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「昔からそうなんです。
アリスはいつだって、3人一緒が良いと言い張って、私とシェイマスについて回ってたんです。
幼い頃、私たちが川に入れば、アリスも一緒に入ってびしょ濡れになったり。
木に登ってみれば、負けじと登ってみせたり……。
まあ木登りは流石に無理で、落ちそうになったのを私が助けたんですけどね」
とマーティは笑って続けた。
「とにかく負けず嫌いで、止めろって言っても聞かない頑固なところがあって……」
懐かしそうに目を細めるマーティに、ネリーは言った。
「昔からずっと仲が良いんですね」
「そうですね。なんだかんだ言いつつも、仲は良いと思います」
「マーティ様が、どれだけシェイマス様とアリス様のことを大切に思っているのかが、よく分かりましたわ」
とネリーは言いながらスコーンをかじる。
その言葉にマーティは、はっとした様子で
「はい!そうなんです!」
思いがけず返事が大音量だったものだから、ネリーは危うくむせそうになってしまった。
喉につかえたスコーンを、慌てて紅茶で流し込む。
それから、ふうと息をつくと、涙目になりながらマーティを見た。
「そ、そうなんですね……」
「はい!
だから、あなたにも、アリスとシェイマスと仲良くして頂けたら嬉しいのですが……。
私の大切な人2人を、いつか、あなたにも同じように大切に思ってもらえたら、こんなに嬉しいことはありませんから」
ええー……。あなたと仲良くするだけでも精一杯なのに、あの2人とも仲良くするなんて、無理だわ……。
ネリーは思わず、心のままに言いそうになったものの、まさかそう言えるはずもなく、ぐっと堪えると
「ええ、もちろんですわ」
と微笑んだ。
これにマーティは、ほっとしたのだろう。
ストンと肩の力を抜くと、
「ああー、良かったー!」
と、髪をくしゃくしゃにして笑ったのである。
子どものように無邪気な笑顔に、ネリーは思わず見とれてしまった。
「嫌がられたら、どうしようかと思ってたんですよ!
ああ、でもこれでホッとしました!」
まだ目を離せないでいるネリーに気がついたのか、マーティは彼女に向かってニッコリと微笑んだ。
思いがけず、胸がドキリとしてしまって、自分のことながら慌ててしまう。
な、なにドキッとしてるのよ!私ってば!
「それに……」
マーティは目をそらさずに続けた。
「いつかは私も、あなたの大切な人になれれば良いのですが」
「え……」
ネリーはそれ以上、何も言うことが出来なかった。
鏡なんて見なくても分かるくらい、顔が赤くなっているのを感じる。
なんだか胸の奥がくすぐったいような感覚に襲われて、テーブルクロスの下で、モジモジと指を動かしていると
「では……今日は突然お邪魔してしまって失礼致しました。
そろそろお暇致します」
と、マーティが立ち上がったものだから、慌ててネリーも腰を上げた。
「とても楽しい時間でした。
よろしければ、またお邪魔しても?」
「ええ、もちろんです」
「ありがとうございます。
……では、スコーンが焼き上がる時間を見計らって、参りますね」
マーティがあまりに真面目くさって言うものだから、ネリーは一瞬言葉を失った。
それから、彼と顔を見合わせると、声を上げて笑ってしまったのだった。
アリスはいつだって、3人一緒が良いと言い張って、私とシェイマスについて回ってたんです。
幼い頃、私たちが川に入れば、アリスも一緒に入ってびしょ濡れになったり。
木に登ってみれば、負けじと登ってみせたり……。
まあ木登りは流石に無理で、落ちそうになったのを私が助けたんですけどね」
とマーティは笑って続けた。
「とにかく負けず嫌いで、止めろって言っても聞かない頑固なところがあって……」
懐かしそうに目を細めるマーティに、ネリーは言った。
「昔からずっと仲が良いんですね」
「そうですね。なんだかんだ言いつつも、仲は良いと思います」
「マーティ様が、どれだけシェイマス様とアリス様のことを大切に思っているのかが、よく分かりましたわ」
とネリーは言いながらスコーンをかじる。
その言葉にマーティは、はっとした様子で
「はい!そうなんです!」
思いがけず返事が大音量だったものだから、ネリーは危うくむせそうになってしまった。
喉につかえたスコーンを、慌てて紅茶で流し込む。
それから、ふうと息をつくと、涙目になりながらマーティを見た。
「そ、そうなんですね……」
「はい!
だから、あなたにも、アリスとシェイマスと仲良くして頂けたら嬉しいのですが……。
私の大切な人2人を、いつか、あなたにも同じように大切に思ってもらえたら、こんなに嬉しいことはありませんから」
ええー……。あなたと仲良くするだけでも精一杯なのに、あの2人とも仲良くするなんて、無理だわ……。
ネリーは思わず、心のままに言いそうになったものの、まさかそう言えるはずもなく、ぐっと堪えると
「ええ、もちろんですわ」
と微笑んだ。
これにマーティは、ほっとしたのだろう。
ストンと肩の力を抜くと、
「ああー、良かったー!」
と、髪をくしゃくしゃにして笑ったのである。
子どものように無邪気な笑顔に、ネリーは思わず見とれてしまった。
「嫌がられたら、どうしようかと思ってたんですよ!
ああ、でもこれでホッとしました!」
まだ目を離せないでいるネリーに気がついたのか、マーティは彼女に向かってニッコリと微笑んだ。
思いがけず、胸がドキリとしてしまって、自分のことながら慌ててしまう。
な、なにドキッとしてるのよ!私ってば!
「それに……」
マーティは目をそらさずに続けた。
「いつかは私も、あなたの大切な人になれれば良いのですが」
「え……」
ネリーはそれ以上、何も言うことが出来なかった。
鏡なんて見なくても分かるくらい、顔が赤くなっているのを感じる。
なんだか胸の奥がくすぐったいような感覚に襲われて、テーブルクロスの下で、モジモジと指を動かしていると
「では……今日は突然お邪魔してしまって失礼致しました。
そろそろお暇致します」
と、マーティが立ち上がったものだから、慌ててネリーも腰を上げた。
「とても楽しい時間でした。
よろしければ、またお邪魔しても?」
「ええ、もちろんです」
「ありがとうございます。
……では、スコーンが焼き上がる時間を見計らって、参りますね」
マーティがあまりに真面目くさって言うものだから、ネリーは一瞬言葉を失った。
それから、彼と顔を見合わせると、声を上げて笑ってしまったのだった。
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