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家族と対面
しおりを挟むわぁぁーおっきい!!
目の前に立つ家族(仮)を眺めて最初に思ったのはそれだった。
人生初の長旅を終え、(実家に帰ってきたわけだから実際には2回目)辿り着いた王都の立派なお屋敷。
そして感動のご対面。
…………が、誰も口を聞かない。
しかも気のせいでなければ家族(仮)はなんかプルプルしてる。
あれ?この人たちが家族じゃないの?
違った?(仮)じゃなくて別人さんだった?と助けを求めるようにセバスを見れば、コホンと咳をしたセバスが偉丈夫へとなにやら目で訴えた。
ちなみに、セバスはクラレンスを迎えに来てくれた執事である。ロマンスグレー。
「ク、クラレンス……なのか?」
「はい。クラレンスです」
若干上を見上げるかたちで答えれば壮年の偉丈夫は目頭を押さえた。身長が違いすぎてちょっと首が痛いなーとか思っていると突然の襲撃にあった。
「か、かわいぃぃぃぃ!!!」
「わぷっ」
そう、正に襲撃だった。
おもに肉体の締め付けと耳元での絶叫的に。
「えっ、えっ?クラレンスってもう13歳よね?小っちゃいっ!そして可愛いわ!!どうしましょうあなた、すっごくかわいい!!」
「母さんズルい!!わたしだって弟をギュってしたいですっ!!」
なにやら大興奮の女性二人の声を聞きながらクラレンスは必死にタップした。
なにせ息が出来ない。
「く、くるしぃ……」消え入りそうなその声に拘束が緩んだ。
危うくお花畑が見えそうだった。
「ご、ごめんなさい。大丈夫?!セバス、お医者様を!!」
「……いえ、だいじょうぶ、……です」
ふらふらしながら見上げれば、目の前にはダークブラウンの髪に空色の瞳の美人さん。
キリっとした妙齢の女性も、色彩と面立ちのよく似た少女も美人なのだが……大きい。
「えっと……おかあ、さん?」
疑問形でこてりと首を傾げれば、なぜか母娘で口をおさえて天を見あげた。
えっ、なにっ??
無言でプルプルされたり、目頭や口をおさえられたりとよくわからない反応ばかりされてクラレンスはどうすればいいのかわからない。
なにか変な反応をしてしまったのだろうか?
それともこれが王都の常識??
眉を下げて頭にハテナをいっぱい浮かべる姿が小動物っぽくって一層もだえる周囲。
完全なる悪循環だった。
「コホンっ……改めて紹介しよう。私がお前の父、そしてこちらが母だ。長女のイリーネに次男のヘンリー。長男のエドワードは近衛の勤務中だからまた後日紹介しよう。使用人たちは少しづつ覚えていけばいい」
「クラレンスです。よろしくおねがいします」
ぺこりと頭をさげつつ、やっぱ家族でよかったんだと(仮)が外れた。
立派な筋肉が恰好いいのが騎士団長をしてるお父さんで、キリッとした美人なのにテンション高めなお母さんは女性騎士の副団長。
ムスッとしてこっち見てるのが次男のヘンリー兄さん、お母さんに似てるのがイリーネ姉さん。
長男のエドワード兄さんは近衛騎士。
うん、覚えた!脳内を整理してうんうん頷く。
記憶にない家族の顔をこっそり眺めているとふいに深緑の瞳と目があった。
森みたいに深い緑。お父さんと同じ色だ。
もう一人の兄さんは何色かな?なんて思いながら見つめていると眉間にシワが刻まれた。
「……おまえ、本当に俺の弟なのか?」
「「ヘンリー!!」」
「兄さんっ?!」
辛辣なその一言にたしなめる声が響くが、クラレンスは特に傷つくこともなくあどけない瞳をぱちりと瞬いた。
「えっ?違うんですか?」
純度100%の疑問だった。
「僕、小さいときの記憶ってほとんど覚えてないんで。確証がないんでわかんないです」
「……っ!」
息を呑みこんで、なにかを言いたそうにしたヘンリーはなにも言わずに踵を返した。
微妙な一幕もあったが、こうして無事に家族の顔合わせは行われた。(若干一名のぞく)
なお、強くて大きい騎士一家において庇護欲をかき立てられる小動物系の末っ子は溺愛気味に可愛がられることになる。
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