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氷姫救出編
仲間
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「でも仲間か~。ちょっと羨ましいな~! レイ。紹介してくれる?」
「ああ。もちろんだ」
俺は頷くと祭壇の前まで来ていた仲間たちに視線を向ける。
祭壇はそこまで大きくなく、全員が乗ってしまうとかなり手狭になる。だから俺は一度祭壇から降りた。
「悪い。ラナは降りられないからここでいいか?」
忌々しい鎖のせいでラナの行動できる範囲は祭壇内だけだ。
彼女は申し訳なさそうに頭を下げる。
「高いところからごめんなさい」
ラナはなるべく視線が低くなるようにと祭壇に腰掛けた。その隣にアイリスも座っている。
当然そんな事に目くじらを立てるような人間、ここにはいない。みんなが口々に大丈夫だと言ってくれた。
「紹介の前に、まず礼を言わせてくれ。お陰でこうしてラナと再会することできた。本当にありがとう」
俺は深々と頭を下げる。
仲間たちの協力がなければこれほど早くラナの元へは辿り着けなかった。もし遅れていれば外にいた鎧武者が扉を破っていたかもしれない。
無事に再会できたのは仲間たちのおかげだ。
本当に、良縁に恵まれた。
そんなことを思っているとサナが我慢できないとばかりに口を開いた。
「レイ! こんなに可愛いなんて聞いてないよ!」
アイリスを見ているのだから分かっていただろうにサナがそんなことを言う。
言われたのはラナなのにアイリスは自分の事のように満足げだった。
相変わらず騒がしい幼馴染に俺はため息をつく。だけどこのいつも通りは悪い気がしない。
「知っての通り、グランゼル王国の王女ラナだ」
俺の言葉にラナは一度立ち上がるとドレスの裾を持ち、優雅に一礼した。
その姿は王女に相応しい風格を備えている。絵本から飛び出てきたお姫様のようだ。
「初めまして。グランゼル王国第一王女、ラナ=ラ=グランゼルと申します。この度は助けて下さりありがとうございました。心から感謝を」
「わ~!」
サナが感嘆のため息を漏らして見惚れていた。そしてそれはこの場にいる全員が感じている事だろう。
ラナには人を惹きつける魅力がある。
……これをカリスマって言うんだろうな。
俺はそれが自分の事のように嬉しい。
「レイ! 凄いよ! お姫様だよ!」
興奮してサナが当然の事を口走っている。これにはラナも苦笑を浮かべていた。
「落ち着け。それを言うならアイリスもだろうが」
「たしかに」
急に納得して頷くサナ。そんな幼馴染にラナが声をかける。
「幼馴染のサナさんですね? レイから話は聞いています。勇者様なんですよね?」
「様なんてやめてください! あんまり勇者の実感は無いので! それとレイと話すみたいにしてくれると嬉しいです!」
「そう? じゃあサナも普通に話して?」
「わかった! よろしくね! ラナ!」
「うん! よろしく! サナ!」
そうして二人はあっという間に仲良くなった。二人とも明るい性格だから気が合うのだろうか。
「んでレイ。アレはどうなったんだ?」
ラナとサナが話しているのを尻目にカナタが小さく耳打ちして来た。肩に腕を回され、みんなから少し離れる。俺は何を言っているのか分からずに聞き返した。
「アレ?」
「おいおい。誤魔化す気か?」
「そうだよレイ! どうなったの!?」
かなりの小声だったのにラナと話していたはずのサナが耳聡く聞き付けてきた。
それで俺は察した。色恋センサー恐るべし。
「あー……。その……なんて言うか。…………伝えたよ」
「「それで?」」
幼馴染二人が食い気味に聞いてくる。ニマニマニヤニヤしている顔に少しイラっときた。
……こいつら。
だけどそこはグッと堪える。
「………………ラナも同じだって」
「「ほ~ん? って事は?」」
息ぴったりだ。この二人はどうあっても言わせたいらしい。俺は深く、深くため息をついて白状した。
「付き合ったよ。恋人だ」
「よかったなレイ」
「ホントだね~!」
「もういいだろ!」
二人に背中をバシバシと叩かれる。それをなんとか抜け出してラナの元へと戻った。
「ラナ! こいつがカナタだ!」
「地球の魔術師! よろしくお願いしますね!」
「俺もレイと話すみたいにしてくれ。一之瀬カナタだ。よろしく」
カナタが手を差し出すと、ラナと握手を交わした。
「よろしくカナタ! 後で地球の魔術を教えてくれる?」
「もちろんだ。俺も色々と気になってたんだ」
「……カナタ。……わたしも気になる」
カノンがカナタの服の裾をちょこんと摘んだ。
「もちろんだ。俺もアストランデの魔術は気になる」
「と言う事は、そちらのお嬢さんがカノンさんですね? レイから話は聞いています」
「……わたしも普通の話し方でいい」
「わかった。でもこれだけ……」
ラナは一度目を閉じ、開く。すると一瞬で王女の凛々しい顔付きになった。
「私、グランゼル王国第一王女ラナ=ラ=グランゼルの名に誓って貴女、そしてアストランデの一族に協力することを約束します」
「私も! グランゼル王国第二王女アイリス=ラ=グランゼルの名に誓います!」
アイリスもラナの隣に立つと誓いを立てた。
「……ありがとう」
ラナとカノンが握手を交わす。そこにアイリスも手を重ねた。
いつもの無表情が少しだけ柔らかくなったように俺は思った。
「最後が【炎槍】のウォーデン様ですね。お噂はかねがね」
「ウォーデン・フィローだ。王女サマに知られているとは光栄だね」
二人は軽く握手を交わす。
「俺も堅っ苦しいのは苦手なんだ。普通に頼むよ」
「じゃあありがたくそうさせてもらうね! ウォーデンさんのお話もレイから聞いてる! 報酬は期待しておいて!」
「王女サマにそう言われちゃ期待が膨らむな。レイ。すぐやるのか?」
言わずもがな魔王の事だろう。
「いや、その前に聞きたいことがある」
戦い始める前に、みんなが知っている魔王というモノについて聞いておきたかった。
少しでも生存率を高める為に。
「ああ。もちろんだ」
俺は頷くと祭壇の前まで来ていた仲間たちに視線を向ける。
祭壇はそこまで大きくなく、全員が乗ってしまうとかなり手狭になる。だから俺は一度祭壇から降りた。
「悪い。ラナは降りられないからここでいいか?」
忌々しい鎖のせいでラナの行動できる範囲は祭壇内だけだ。
彼女は申し訳なさそうに頭を下げる。
「高いところからごめんなさい」
ラナはなるべく視線が低くなるようにと祭壇に腰掛けた。その隣にアイリスも座っている。
当然そんな事に目くじらを立てるような人間、ここにはいない。みんなが口々に大丈夫だと言ってくれた。
「紹介の前に、まず礼を言わせてくれ。お陰でこうしてラナと再会することできた。本当にありがとう」
俺は深々と頭を下げる。
仲間たちの協力がなければこれほど早くラナの元へは辿り着けなかった。もし遅れていれば外にいた鎧武者が扉を破っていたかもしれない。
無事に再会できたのは仲間たちのおかげだ。
本当に、良縁に恵まれた。
そんなことを思っているとサナが我慢できないとばかりに口を開いた。
「レイ! こんなに可愛いなんて聞いてないよ!」
アイリスを見ているのだから分かっていただろうにサナがそんなことを言う。
言われたのはラナなのにアイリスは自分の事のように満足げだった。
相変わらず騒がしい幼馴染に俺はため息をつく。だけどこのいつも通りは悪い気がしない。
「知っての通り、グランゼル王国の王女ラナだ」
俺の言葉にラナは一度立ち上がるとドレスの裾を持ち、優雅に一礼した。
その姿は王女に相応しい風格を備えている。絵本から飛び出てきたお姫様のようだ。
「初めまして。グランゼル王国第一王女、ラナ=ラ=グランゼルと申します。この度は助けて下さりありがとうございました。心から感謝を」
「わ~!」
サナが感嘆のため息を漏らして見惚れていた。そしてそれはこの場にいる全員が感じている事だろう。
ラナには人を惹きつける魅力がある。
……これをカリスマって言うんだろうな。
俺はそれが自分の事のように嬉しい。
「レイ! 凄いよ! お姫様だよ!」
興奮してサナが当然の事を口走っている。これにはラナも苦笑を浮かべていた。
「落ち着け。それを言うならアイリスもだろうが」
「たしかに」
急に納得して頷くサナ。そんな幼馴染にラナが声をかける。
「幼馴染のサナさんですね? レイから話は聞いています。勇者様なんですよね?」
「様なんてやめてください! あんまり勇者の実感は無いので! それとレイと話すみたいにしてくれると嬉しいです!」
「そう? じゃあサナも普通に話して?」
「わかった! よろしくね! ラナ!」
「うん! よろしく! サナ!」
そうして二人はあっという間に仲良くなった。二人とも明るい性格だから気が合うのだろうか。
「んでレイ。アレはどうなったんだ?」
ラナとサナが話しているのを尻目にカナタが小さく耳打ちして来た。肩に腕を回され、みんなから少し離れる。俺は何を言っているのか分からずに聞き返した。
「アレ?」
「おいおい。誤魔化す気か?」
「そうだよレイ! どうなったの!?」
かなりの小声だったのにラナと話していたはずのサナが耳聡く聞き付けてきた。
それで俺は察した。色恋センサー恐るべし。
「あー……。その……なんて言うか。…………伝えたよ」
「「それで?」」
幼馴染二人が食い気味に聞いてくる。ニマニマニヤニヤしている顔に少しイラっときた。
……こいつら。
だけどそこはグッと堪える。
「………………ラナも同じだって」
「「ほ~ん? って事は?」」
息ぴったりだ。この二人はどうあっても言わせたいらしい。俺は深く、深くため息をついて白状した。
「付き合ったよ。恋人だ」
「よかったなレイ」
「ホントだね~!」
「もういいだろ!」
二人に背中をバシバシと叩かれる。それをなんとか抜け出してラナの元へと戻った。
「ラナ! こいつがカナタだ!」
「地球の魔術師! よろしくお願いしますね!」
「俺もレイと話すみたいにしてくれ。一之瀬カナタだ。よろしく」
カナタが手を差し出すと、ラナと握手を交わした。
「よろしくカナタ! 後で地球の魔術を教えてくれる?」
「もちろんだ。俺も色々と気になってたんだ」
「……カナタ。……わたしも気になる」
カノンがカナタの服の裾をちょこんと摘んだ。
「もちろんだ。俺もアストランデの魔術は気になる」
「と言う事は、そちらのお嬢さんがカノンさんですね? レイから話は聞いています」
「……わたしも普通の話し方でいい」
「わかった。でもこれだけ……」
ラナは一度目を閉じ、開く。すると一瞬で王女の凛々しい顔付きになった。
「私、グランゼル王国第一王女ラナ=ラ=グランゼルの名に誓って貴女、そしてアストランデの一族に協力することを約束します」
「私も! グランゼル王国第二王女アイリス=ラ=グランゼルの名に誓います!」
アイリスもラナの隣に立つと誓いを立てた。
「……ありがとう」
ラナとカノンが握手を交わす。そこにアイリスも手を重ねた。
いつもの無表情が少しだけ柔らかくなったように俺は思った。
「最後が【炎槍】のウォーデン様ですね。お噂はかねがね」
「ウォーデン・フィローだ。王女サマに知られているとは光栄だね」
二人は軽く握手を交わす。
「俺も堅っ苦しいのは苦手なんだ。普通に頼むよ」
「じゃあありがたくそうさせてもらうね! ウォーデンさんのお話もレイから聞いてる! 報酬は期待しておいて!」
「王女サマにそう言われちゃ期待が膨らむな。レイ。すぐやるのか?」
言わずもがな魔王の事だろう。
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