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間話 ぐろ 飛ばしても大丈夫です クルルーシュカ視点
しおりを挟む長い夢を見ている気がする。
運命の番が現れて、その仲は誰にも引き裂けず幸せに暮らす。
たまに長生きの龍人が、その長い長い生涯の間に運命の番に狂い、身の破滅へと導かれるのを何度も見た
相手が人族だと最悪で、遊ばれて捨てられた龍人が相手もろとも番を殺したり
でも、それは自分に無関係だと思っていた。
私の運命の番は優しくて、きっと一途で純粋で、私だけを想ってくれると無条件に信じていた
船で、抱き合う犬と裸の亜貴を見た時、ガラガラと私の中で何かが壊れていった
気が付いたら、龍体化して亜貴をずっと宝物のように握りしめていた。
握り潰していなかった事に、どれだけ安堵しただろうか
眠っている亜貴を抱きしめて、飛べるだけ飛んで、その辺でうとうとしていたら、難しい顔をした側近のクリフ・セントラルと近衛隊に囲まれていた
「番様を殺してしまっては龍王様が後悔されます。一度、番様を塔に閉じ込めて時間を置いてはいかがですか?勿論、龍王様から見える塔にいたします。近衛に番様をお預けください」
まるで水中の中にいるような不思議な感覚だった。
そうだ、それが一番いい。今、亜貴に怖がられたら憎さのあまり本当に殺してしまうかもしれない。
番契約をしている点も、これに従えた理由だった。
亜貴を渡してから、私は毎日、塔を眺めている。
一度船から狼獣人を連れてきて、私の部屋で鎖で繋いで痛ぶることにした。
怯え切った瞳に、私の体温が下がっていくようだった
「番契約と、警告のにおいを無視したのは何故だ?私のものだとわかっていただろう?」
どうせ逃げられないのに、部屋の隅で丸まる狼獣人の背中に浅くナイフで切れ込みを入れていく
痛覚は皮膚表面近くが多いから、できるだけ皮膚を削ぐように切れ込みを入れていく
「お、おいら、め、命令、脅ざれで、やめで、やめで……ぎゃあああっ!!!」
「ん?でもさあ、2回目だよね?どれだけ目障りなの?」
亜貴がいる塔を眺めながら左目を抉ると、狼獣人は汚い涎と鼻水を撒き散らしながら泣き叫んだ
「だずげで、なんでも、なんでも、ずるがらっ!!!」
足元に縋り付き這いつくばる狼獣人の股間を脚の爪先でなぞる
「これがあるから、よくないんじゃないかな?亜貴と、なにしてたの?」
脚の指でジッパーを下げて、狼獣人の竿を取り出し、扱く
形にもならずフニャリとしたままのそれの下にある玉を両方、掴んで力を込めて握りつぶすと、狼獣人はのたうち回りながら、力無くひんひん泣いている
「汚れたから奴隷の苦役へ戻せ」
最初から、こうしていれば良かった。あれこれ悩まずに済んだのに
「亜貴に会おう。亜貴は目が覚めた?」
上機嫌で廊下に出ると、何故か兎獣人が飛んできて、俺の手を掴む
「クルルーシュカ、このままでは亜貴が死んじゃうよ、発情期の時に縋りついて謝罪させればいいじゃん!どうせ向こうから謝ってくるんだから!」
いつもは、聞かない話を私は聞く事にした。亜貴が、あの亜貴が私に縋り付いて謝罪するなんて、魅惑的だと思ってしまったのだ。
私を散々、傷つけた亜貴が、私以外受け入れられない亜貴が私に縋り付く
頑なに塔へは入れてもらえず、兎獣人が飛んできて、亜貴の発情期を待つよう進言してくる
毎日、亜貴がいる塔を眺めながら、亜貴が私に懇願するのを今か今かと待っていた。
もう、発情期の予定日を過ぎているのに
強情な亜貴に、いつしか私は祈るような気持ちで塔を眺めていた。
end
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