7 / 175
マヨグラタンとお手軽ディップ
しおりを挟む「ズルいわよ!兄さんだけ!!」
腰に手をあててプンプンしているのはクラレンスの姉・イリーネ。
どうしてそんなに怒っているかというと…………。
先日めでたく仲良くなった次男・ヘンリーがクラレンスの手料理を食べたことを自慢したことによる。
なお、マヨネーズ自体は料理人さんたちがサラダにかけて出したのでイリーネも口にしていた。
だがいまの論点はそこではない。
イリーネは可愛い弟の手料理が食べたいのである。
しかも兄は食したのに自分は食したことがないとはいかなることか!!
お姉ちゃん、悔しい。
「ってことで、わたしもクラレンスの料理を食べたいわ!」
つまりは、そういう要求だった。
今日は姉と母が非番の日。
イリーネのようにプンプンしてさえいないが、母は母で「そうよね。私たちだって食べたいわ」とうんうん頷いていた。
別にプロが作る料理に不満などない。
あるのはただ可愛い弟(息子)の手料理を食べたい!という願望のみ。
プライスレスなのです。
ところ変わって厨房。
クラレンスは悩んでいた。
別に料理を作ることはいいのだ。むしろウェルカム。
悩んでいるのはなにを作ろうかな、ということだった。
イリーネはマヨネーズを食したことがあるが、母はない。
そしてイリーネ絶賛のマヨネーズを母も食べてみたがったのだ。
昼食はすでに済んでいたので作るのは夕食の一品。
サンドイッチは軽食なので夕食というイメージはない。
別に使用人さんたちにサラダを用意してもらってクラレンスが別の料理を作るのでもいいのだが……折角ならマヨネーズレシピを作ろうかと考え中なのである。
「そうだ、マヨグラタンにしよう」
メニューを思い付き、いそいそと調理にかかった。
茹でたじゃがいもを8等分ぐらいの大きさにきる。
次に角切りにしたベーコンとじゃがいもを軽く炒める。
別にこれは炒めず茹でただけでも可なのだが、個人的にカリッとした食感のが好きなので炒めます。香ばしさがプラス。
グラタン皿に具材を入れて、小さめのボールでマヨネーズを胡椒と混ぜ合わせたものを上からかける。
追加でチーズもトッピング。
「料理長ー。これこんがりキツネ色になるまで焼いてもらっていいですかー?」
「どれ、おまかせを」
マヨグラタンはアツアツで食べたいので、焼きの作業は夕食直前に料理人さんたちにお願いする。
ちなみにこのマヨグラタン、具材のベーコンをツナにかえたり、野菜をブロッコリーやトマトにしたり、茹で卵をいれたりバリュエーションは無限大。
チーズもなくてもいいし、お手軽で食べ応えのある一品だ。
「せっかくだからもう一品くらい作ろっかな」
保冷庫をのぞくと赤いプチプチが目についたので近くにいた料理人さんに使ってもいいか確認をとる。
「それですか?構いませんけど……一体どうするんです?タラの魚卵を塩漬けにしたもので珍しいからって出入りの商人がわけてくれたんですけど、いまいち使い道がわからなくて」
話をふった若めの料理人さんが喰いついてきた。
「そのまま食べても美味しいですよー」と言いながら、ヘラで薄皮から中身をこそげとる。
「今日はマヨネーズと和えてディップにします」
小さめのボールにマヨネーズを入れ、タラコをいれて塩胡椒で味を整えれば、はい完成ー。
ピンクとオレンジの中間のようなマヨソースが出来た。
「これだけですか?」
そのお手軽さに料理人さんも目を見開く。
「これだけです」
頷き、キュウリやニンジン、セロリなどをスティック状にカットしてそっと差し出す。味見用だ。
しかもなんだか他の料理人さんたちも集まってきた。
未知の物体タラコは好評を得たようだ。
お母さんはマヨネーズ初体験だから普通のも用意しとこう、とディップ皿にマヨネーズを準備。
他の料理は料理人さんたちが作ってくれるし、こんなものでいいだろう。
さぁ~て、喜んでくれるかなー?
987
お気に入りに追加
2,036
あなたにおすすめの小説
運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)
村から追い出された変わり者の僕は、なぜかみんなの人気者になりました~異種族わちゃわちゃ冒険ものがたり~
めーぷる
児童書・童話
グラム村で変わり者扱いされていた少年フィロは村長の家で小間使いとして、生まれてから10年間馬小屋で暮らしてきた。フィロには生き物たちの言葉が分かるという不思議な力があった。そのせいで同年代の子どもたちにも仲良くしてもらえず、友達は森で助けた赤い鳥のポイと馬小屋の馬と村で飼われている鶏くらいだ。
いつもと変わらない日々を送っていたフィロだったが、ある日村に黒くて大きなドラゴンがやってくる。ドラゴンは怒り村人たちでは歯が立たない。石を投げつけて何とか追い返そうとするが、必死に何かを訴えている.
気になったフィロが村長に申し出てドラゴンの話を聞くと、ドラゴンの巣を荒らした者が村にいることが分かる。ドラゴンは知らぬふりをする村人たちの態度に怒り、炎を噴いて暴れまわる。フィロの必死の説得に漸く耳を傾けて大人しくなるドラゴンだったが、フィロとドラゴンを見た村人たちは、フィロこそドラゴンを招き入れた張本人であり実は魔物の生まれ変わりだったのだと決めつけてフィロを村を追い出してしまう。
途方に暮れるフィロを見たドラゴンは、フィロに謝ってくるのだがその姿がみるみる美しい黒髪の女性へと変化して……。
「ドラゴンがお姉さんになった?」
「フィロ、これから私と一緒に旅をしよう」
変わり者の少年フィロと異種族の仲間たちが繰り広げる、自分探しと人助けの冒険ものがたり。
・毎日7時投稿予定です。間に合わない場合は別の時間や次の日になる場合もあります。
生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!
mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの?
ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。
力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる!
ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。
読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。
誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。
流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。
現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇
此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。
王女様は美しくわらいました
トネリコ
児童書・童話
無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。
それはそれは美しい笑みでした。
「お前程の悪女はおるまいよ」
王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。
きたいの悪女は処刑されました 解説版
理想の王妃様
青空一夏
児童書・童話
公爵令嬢イライザはフィリップ第一王子とうまれたときから婚約している。
王子は幼いときから、面倒なことはイザベルにやらせていた。
王になっても、それは変わらず‥‥側妃とわがまま遊び放題!
で、そんな二人がどーなったか?
ざまぁ?ありです。
お気楽にお読みください。
両親大好きっ子平民聖女様は、モフモフ聖獣様と一緒に出稼ぎライフに勤しんでいます
井藤 美樹
児童書・童話
私の両親はお人好しなの。それも、超が付くほどのお人好し。
ここだけの話、生まれたての赤ちゃんよりもピュアな存在だと、私は内心思ってるほどなの。少なくとも、六歳の私よりもピュアなのは間違いないわ。
なので、すぐ人にだまされる。
でもね、そんな両親が大好きなの。とってもね。
だから、私が防波堤になるしかないよね、必然的に。生まれてくる妹弟のためにね。お姉ちゃん頑張ります。
でもまさか、こんなことになるなんて思いもしなかったよ。
こんな私が〈聖女〉なんて。絶対間違いだよね。教会の偉い人たちは間違いないって言ってるし、すっごく可愛いモフモフに懐かれるし、どうしよう。
えっ!? 聖女って給料が出るの!? なら、なります!! 頑張ります!!
両親大好きっ子平民聖女様と白いモフモフ聖獣様との出稼ぎライフ、ここに開幕です!!
お姫様の願い事
月詠世理
児童書・童話
赤子が生まれた時に母親は亡くなってしまった。赤子は実の父親から嫌われてしまう。そのため、赤子は血の繋がらない女に育てられた。 決められた期限は十年。十歳になった女の子は母親代わりに連れられて城に行くことになった。女の子の実の父親のもとへ——。女の子はさいごに何を願うのだろうか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる