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マヨグラタンとお手軽ディップ

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「ズルいわよ!兄さんだけ!!」

腰に手をあててプンプンしているのはクラレンスの姉・イリーネ。


どうしてそんなに怒っているかというと…………。

先日めでたく仲良くなった次男・ヘンリーがクラレンスの手料理を食べたことを自慢したことによる。
なお、マヨネーズ自体は料理人さんたちがサラダにかけて出したのでイリーネも口にしていた。

だがいまの論点はそこではない。

イリーネは可愛い弟の手料理が食べたいのである。
しかも兄は食したのに自分は食したことがないとはいかなることか!!
お姉ちゃん、悔しい。

「ってことで、わたしもクラレンスの料理を食べたいわ!」

つまりは、そういう要求だった。



今日は姉と母が非番の日。
イリーネのようにプンプンしてさえいないが、母は母で「そうよね。私たちだって食べたいわ」とうんうん頷いていた。

別にプロが作る料理に不満などない。
あるのはただ可愛い弟(息子)の手料理を食べたい!という願望のみ。
プライスレスなのです。



ところ変わって厨房。

クラレンスは悩んでいた。
別に料理を作ることはいいのだ。むしろウェルカム。

悩んでいるのはなにを作ろうかな、ということだった。

イリーネはマヨネーズを食したことがあるが、母はない。
そしてイリーネ絶賛のマヨネーズを母も食べてみたがったのだ。

昼食はすでに済んでいたので作るのは夕食の一品。

サンドイッチは軽食なので夕食というイメージはない。
別に使用人さんたちにサラダを用意してもらってクラレンスが別の料理を作るのでもいいのだが……折角ならマヨネーズレシピを作ろうかと考え中なのである。


「そうだ、マヨグラタンにしよう」

メニューを思い付き、いそいそと調理にかかった。

茹でたじゃがいもを8等分ぐらいの大きさにきる。

次に角切りにしたベーコンとじゃがいもを軽く炒める。
別にこれは炒めず茹でただけでも可なのだが、個人的にカリッとした食感のが好きなので炒めます。香ばしさがプラス。

グラタン皿に具材を入れて、小さめのボールでマヨネーズを胡椒と混ぜ合わせたものを上からかける。
追加でチーズもトッピング。

「料理長ー。これこんがりキツネ色になるまで焼いてもらっていいですかー?」

「どれ、おまかせを」

マヨグラタンはアツアツで食べたいので、焼きの作業は夕食直前に料理人さんたちにお願いする。

ちなみにこのマヨグラタン、具材のベーコンをツナにかえたり、野菜をブロッコリーやトマトにしたり、茹で卵をいれたりバリュエーションは無限大。
チーズもなくてもいいし、お手軽で食べ応えのある一品だ。


「せっかくだからもう一品くらい作ろっかな」

保冷庫をのぞくと赤いプチプチが目についたので近くにいた料理人さんに使ってもいいか確認をとる。

「それですか?構いませんけど……一体どうするんです?タラの魚卵を塩漬けにしたもので珍しいからって出入りの商人がわけてくれたんですけど、いまいち使い道がわからなくて」

話をふった若めの料理人さんが喰いついてきた。

「そのまま食べても美味しいですよー」と言いながら、ヘラで薄皮から中身をこそげとる。

「今日はマヨネーズと和えてディップにします」

小さめのボールにマヨネーズを入れ、タラコをいれて塩胡椒で味を整えれば、はい完成ー。
ピンクとオレンジの中間のようなマヨソースが出来た。

「これだけですか?」

そのお手軽さに料理人さんも目を見開く。

「これだけです」

頷き、キュウリやニンジン、セロリなどをスティック状にカットしてそっと差し出す。味見用だ。
しかもなんだか他の料理人さんたちも集まってきた。

未知の物体タラコは好評を得たようだ。

お母さんはマヨネーズ初体験だから普通のも用意しとこう、とディップ皿にマヨネーズを準備。
他の料理は料理人さんたちが作ってくれるし、こんなものでいいだろう。

さぁ~て、喜んでくれるかなー?

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