[完結]チート異世界転生なのに可哀想な展開に

45

「ネロとはこうして一緒に行動した方がいいかもしれないな」

ミネルバの温かな大きな手に手を握られて、心臓がどきりと音を立てる

たまにミネルバは、こういう触れ合いを自然にしてくるのでネロはいつも振り回されっぱなしだ

誤解もたくさんあって、簡単に許してはいけない事も大量にある気もするが

結局、惚れた欲目でネロからすると頭を掻きむしりたいくらい悔しい

やっぱりミネルバが好きなのだ

静かな宮廷の廊下は豪華な金縁の肖像画が並び洋風の装いの貴婦人や老紳士に見下ろされているようで落ち着かない

ミネルバは慣れているようで、ネロの手を引く

「…鑑定にかけたが、あの男は聖女とは出てこなかった。ネロも今も聖女が出てこないな？どうやってる？」

さらりと髪を撫でられ、ミネルバの澄んだスカイブルーの瞳に顔を覗き込まれ恥ずかしくなって俯く

本当にミネルバは距離が近く無自覚なんだろうけれど綺麗な人だから、そんな不意な動きも心臓に悪い

「俺は隠蔽で隠してる。他にも方法があるかもしれないけれど、隠せるよ」

ネロがさりげなくミネルバの手を解こうとすると、逆にぎゅうと力強く握り込まれた

ミネルバは眉間に皺を寄せて、苦しそうな表情を浮かべる

どうして、そんな顔をするんだろう？

声をかけようか悩んでいると、ミネルバは唇をぐっと噛んで意を決したように口を開いた

「今まで、勘違いでネロに本当に酷いことをした。すまなかった。許される事ではない。本当に…ただ、私の気持ちは……」

俯くミネルバの切ないまでの痛い表情に、心臓が嫌な音を立てて高なっていく

驚いてミネルバを見上げると同時に、ガチャリと扉が開く音と、女の子の金切声が廊下に響き渡った

「ミネルバおっそーい！クローディアとニーナ様とオオハシ様がお待ちよ？何してたのー！？あら？貴方は？私はミストランテ家の長女でプーアール・ミストランテよ」

あの紙面で見た華奢な彼女は、ぷんすか怒っているかのような表情を浮かべて近づいてくる

銀色の長い髪を頭頂で黒いリボンで赤い薔薇と一緒に結いあげてキラキラした紫水晶のような瞳をぱちくりさせて、可愛らしい美少女が細いすらりとした手足がミネルバの腕を取り絡みつく

膝丈の中世のドレスのような黒いひらひらとした可愛いレースのドレスは、これでもかというほどプーアールの女の子らしさを演出している

生意気そうな猫目にツンとした唇を尖らせて、あんたは誰よ？と目が物語っていた

「あ、俺は芦屋ネロです」

「ネロは私の客人だ。プーアール、オオハシとはあの胡散臭いネクロマンサーというヤツだろう？またクローディア様にくっついているのか？」

頭を下げるネロを遮るようにミネルバが割り込んできて、ネロは固まる

ただの客人？あんなことしておいて？可愛い女の子のプーアールに自分との関係がバレたくないのではないかと勘繰ってしまう

ネロを胡散臭そうに見ていたプーアールだが、やがて興味を無くしたようにミネルバの手を引く　

本当に美男美女で腕を組んで楽しそうに談笑するお似合いな2人になんとなくモヤモヤする

それにミネルバに客人だと言われた事が思いの外ショックだったようだ

2人が連れだって室内に入って行ってしまうのでネロも慌てて追いかける

2人が連れだって入っていった部屋に入ると、見慣れた、いやあり得ない人物が部屋の中にいた