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気のせいではない

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 此処は魔界を統べる恐ろしい魔王様のお城。
 何となく浮かれている様子の勇者が来た。
 
「いや、何ていうか最近……魔導師さんが僕に優しいような、あっ元から優しい人なんだけど! その……」
 
 気のせいかなぁ、と頬を赤らめてもごもごと話す勇者は微笑ましい。
 魔導師はとても頑張っているようだ。
 
 しかし、もどかしい。

 魔女はとりあえず、勇者も頑張れと言うように曖昧な笑みを浮かべる。
 はっとして本来の用事を思い出した勇者は、慌てて魔王の元に向かった。


「聖王様からです!『羽虫の数が多すぎて潰しても潰してもキリが無い。妹の為にもう一度助言を頼む』」 
「聖王は害虫駆除の話ばかりだな。まぁ、大元を叩いて全滅させるしか無いだろう」
 
 本当に虫の話だと思っている魔王はとても大雑把に解決策を伝えた。
 聖王は妹が関わると物騒な為、本気で検討しそうで危険だったが此処にそれを言える者は居ない。

 魔女は、言葉通りに受け取る素直な魔王様も素敵だ、と深く頷いていた。
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