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しおりを挟む「ありがとう、アリシア嬢」
リアンは素早く立ち上がると、手を繋いだままの彼女の指を引き寄せ、軽くキスをした。
そしてニヤリと笑いながら、上目で彼女を見ながら言った。
「いや、他人行儀な呼び方はやめよう。
ね?アリシア」
「ちょ、ちょっと!」
アリシアは慌てて彼から手を離すと、顔を真っ赤にしながら小声で言った。
「お芝居とはいえ、やりすぎですよ!」
「え?何が?」
「何って……」
必死になって抗議するも、リアンは笑うばかりで、取り合ってくれなかった。
そして
「ほらほら、そんなに文句言ってると、ビクター様に怪しまれるだろう?
もっと仲良さげにしなきゃ」
と言うと、アリシアの肩をグイッと引き寄せた。
ビクターの瞳の中で、嫉妬の炎が燃え上がる。
アリシアはその目を見ているとゾッとしたが、リアンは楽しげだった。
「……というわけですので。
ビクター様。アリシア嬢は、たった今から、私の婚約者となりました。
もうあなたの婚約者ではないのですから、今後は不用意に彼女に近づくのは遠慮して下さい」
「そ、そんな……アリシア。
冗談だろう?」
ビクターはフラフラと立ち上がると、アリシアに近づいてきた。
もちろんリアンが、さっと間に入る。
「ビクター様。言ったそばから、これじゃ、困りますよ」
「ですが‥……このままでは納得できません。
どうか、もう一度だけアリシアと彼女と話をさせて下さい」
「そう言われましてもねえ」
リアンは心底困ったように、しかめっ面をしていた。
しかし、唇の端が上がっているのを、アリシアは見逃さなかった。
「では、直接アリシアの口から、彼女の気持ちを聞けば、納得して頂けますね?」
「そりゃあ、まあ……」
ビクターは渋々頷く。
それならば、と、アリシアは口を開きかけたのだったが。
「じゃあ、アリシア。話してあげて下さい。
ビクター様ではなく、私の方を愛しているのだと」
とリアンに言われて、口を半開きにしたまま、動けなくなってしまった。
な、なんでそんなに、口にしにくいセリフを、わざわざ……!!
アリシアが睨んでも、リアンは何のその。
「さあ、早く早く!」
と嬉しそうに目を細めている。
これは完全に、良いおもちゃにされてしまっている……!
アリシアは、歯ぎしりしながら、両手を力一杯握りしめた。
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