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外側がっつりガリッが好みです

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丸椅子に腰かけたバードを前にローランは【鑑定】を施すために掲げていた手を降ろした。
ごくりっ、と小さく喉がなる。

「よっし、じゃあやってみよーか」

「ローランさんがんばってください」

緊張しきったバードやシエルの様子もなんのその、今日もマイペースコンピは通常運転だった。

そして結果。
あっけないほどにあっさりとバードの足は治った。

「ぎせきですっ。ぼんどうにななお”っだ」

号泣しすぎてやたらと濁点多めの不明瞭な発言でそう繰り返し、何度もお礼をいってくれるシエル。
なお「奇跡です。本当に治った」と言ってるもよう。

零れる涙を拭いもせず、握った手をぶんぶんとふりながらお礼をいってくれるのだが……そろそろ手を解放して欲しかったり。
小柄とはいえやはり騎士。クラレンスは若干じゃっかんぐらぐら揺れていた。

そして麻痺の当事者のバードに至っては、感謝のあまり今にも平伏して礼でも述べそうな有様だった。
つられてシエルまで床に膝をつこうとするし。
止めるのに苦労した。お礼が重い……。

怒涛のお礼攻撃はリハビリも順調で明日でここを去るリシューも同様で。

んー、と考えたクラレンスは食べたいものを思い浮かべる。
パッと頭に浮かんだのは女性騎士団のお姉さんたちが噂をしてた一品。

「カヌレ食べたいです」

いま欲しいものが無事思い浮かんで、ドヤッとした顔で告げたオネダリは……あまりにも唐突すぎて誰にも伝わらなかった。

「なぜいきなり菓子の話になったんだ?」

「え?だって「どう報いれば」っていってくれたから。お礼に欲しいお菓子考えました。騎士団のお姉さんたちが最近できた“フェ・デ・フルール”てお店のカヌレが絶品だっていってたので」

ダメでした?と首を傾げる。
もっとお安いお菓子の方がよかったかな?と考えるクラレンスだが、そうじゃない。
むしろ真逆。

「お菓子……。いや、欲しいならいくらでも用意するが。もっとこうちゃんとしたお礼を」

「えー、お菓子で充分ですってば。普通に嬉しいですし。第一お礼目当てで行動したわけじゃないですし」

「それにしてもだな……」

バードたちにしてみれば、生涯治らないと思ってた麻痺の完治はどうやっても返せない程の恩。
一方、治療に携わった二人にしてみれば別に大したことしてないし。
埋まらない認識の差だった。

ちなみにカヌレとは正式名称を「カヌレ・ド・ボルドー」という溝のついたカヌレ型で焼き上げたお菓子です。
ラム酒やバニラがきいていて、外側はカリッ、中はモチッな感触が特徴的。
最近は洋菓子店のほかにもパン屋さんなんかでも買えるとこがあったり。

「じゃーボクはから揚げがいいな!」

「ローランさん、ローランさん。から揚げってバードさんやリシューさんに頼んでも無理なんじゃ?厨房のみなさんにお願いします?」

なんせから揚げは売ってない。
クラレンスは作れるが、揚げの作業は誰かにおまかせだ。主に身長の関係で。

ぽんっ!と手を叩いたローランが「それもそっかぁ」とあっけらかんと告げる。

相変わらずな二人に「何かお礼を!」と意気込んでいた当事者たちは拍子抜けするばかりだ。

「リシューさんのときみたいにまた飲み会しよーよ。ふわりん、イザーク説得して。ふわりんのお願いの方が聞いてくれそう」

飲み会、再び。

でも今日はお泊りじゃなくちゃんとお家おウチに帰ります。
……前回は急なお泊りだったので「帰ってこない!」て使用人さんたちに心配をかけてしまったのです。連絡が遅くなっちゃったので……。
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