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転生司祭は逃げられない 5
しおりを挟む「いい機会だと思ったんですよ」
「……?」
「魔王討伐の旅も終わりパーティも解散です。私が居ればアーサーやユリアはそのまま着いてこようとするでしょう?嫌いだとか要らないとかそういうことでなく、自分達の望む道を自分達で選ぶべきだ」
「それにしたって急すぎるでしょ?みんなが解散する時でいいじゃん」
ジャンさんの指摘にうっ、と泳いだ視線が無意識に王子たちへ向く。
「……国にとっても、私の存在は邪魔者でしょうし。こちらとしても居心地が悪かったですし……」
言葉の途中でグワッと両隣から噴き出した殺気と怒気にビクッと肩が揺れる。
立ち上がろうとした二人の服を掴んで抑えたのは完全に反射だ。
だてに長年トレーナー……違った、保護者やってるわけじゃない。
なのに機嫌が悪そうなウルフやシルフィーナが王子たちに嚙みついた。
ジャンさんやヨハンくんも冷ややかだし。
なんで君たちまで??
ちょ、僕の手に負えないっ!!
「それにちょっと体調も……」
矛先を変えようと続けた言葉に、僕の体が激しく点滅した。
ピカピカピカ―っ!!
ニュース画面なら「フラッシュの点滅にご注意下さい」って注意喚起のテロップが出るぐらいの点滅具合に眩しっ!!と思わず腕で目を庇う。
発光元、僕だけど。
瞼の奥でも感じる点滅ラッシュが終わり、恐る恐る瞼を開いた僕はまたもビクッと肩を揺らした。
みんなの瞳がマジすぎる。
えっ?なに、なに?こわい!!
「どこが悪いんですか?」
フラッシュの犯人、最高出力の回復魔法を連発したユリアが押し殺し過ぎて感情を感じられない声で問う。
アーサーは死にそうな顔色だし、ジャンさんとかはともかくウルフまで深刻な表情ってレアじゃない?
「えっ、なに??」
心の声がそのまま漏れた。
「なに??じゃないわよ!!具合、悪かったんでしょう?!あんな死にそうな顔するぐらい!!」
「ユリアさんの回復魔法でも治らないなんて……。でもっ、僕とユリアさんが絶対に治療の方法を見つけてみます!!」
「絶対、絶対に司祭様を死なせたりしませんっ!!」
「伝説の秘薬でもなんでも絶対に見つけてみます!!」
……。
状況把握にやや時間がかかったが、シルフィーナの精霊魔法で苦しむ僕の姿を見たらしい。
で、体調不良を口実にパレードや会食を断った僕は、当然のように心配したユリアの回復魔法を受けていた。なんならヨハンくんのも。
超絶優秀な二人のそれを受けても治らぬ病=ヤバい病と認識されたらしい。
あ、因みに疲労や心労は魔法で緩和はできても消えないから、治療後に僕が休んでたのは疲れが溜まって体調が戻ってないと思われてた。
それはおいといて、と。
真剣なみんなや「だいじょうぶ??」「ミシェル、死なないで―!」って僕のまわりでふよふよする花妖精たちを前に非常に言い出しにくいことこのうえない!
だが、言わねばならぬ!!
勇気を振り絞った僕は決死の覚悟で口を開いた。
ああ、胃が……。
「あのっ、その、平気です」
いや、聞け。
「みなまで言うな、わかってる」みたいな顔やめて。
絶対にわかってないから。
「……胃が、痛いんです……」
僕は両手で胃を抑えた。
「ストレスからくる胃痛と頭痛なんで」
やだー、美形sがそろって間抜け面してるー。貴重ー。
まるで未知の言語を聞いたかのようにぽっかーん!な顔を披露する面々を前に心の中で白々しく呟く。
ええ、ただの現実逃避ですが何か?
「「「はっ?」」」
時間差で漏れた心底意味がわからないといった声が僕のスイッチを押した。
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