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52:ジュリアの穏やかな日々②
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ジュリアがにっこりと微笑み、頷いてからは早かった。
とんとん拍子に話は進み、婚約、そしてつつがなく結婚式が行われた。
どんな不幸せな結婚でも構わない、とすら思っていたのだが、ありがたいことにハリーは評判通りの好青年だった。
その上、驚いたことに『以前からジュリアに好意を持っていた』というのは社交辞令でも何でもなく、本心だったらしい。
「話しかける勇気はなかったけれど、ずっと気になっていたんだ。
一目惚れなんて言うと、気味悪がられてしまうかな。
でも、まあ……きみに婚約者がいることは知っていたから、遠くから見ていることしか出来なかったんだけどね」
恥ずかしそうに笑うハリーの横顔を見ていれば、自然とジュリアの頬も緩んでしまった。
始めこそハリーには特別な感情を持っていなかったジュリアだが、今では違う。
いつしか2人は、静かな、しかし確かな愛の絆で結ばれていた。
ダニエルを愛していた時には、まさか彼以外の人を愛す日が来るとは想像もしていなかった。
けれども今は自信を持って言える。
ハリーだけを深く愛しているのだ、と。
そして、この気持ちは生涯変わらないだろう、と。
ジュリアはハリーと並んでソファーに腰掛けながら、彼の肩に頭をもたせかけ、目を閉じた。
ハリーは微笑みながら、そうっと彼女の指に、自身の指を絡ませてくる。
少し熱いくらいの彼の体温を指先に感じながら、ジュリアは自分の腹に手を当てた。
そして、この中に宿った小さな命に思いを馳せた。
彼女にとっては、ずっと、仲のいい自分の両親が理想の夫婦だった。
今度は、この子にとっての理想の夫婦に、自分達がなる番だ。
ジュリアは、ふふっと笑いながら、ハリーを見上げた。
子どもを授かったと言えば、彼はどんな顔をするだろう、と想像しながら。
「あのね、ハリー。
実は、私……」
おしまい
とんとん拍子に話は進み、婚約、そしてつつがなく結婚式が行われた。
どんな不幸せな結婚でも構わない、とすら思っていたのだが、ありがたいことにハリーは評判通りの好青年だった。
その上、驚いたことに『以前からジュリアに好意を持っていた』というのは社交辞令でも何でもなく、本心だったらしい。
「話しかける勇気はなかったけれど、ずっと気になっていたんだ。
一目惚れなんて言うと、気味悪がられてしまうかな。
でも、まあ……きみに婚約者がいることは知っていたから、遠くから見ていることしか出来なかったんだけどね」
恥ずかしそうに笑うハリーの横顔を見ていれば、自然とジュリアの頬も緩んでしまった。
始めこそハリーには特別な感情を持っていなかったジュリアだが、今では違う。
いつしか2人は、静かな、しかし確かな愛の絆で結ばれていた。
ダニエルを愛していた時には、まさか彼以外の人を愛す日が来るとは想像もしていなかった。
けれども今は自信を持って言える。
ハリーだけを深く愛しているのだ、と。
そして、この気持ちは生涯変わらないだろう、と。
ジュリアはハリーと並んでソファーに腰掛けながら、彼の肩に頭をもたせかけ、目を閉じた。
ハリーは微笑みながら、そうっと彼女の指に、自身の指を絡ませてくる。
少し熱いくらいの彼の体温を指先に感じながら、ジュリアは自分の腹に手を当てた。
そして、この中に宿った小さな命に思いを馳せた。
彼女にとっては、ずっと、仲のいい自分の両親が理想の夫婦だった。
今度は、この子にとっての理想の夫婦に、自分達がなる番だ。
ジュリアは、ふふっと笑いながら、ハリーを見上げた。
子どもを授かったと言えば、彼はどんな顔をするだろう、と想像しながら。
「あのね、ハリー。
実は、私……」
おしまい
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