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バジルペースト(偽)とハーブバター
しおりを挟む「セバスさん、セバスさん。空き瓶が欲しいんですけどありますか?」
袖をくいくいして問いかけた。
「どのくらいの瓶が必要ですか?」
「えっと、大きいのと小さいのと中くらいのが欲しいです。大きいのと中くらいのが1個と小さいのが3個」
これくらい、と手で示して見せればセバスは「すぐにご用意致しましょう」と請け負ってくれた。やった。
なにか困ったことやわからないことがあれば優秀な執事に頼めばまるっと解決!がこの頃のクラレンスの認識だった。
その認識が覆ることはなさそうである。
用意して貰った瓶を手にお馴染の場所となった厨房へ。
「おや、クラレンス様。また新しい料理を作られるので?」
「いいえー。今日はお料理っていうか、先日採ってきた薬草の加工ですね」
「ほぉ、薬草の。力仕事など手伝いが必要な時はお声がけください」
「ありがとーございます」
ちょくちょく顔出ししていることもあり、料理人さんたちもクラレンスの受け入れ態勢がバッチリだった。
顔を出すと「新メニュー?!」とばかりに興味津々な瞳を向けられる今日この頃。
だが、しかし。
本日の目的はクラレンスの発言通り、薬草の加工。
なお料理長たちはあまり薬草に馴染みがなくクラレンスの発言をさらっと受け入れたが、これが騎士団や冒険者など薬草にお世話になってる者なら「えっ?」となる発言だった。
普通は薬草を厨房で調理などしない。
そのまま食すか乾燥させたり煎って食すぐらいだ。
料理人たちに間違った認識が刷り込まれた瞬間だった。
お湯を沸かし、瓶を煮沸する。
自分で出来るし手伝い案件とも思っていなかったのだが、幼児(仮)がうんしょとお湯の入ったヤカンを傾ける姿に不安を覚えたのか近くの料理人さんが代わってくれた。
たっぷりのお湯で全ての瓶を煮沸。
面倒だが、菌が繁殖などしては困るので必須作業だ。
薬草を洗って水けをよくとり、大まかに刻んですり鉢へ。
乾煎りした松の実、ニンニク、塩、粉チーズ、オリーブオイルなどを加えてすりこぎでゴリゴリ。
本当はフードプロセッサーがあれば一番なのだが、ないものは仕方ない。
量がそれなりなので時々疲れた手をぷらぷらしてたらまたしても料理人さんたちが速やかに代わってくれた。優しい。
出来上がったものは煮沸後の瓶にいれ、表面が空気に触れないようにオリーブオイルを少し加えて蓋をする。
お次は薬草とタマネギ、ニンニクを細かく刻む。
ボールに常温に戻しておいたバターをいれ、刻んだものを加えてよく混ぜる。
そのまま器に入れてもいいのだが、使い勝手を考えクッキングシート的なものにバターをのせて細長い筒状に成型して半冷凍。
こうすると使いたい分だけ切って仕えて便利。
色々な薬草を使ってはいるが、基本的には前世のバジルペーストとハーブバターだった。(バジルじゃないけど味も近い)薬草によって苦みなどが少し違うのでその辺は他の材料を多めにしたり、少なめにしたりして微調整。
薬草の種類ごとに瓶に名前をつけて魔法の鞄へポイポイする。筒形にして半冷凍にしてあるハーブバターも包みごとポイっ。
なんとこの魔法の鞄、状態保存効果もあるので半冷凍のままキープできる。
見掛けは小さなバックなのに、大容量かつ状態維持。
クラレンスの大のお気に入りである。
魔法世界万歳!
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