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重大なことはない

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 此処は魔界を統べる恐ろしい魔王様のお城。
 今日は勇者が来ているようだ。

 魔界と勇者の国はほんのり交流があるため、聖王の用事で勇者はたまに城に来る事がある。
 ただの使い走りみたいになっているが、魔王の城に来るにはそれなりに強さが必要なので仕方ないのかもしれない。

 「あ、こんにちは。魔女さん。これお土産のパンなんだけど……後、ワインと本と紅茶と魔狼さんが欲しがってたブラシ!」
 お土産が多い。
 因みに勇者の本業はパン屋である。何時まで経っても純粋な勇者をそろそろパン屋に専念させてやってほしいと魔女は思った。

 (魔女は慈愛に溢れた眼差しで勇者を見ている)

 「何だろう、この視線……? まるで子供のお使いを見る親のような……」

 勇者は一旦考えるのを止めて用事を済ませる事にした。
 正直用事とも言えない用事なのだが。


 「聖王様からです『妹に変な羽虫が寄り付いて鬱陶しい。どうしたらいいと思う』」

 「取りあえず潰せばいいんじゃないか?」
 「魔王様、羽虫って多分羽虫の事じゃないっす」

 聖王の用事は大体こんなものである。
 苦笑いする勇者に魔女は頑張れというような仕草を送った。
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