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プリップリの海老カツサンド

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「なぜお屋敷ではダメだったのですかっ?!」

その日、クラレンスは複数人に取り囲まれていた。

「……ダ、ダメじゃないです」

「ならばなぜっ?!」

ずずずいっと詰め寄られ、思わずのけぞる。

「せっかくの新作なのに……」と嘆きながらクラレンスを取り囲むのは、温和なクマさん……じゃなかった、料理長含め料理人のみなさんだ。

発端は先日の騎士団での飲み会。
もとい、から揚げ。

どうやらクラレンスが他所の料理人を頼ったのが気にさわったようだ。

なぜに自分たちに頼んでくれなかったのか!と涙ながらに訴えられた。
……そんな泣かなくても。

「あなたたち、やめなさい。クラレンス様が困っておられるでしょう」

「セバスさん!」

通りがかりのセバスが見かねて声をかけてくれ、天の助け!とばかりに駆け寄ったクラレンスはセバスの背中にへばりつく。
安全地帯をキープしつつ、ひょっこり顔を出して説明を。

「みなさんがどうこうとかじゃなく、揚げ物は油の処理がたいへんかなって思っただけなんです。騎士団は大所帯だし、魔法で油の処理ができる人もいたんで」

「手間ぐらいかまいません」

どうやら無用の気づかいだったようだ……。

「新メニューしりたい」「から揚げ作りたい」そう主張する彼らは料理人のかがみ
欲望に忠実ともいえるが……。

だが実際、クラレンスとしてもおウチでも揚げ物が食べられるというなら願ったり叶ったりだ。
油の処理方法だって会得したわけだし。

「なら作りましょう!」

セバスの背中から出てそう告げたクラレンスに一同拍手喝采。
そんな様子をセバスがなんともいえない目で見ていた。


「そのまま15分以上味をなじませて、片栗粉をまぶしいれて絡めたら揚げます」

「わかりました」

もはや慣れた仕草で指示にしたがってくれる料理人さんたち。

別の料理人さんにはネギ塩ダレとタルタルソースもお願いした。

騎士団の飲み会のときと違って今回はそこまで大量じゃないし、味変はなくてもいいのだが……なんとなく教えないと拗ねられそうな気がしたので。たぶん間違いじゃない。

揚げ物ついでに、とクラレンスは海老カツを作りはじめる。
本当はヘンリーたちに話した白身フライのタルタルサンドを作ろうと思ったんだけど、肝心の材料がなかったので。

プリプリの海老はあったので海老カツに決定。

海老のカラと背ワタを取り除き、塩水で洗って水気を拭きとる。

作業をはじめれば、ものすごく自然な流れで数人の料理人さんが補助に入ってくれるのですごく楽。
あっというまに下処理のおわった海老は半分にわけます。

半量は包丁で細かくたたき、もう半量は粗みじんに。
このとき、ある程度の大きさを残したほうが食感プリプリになりますよ!

それぞれの海老を混ぜ合わせ、塩コショウ、マヨネーズ、酒、少量の片栗粉と小麦粉を投入。
混ぜ合わせたものはバットに広げ冷蔵庫で10分弱おきましょう。

手に薄く油をつけたらタネを小判型に形成し、小麦粉、溶き卵、パン粉をつけます。
あとは170℃に熱した油でこんがりと。

「ふわぁぁ」

やっぱり揚げの作業はやってくれたそれをキラキラした瞳で見つめる。

包丁で細かくきってまずはそのまま。

海老のプリプリ感がたまらないっ!

タネにも味付けしてあるのでそのままでも充分に美味しい。
だけどもう一かけらの味見用にはタルタルソースをたらり。

「おいしぃ~!!」

海老カツとタルタルソースが合わないわけがないですよね。
美味しい一択。

白身魚同様バンズもなかったのでバーガーではなくサンド。
料理長のクマさんが「こんど白身とバンズも仕入れておきます」と頼もしくうけおってくれた。

こんがり焼いたトーストにマヨネーズとカラシを塗ります。
レタスと海老カツをのせ、そこにタルタルソースをたっぷりと。

今回はレタスにタルタルソース使用ですが、千切りキャベツにソースでもOK。

もう一枚のトーストではさめば、海老カツサンド完成なのです。
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