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うさぎのつるりとしたお面の表面を撫でながら考える

ミネルバに会ってしまったら、ネロは逆らえなくなるだろう

頭ではあんな酷いやつとか色々考えるのに、いざ目の前にしたら何も言えなくなるし、出来なくなる

嫌われるのが怖すぎて、勇気を出した告白も''奴隷の身分を弁えなさい"と言われ、心が引き裂かれたみたいに痛み、今なおネロを苛む

その後のバロイとの扱いの差が辛すぎて思わず逃げてしまったが、再び捕まったら命はないかもしれないし、一番最悪なのは探してもいないかもしれない事だった

それは、有り得る

ミネルバは、"ネロを縛り付ける為"にクロと行為をしたり奴隷を強いていたが、いざネロが側にいるなら、性欲処理以外にクロの用途はない

ツキンツキンと痛む胸を押さえて、転移魔法を選択する

あの洞窟に帰ると、沈んでいた気持ちも少し浮上する

ミネルバと色々あったけれど、クーやパーチェス、グリフォンが無事で本当に良かった

これからは3人を元に戻すことだけを考えて、集中すればいい

忘れなきゃいけない

あんな酷い男は忘れて、3人を元に戻して、また旅をする

それが一番良い気がする

それでも、その日から食べるご飯は味気なく、美味しくない

ずっとミネルバの顔が浮かんでは消える


ネムの草を手に入れに王都に行かなければならないのに、もしもミネルバに見つかったらと思うと怖くて行けない

でも、早くあの3人を治してあげないと

あの3人の石像を見つけて、もうかなり日数が経ってしまっている


いい加減に行かないといけない


気は進まないまま、ネロは数日ぶりに転移魔法を選択した

薄紫の魔法陣が空に浮かび上がり、花びらが舞い散る


行き先は、あのピークパッツァと、あの光の渦を見た最後に行った場所だ

黄色の花吹雪を撒き散らして、到着先の夕暮れの大きな川はサラサラと清らかに水を揺蕩わせている筈だった

しかし、其処には抉れた地面しか存在しなかった

幾重にも抉られた地面は湿っぽく、恐らく川が存在していたのかもしれない

かなりの広域の森や川は無惨に斬りつけられたように荒廃していた

抉れた地面をよじ登ると、其処は間違いなく見慣れた風景だった

何があったのだろうか?

ドキドキしながら、裾を払っていると、ポップアップに鑑定されていますが現れ、短剣を構えて、辺りを見渡すと大きな男が近くにいて、ネロをじっと見ていた

鑑定を阻害すると、金髪をさらりと靡かせて、碧眼の美しい軍服を身に纏った男が近づいてくる

いきなり、ミネルバに会うなんてーー!

冷や汗をかきながら、後退りする

「油断したよ。そういえば聖女だったね。暴露」

悍ましい笑顔をにこにこと浮かべながらミネルバが近づき、手招きするとふわりとネロの髪色が黒色に戻り、名前が戻った所を再び鑑定にかけられた

今度は阻害出来ず、鑑定されてしまった

ネロの本当のステータスも

「なるほど。聖女が恐れられ、すぐに生贄になるわけだ。ちょっとした人間兵器だな。ネロ、どうして言ってくれなかった?」

ミネルバの責めるような口調に思わず俯く

「ーーっ、バロイは?無事?」

はっと気付いて口にすれば、ミネルバの纏う空気が剣呑なものに変わる

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