完結⭐︎龍人様の番

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出会い

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「そういえば龍人様が番様を探しているらしい。なんか」

もぐもぐとお菓子を食べながら同級生の木崎 巡きさき めぐが興味もなさそうに言ってきた

教室が静まり返る。巡は体躯も大きく、顔も美形なので女子達にかなり人気がある

だから、巡がこう言うだけで、クラスの女子がはしゃぎだし、巡君も興味あるの?とここぞとばかりに話しかけてる

「お城でパーティがあるみたい。オメガと女性は全員招待されるんだって」

「天上人じゃなくて、城下街にいるみたいよ」

「巡君のお嫁さんになりたい」

最後は何が違うかったが、要は天上人である龍人様が嫁探しをしているらしい

巡は女の子達と話をしながら、こちらの反応を伺っているのがわかる

チョコスティックのお菓子をぽりぽりと齧りながら、その視線には気付かないふりをする

巡はアルファ性で、俺はオメガ性だった

その視線に気付いてしまうと、何かが壊れる気がして怖かった

「亜貴にも来てるの?召集…」

何一つ見逃すまいと慎重になりながら聞かれたが、俺は首を振ってみせた

「俺は行かない。ゲームしてる方がいいし」

俺の言葉に巡の顔が、パァっと明るくなる。

その笑顔に周りが感嘆のため息を吐いていると、チャイムが鳴った


それから暫くして、召集の手紙が赤から黒に変わった頃、巡に呼び出されて巡の家に行く途中だったんだ

クルルーシュカが現れた

街中の人混みの中に、突如現れたドラゴンの馬車は俺の目の前に舞い降りて来た

御者が恭しく扉を開けると、白い白髪を靡かせて、イビルアイと呼ばれる紫色の縦長の虹彩は美し過ぎて恐怖を煽る

白い睫毛が伏せられ、妙な色気がある

周りの女性達が悲鳴を上げる超絶美形の長身の男は、腰を抜かしている俺の前にゆったりと歩いて来て、白く長い指にピンク色の桜貝のような磨き抜かれた爪の大きな手を伸ばしてくる

「見つけた。大丈夫?立てる?」

プルプルと怯える俺を、奴はいとも簡単に掬い上げ横抱きにする

「僕はクルルーシュカ。君の番だ」

愛おしそうに細められた目は、捕食者のそれで、興奮しているのか目がギラついている

「あ、な、なんか、何かのまち、間違いです……」

慌てて男の腕から逃げようと足掻くと、男の手の力が強くなり、ぎゅうと抱きしめられて、すーはーと髪の毛の匂いを嗅がれている

ヒィイいいと身を強張らせると、男はあっという間に馬車に乗り込んでしまった

そのまま膝に乗せられて、ドラゴンが飛び上がったので声にならない悲鳴を上げる

お腹の中がひっくり返るような浮遊力に、天上人達が暮らす天空の島にドラゴン達は駆け上がっていく

「あばばばばは、こわ、こわい、こわい!!」

浮遊力とがたがた揺れる馬車内はめちゃくちゃ怖い

目の前のクルルーシュカにしがみつくと、クルルーシュカは上機嫌になり、髪に唇を何回か落としながら、頭をぐりぐり撫でてくる

「ゆ、ゆうかい、誘拐です!か、帰して…ください!」

この時は未だクルルーシュカにちゃんと敬語を使ってたんだよな

「帰す?なぜ?」

心底わからないという顔をする美貌の男に目の前がくらくらする

天上人だからか?天上人だから何しても許されるのか?

「名前は?なんて呼んだらいい?」

そんなことよりと言わんばかりに指で頬を撫でながら囁く

甘い雰囲気に、ぷつりと緊張の糸が切れる

「亜貴でいいけど、降ろせよ!帰せ!」

もうこいつに敬語はいらない。そう判断した

「よしよし、怖くないからね。あ~可愛い可愛い♡」

すりすりとすり寄ってきて、クルルーシュカは最初からパーソナルスペースを守らない男だった

この後、空中庭園に連れて行かれて、逃げることも出来ないと知るのだった


end
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