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しおりを挟むさて、モーリスの父親であるアンソニー・アクランド侯爵と、母親のエリザベート・アクランド侯爵夫人は、帰宅するなり、真っ青になって互いの顔を見つめ合っていた。
もちろん、トーマスがしたためた手紙を読み、シェリナとモーリスの婚約破棄のことや、マデリンのことを知った為である。
「ほ、本当のことなの、これは。
まさか!信じられないわ」
エリザベートはガタガタと体を震わせて、椅子に座り込んでしまった。
アンソニーの方も、今にも卒倒してしまいそうな気分だったが、なんとか妻の隣に腰掛けた。
そしてそっと彼女の手を握ると
「とにかく、落ち着かなければ。
何かの冗談だと思いたいが……」
と言いかけたが、すぐに口を閉ざした。
悲しむ妻に、少しでも希望のある言葉をかけてやりたいのは山々だったが、そんなことをしても無駄だろうと、思い直したのである。
「いや、残念だが冗談ではないだろうな。
それにブライス伯爵が、こんな嘘をつく必要もないだろう」
アンソニーは大きく息を吐き出して、背もたれに深く寄りかかると、天を仰いだ。
エリザベートの瞳には、早くも涙が浮かんでいる。
「なんてことなの。まさか、モーリスが……」
「私も、とても信じられないよ。
しかしとにかく、まずはモーリスの話を聞かなければ。
この手紙だけで全てを判断するには……」
と言いかけた時だった。
大きくノックの音が響いたかと思うと、
「お父様、今いい?」
という大声がしたのである。
そして、まだ返事もしていないというのに、飛び込んできたのは、当のモーリスだった。
「お帰りなさい、お父様!
ああ、お母様も一緒だったんだね。
これは都合がいい!」
モーリスは、両親の顔色が悪いことなど気がつく様子もなく、早口に続けた。
「大切な話があるんだ!
帰ってきたばかりで疲れているだろうけど、少し話をしてもいいかな」
アンソニーとエリザベートは、息子の上気した頬を、苦々しい顔で見上げた。
2人には、その顔を見ただけで分かったのだ。
トーマスの手紙は真実なのだ、と。
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