不安そうな表情をするエリシュオンの頭を宥めるように撫でてクラレンスも口を開いた。
「僕もエルに賛成です」
「それは……難しいのですわクラレンス様。私も以前はそう思ったのですが……」
反対意見を口にするのが申し訳なさそうに上目遣いで覗きこんでくるシルクにうんと頷きつつ言葉を続ける。
「単に安売りするのは難しいよね。価格を下げれば買う人はいるだろうけど、低価格の商品が流通すれば正規価格の商品が逆に売れなくなる可能性は高いし」
見切り品として値段を下げれば当然買う人はいるだろう。
だが、それを買う人たちは多少キズがついていても構わないのだ。
一部の場所や期間限定ならまだ構わない。
だがひんぱんに安売りを行えば、元は100円のものを50円で買うのになれた人たちは100円を出して買うことはなくなるだろう。
安くなったときに買えばいい、そう思う人たちが出てくるはずだ。
そのことを説明されるまでもなくさらりと理解したクラレンスにフェリックたちは目を丸くした。
「おまえ、やっぱり頭いいな」
フェリックの口から称賛が漏れる。
例の書式のひな形を考案したことなどからも頭がいいのはわかっていた。
だけど見た目の幼さに似合わない聡明さに改めて驚いていた。
「別にそんなこともないですけど?」
そして一国の王子に褒められたというのに意にも介さないクラレンスだった。
安定のクラレンスです。
「そのままの形で販売すれば正規品の流通にまで影響を及ぼす可能性が高いです。だから形を変えて販売すればいいんじゃないですか?そうすれば影響は最小限に抑えられると思うんですけど」
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