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平謝りの父がいた
しおりを挟む近衛騎士の制服は恰好いい。
いや、父やヘンリーの着ている騎士団の団服も恰好いいのだ。
両方ともすっごく恰好いいのだが、同じ騎士でも随分と印象が違う。
父や兄の着用する騎士団の団服は白を基調としシンプルに恰好いい。
正に騎士!という王道なデザインだ。
凄く強そうだし、ザ・正義の味方感があって恰好いい。
体格がいい人が多いからか、シンプルなデザインが強さや力強さを引き立てて男らしい感じだ。
なお、女性騎士の団服は基本は同じデザインで所々に女性らしさが加えられたデザインとなっている。
そして近衛騎士の制服は……。
「すっごいエリートって感じがするー!」
騎士団の団服と比べると華やかかつ品があった。
白と青を基調とし、飾緒や袖口などデザインがオシャレ。
エリート感がありありと醸し出されている。
ぎゅーと抱き着きつつ、興味津々でエドワードの制服姿を眺める。
前回2回は夜勤だったのか寮で仮眠をとってから私服での帰宅だったので、実はクラレンスはエドワードの騎士姿を見るのは初めてだった。
「久しぶりだな、クラレンス」
「久しぶりですー」
大きな手が優しく頭を撫でてくれる。
クラレンスはエドワードに撫でられるのが好きだった。
他の家族に比べて手つきが優しいのだ。
みんなはわしゃわしゃという感じなので。
なんだかんだで強めのわしゃわしゃも圧迫気味のハグもいやではないけど。
それが愛情からくるものだと知っているし、手加減してくれているのもわかってる。
手加減なしだと父なんて首が吹き飛ぶんじゃないかと思ってたりする。
さて、どうしてここにエドワードが居るかというと……。
執務室に用事があったイザークがクラレンスが騎士団に訪れていることを告げ、「暫く会えていないんでしょう?休憩時間にも顔を見てきてはいかがですか?」と気を利かせてくれたのだ。
脳筋集団を率いる頭脳派お兄さんは気遣いも完璧だった。
「この間は昼食をありがとう。とても美味しかったよ。特にマヨネーズの味には本当に驚いた、あのソースは実に美味しいな」
「気に入った?」
「ああ、とても」
そう言って微笑むエドワードは中腰だった。
あれだ。小さい子に視線を合わせてあげるあれです。
幼児対応感ハンパない。
……が、もちろんそんなことを気にするクラレンスでもなかった。
もはや慣れているともいう。
前世の記憶があると精神年齢プラスで妙に大人びた子供だったり、逆に子供のフリをしなきゃならなくなりそうなものなのに……。
肉体につられたのか普通に子供っぽかった。
むしろ体の小ささと小動物っぽさで年齢以下に見られるってなんでだ……。
近況を話したり、イザークから小耳に挟んだのか書類のひな型やバジルペースト(偽)について聞かれたりしてるうちにあっという間に時間がすぎた。
「エドワード兄さんにもこれあげる。疲労軽減で体力ちょっと回復するから飲んでください」
取り出したのはバジルペースト(偽)・大。
騎士たちの味見で2/3程減っているが充分だろう。
瓶が大きくて邪魔かなと移せる容器を探しているとセバスが対応してくれた。
名残惜しいながらも「お仕事がんばってください」とお見送りしてると、エドワードがふと父を見た。
「ところで父上。クラレンスが騎士団に来てること、母上はご存じなのですか?」
エドワードの問いに父とヘンリーがピシリと石化した。
意味がわからなくて首を傾げながら兄の袖をくいくいすると、額に手を当てたエドワードが溜息を吐いた。
「母上とイリーネのことだ。きっと羨ましがる」
「あっ」
腰に手を当てて「ズルい!」と声をあげる母と姉の姿が浮かんだ。
「お、俺は関係ないし!」
「ま、まてヘンリー。お前も賛成しただろうが……」
後日、想像通りの姿で父に猛抗議する母らの姿があった。
今度は女性騎士団にも!とクラレンスが約束させられたのは言うまでもない。
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