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よく晴れた空の下。
この日のカトリーヌは、実家であるオルディス男爵の屋敷にいた。

とうとうスチュアートに愛想を尽かした彼女は、全てを投げ出して実家に逃げ帰ってきていた……というわけでは、もちろんない。
では何をしに来たのかと言えば、庭園で開かれているお茶会に出席する為に来ていたのだった。

それも、ただのお茶会などではない。
正直、参加したくてしているわけではなかったのだが、こればかりは、カトリーヌが参加しないわけにもいかないお茶会だったのだ。

なぜなら……。

カトリーヌはカップを片手に、チラリと、人々に取り巻かれているレイラを見た。
頬を赤く染め、無邪気に笑いながら、隣に立つ男性の腕に手を絡めている彼女が、今日の主役だ。

そう、これはレイラの婚約披露の為のお茶会だったのである。

彼女の隣で嬉しそうに微笑んでいるのが、フランク・フェラー子爵令息。
彼こそが、レイラの言っていた『結婚を約束した人』だった。

スラリと高い背に、長い足。
形の良い眉に、心から愛おしそうにレイラに向けられた青い瞳。
彼は誰もが納得するような、整った容姿の持ち主だった。

カトリーヌは紅茶を口に含みながら、小さく頷いた。
確かに得体の知れないスチュアートに嫁ぐよりも、この男に嫁いだ方が良いに決まっている。

しかし、と、カトリーヌは、ほんの少しだけ唇の端を上げた。


容姿だけで言えば、スチュアートの方がハンサムだわ。
……性格には、相当の難があるけど。


それにしても、と彼女はカップを置いて辺りを見回した。

誰もが皆、各々の隣にはパートナーの姿があった。
1人で参加しているのなんて、カトリーヌくらいのものである。

それが余程目立って見えるのだろう。
ここに来てから、チラチラ向けられる視線を頻繁に感じていた。

カトリーヌはため息をついた。

「だって仕方ないじゃない……。
スチュアート様には、一緒に来て欲しいなんてお願い、あれから言えるタイミング無かったんだもの」

実はカトリーヌは、今日に至るまでの間、何度かスチュアートに話しかけようと思ったのである。
しかし顔を合わせれば、彼はすぐに、怒ったような顔をして逃げていってしまうものだから、言う暇がなかったのだった。

そこで仕方なく、1人でやって来ていたのだが、やはりこうして皆の噂のタネになってしまうのは、避けられないようだった。
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