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13:ケインの待ち伏せ②

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「それはそれは。
楽しい時間を過ごされていたようで、なによりです」

やっと、長い長いジュリアの話が途切れたものだから、ケインはすかさず言葉を挟んだ。
そうでもしないと、彼女はまだまだ一人で話し続けそうだったのである。

ジュリアが警戒心を解いてくれているのはありがたいが、かといって、いつまでも彼女のお喋りに付き合いたくもない。
ケインは強引に自分のペースに持っていこうと、彼女が口を開く間も与えずに、言葉を続けた。

「ではきっとダニエルも、あなたの美しいドレス姿を想像して、喜んでいたでしょう?」

ケインが言うと、ジュリアはクスクス笑いながら、長いまつ毛をふせた。

「いえ……あの方は欠伸してばかりでしたわ。
一応、気づかれないように、こっそりとでしたけど」
「でも、バレバレだったわけですね」

ジュリアのことなど眼中にないダニエルのことだ。
相手がルイーズならともかく、ジュリアなら、長時間の打ち合わせに心底飽き飽きしていたことだろう。

「まったく、あの男は!」

ダニエルの眠そうな顔を想像しながら、ケインはここぞとばかりに声を荒げてみせた。
これを機に、彼を悪者に仕立て上げようという魂胆である。

なにげなく周囲に目をやったが、幸いなことに、目の届く範囲に人影はない。
これはチャンスだ、と心の中でニンマリとした。

何気なく、木が多くて人から見えにくそうな道を選んで進んでいたが、そうとは気づいていないらしいジュリアは、素直について来ていた。

「でも仕方がありませんわ。
男性はどうしても、ドレスのことなんて興味はないでしょうし」
「そんなことはありませんよ!」

大したことではない、という顔のジュリアに、ケインはさらに言葉を重ねていく。

「そこはもっと怒って良いところです!
男だって、本当に好きな相手なら、どんなことにでも興味を持ちますとも。
僕なら、ジュリア様のウエディングドレス姿を想像しただけで胸が熱くなってしまって……とても欠伸どころではありませんよ!」

ちょうど良く木々に囲まれた場所に来たところで、ケインが不意に立ち止まると、それに気が付いたジュリアも足を止めた。
そして振り返ってきた彼女の両手を、ケインの手が強引に包み込んだ。

ジュリアの目が、まん丸になる。
そして次の瞬間、白い頬が紅色に染まったのを、ケインは見逃がさなかった。
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