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46 歴史的大戦
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それから三日後、シャナクについて新しい情報は無いものの、マーダ神殿西側の森に一万体以上ものモンスターが現れた。
遂に姿を現したそれらは、予想の二倍以上の大群。
しかし、マーダ神殿側もまた、各国の助力と冒険者ギルドの努力により、当初の予定していた人員数を遥かに上回っている。
その数8500。
そしてそれらの大軍の内、八千人が現在戦場に出ており、残りの五百人は街の中で不測の事態に備えて待機だ。
振り分けとしては、
冒険者 三千名
兵士 五千名
が外で隊列を組み、修行僧を中心とした五百人は町の防衛として待機。
人間8500人 対 モンスター10000匹
まだ両者の距離は離れているものの、間も無くすればその戦いの火蓋が切られる。
そう。今まさに、人類の命運をかけた戦いが始まろうとしていた。
当然人類側は必死だ。
マーダ神殿が落とされるという事は、人類が魔物に対抗する手段を失う事と同義。
転職ができないという事は、この世界の人間は基本職にしかつけない事を意味し、それは戦闘力という面で大きな弊害をもたらすだろう。
故に、これはマーダ神殿だけの問題ではない。この戦いは、人類全ての未来がかかっている。なので、絶対ここを落とされる訳には行かなかった。
とはいえ、それだけの一大事にしては人類側が8500人は少なすぎる様にも感じる。
人数的にはそれほど大差なく感じるが、魔物と人ではそもそものスペックが違いすぎるため、少なくとも魔物の数の三倍は人が欲しいところだった。
本来なら全世界からもっと集まるべきであったが、流石に遠く離れた国から纏まって集まるには時間が足りず、また、町としてもこれ以上の人を受け入れるキャパはない。
そんな訳で、今この街にいる人員で、この未曾有の危機を乗り越えるしか滅びの運命を回避する方法はないのである。
ちなみに今回の配置は、
町の外周に兵士 二千人
迎撃部隊 兵士 二千人 冒険者 二千人
遊撃部隊 兵士 千人 冒険者 千人
そして、マーダ神殿の町の中は
町防衛部隊 修行僧百人 冒険者二百人
宮殿防衛部隊 修行僧二百人
となっており、基本的には守りが中心である。
そして人間側の先頭には、当然ビビアン率いる勇者パーティが布陣していた。
「見えてきたわね……。」
「はい、敵の数は多いですがこちらも負けてはいません。私達は基本的に強敵中心に立ち回りましょう。」
ビビアンの声にマネアが返すも、二人の顔には、特に緊張は見られない。
「サクセス君は間に合わなかったわね。何かあったのかしら……あ、ごめんビビアン。」
二人の会話に入ったミーニャは、戦力として期待していたサクセスがまだ到着していない事に疑問を抱き、それを口にするが、直ぐにその口を閉じる。
何故ならば、自分よりもそれを気にしていたのはビビアンであり、それは今、口にする事ではなかった。
(これから戦闘なのに、私は何余計な不安をビビアンに与えてるのよ!)
と、内心で自分に毒付くミーニャ。
しかし、ふとビビアンを見ると、その顔に不安は微塵も感じられない。
むしろ、これからの戦いに向けて、目をギラギラさせている様にも映る。
「大丈夫よ。むしろ好都合だわ。サクセスが来る前にあいつらを倒せば、サクセスの危険が減るわ。」
そう答えるビビアンは、ミーニャの予想に反して冷静だった。
どうやらビビアンは、これまで色々と経験をした事で精神的に成長していたようである。
その姿を見たミーニャは、心強く思うと同時に安心した。
そんな事を全く知らないブライアンは、普通にそのまま会話に入る。
「そうでござるな。サクセス殿の雄姿を見れないのは残念でござるが、ここは吾輩達で倒しましょうぞ。吾輩は他の部隊に指揮を出します故、勇者様はご自身の戦いに専念していただいて結構でござる。」
そう。
今回の作戦で、ブライアンは一緒には戦わない。いや、ビビアンのパーティとしては、というのが正確だ。
これだけの大部隊であるが故に、誰かがそれを指揮しなければならず、その指揮官こそがブライアンである。
当初、神官長はその指揮を勇者であるビビアンに願い出たが、ビビアン自身が面と向かってそれを拒否した。
そこで白羽の矢がたったのがブライアンである。
王国戦士長の肩書きは伊達ではないし、勿論、それに見合った経験もあった。
その為、部隊指揮はブライアンが取ることになり、ビビアン達は遊撃として好きに暴れ回ることになっている。
実際、これは間違いのない選択だった。
確かに個人戦力であれば、ビビアンの右に出る者はいないが、部隊の指揮となれば話は変わるし、正に宝の持ち腐れと言えよう。
故に今回の戦いにおける布陣としては、現状がベストに違いない。
そしてブライアンの言葉を受けたビビアンは、少しだけ顔を下に向けると、すぐに顔を上げて戦場を睨みつけた!
「わかったわ、面倒くさい事は今までシャナクに任せてきたけど、今回はアンタに任せるわ。アタシは雑魚共を蹴散らして、シャナクを見つけるのに専念するわね。」
「承知したでござる。それでは、勇者様。全軍に向けて一言願い申す。」
そうお願いされたビビアンは、馬に跨ると全軍が見える位置に移動すると、全軍の視線が一気に集まる。
「みんな聞いて! アタシが勇者ビビアンよ! 今回敵の数が凄く多いわ! 中には強力なモンスターも多いと思うの。でも安心して、そういう奴らはアタシが全部倒すから、アンタ達は死ぬ気で町を守りなさい。危なくなった奴は町に下げて回復させてあげて! そして最後に……この戦い、絶対勝つわよ!!」
その激しくも透き通った声が戦場に響きわたると、周辺一帯が一気に興奮の熱に包まれて、夕立の様な大歓声があがった。
「ウオーー!! やるぞおらぁ!」
「ミーニャ様! 勝ったらオラにご褒美を下さい!」
「おで がんばる!」
「キャーー! ビビアン様素敵ーーー!」
「俺、この戦い終わったら結婚するんだ……!!」
一部死亡フラグのような事を叫ぶ男もいたが、男女問わず一気に士気が高まった。
そして遂にモンスターの殆どは森を抜けて大草原に入ってくる。
巨人系・昆虫系・スライム系・けもの系・ゾンビ系・あくま系・自然系・鳥系
あらゆる系統のモンスターがその姿を現わした。
そしてその一番後ろの上空には、手足が六本生えた邪悪なモンスターが浮いて、気持ち悪い笑みを浮かべている。
「……シャナクは見えないわね。まぁいいわ、あの一番後ろの奴がボスかしら?」
不自然に空に浮いている禍々しいオーラを放つ魔物。それをビビアンが指を指しているのだが……隣にいるマネアがそれを見て肩を震わせていた。
「あ、あれは……ビビアン様気を付けてください。あのモンスターは伝説の破壊神……魔王ドシーです。」
どうやらマネアにはアレが何かわかっていたらしい。その言葉と表情は、その破壊神がどれほど危険であるかを物語っている。
しかし、それを聞いてもビビアンは怯まない。
それどころか、自分の獲物を見つけたといった、獰猛な顔つきになっている。
「ふん、丁度いいわ。あいつを倒せばシャナクの居場所がわかるかもしれないね。アレはアタシがやるわ!」
破壊神を目にしても全く動じないビビアン。
「でもおかしいわね、噂のデスバトラーがいないわ。あと、魔王はもう一人いるはず。ビビアン、油断しないでね。」
確かにミーニャが言うように、この場所にデスバトラーがいないのはおかしい。
ミーニャもまた、内から湧き出る嫌な予感が消えないでいると、ビビアンはそんな二人を見つめて言った。
「わかってるわミーニャ。アタシは一人で戦っているわけじゃない、みんなで戦うのよ。だから、お願い。アタシに力を貸して!」
その言葉はこれまでのビビアンと全く違う。
自分の事しか考えず、仲間を心から信頼していなかったビビアンはもういない。
そしてその言葉を聞き、全員が力強く頷いた。
遂に決戦の時は来た。
果たしてこの戦いの後、一体どんな結果が待ち受けているのであろうか……。
今、人間とモンスターによる歴史的大戦の幕が開くのであった。
遂に姿を現したそれらは、予想の二倍以上の大群。
しかし、マーダ神殿側もまた、各国の助力と冒険者ギルドの努力により、当初の予定していた人員数を遥かに上回っている。
その数8500。
そしてそれらの大軍の内、八千人が現在戦場に出ており、残りの五百人は街の中で不測の事態に備えて待機だ。
振り分けとしては、
冒険者 三千名
兵士 五千名
が外で隊列を組み、修行僧を中心とした五百人は町の防衛として待機。
人間8500人 対 モンスター10000匹
まだ両者の距離は離れているものの、間も無くすればその戦いの火蓋が切られる。
そう。今まさに、人類の命運をかけた戦いが始まろうとしていた。
当然人類側は必死だ。
マーダ神殿が落とされるという事は、人類が魔物に対抗する手段を失う事と同義。
転職ができないという事は、この世界の人間は基本職にしかつけない事を意味し、それは戦闘力という面で大きな弊害をもたらすだろう。
故に、これはマーダ神殿だけの問題ではない。この戦いは、人類全ての未来がかかっている。なので、絶対ここを落とされる訳には行かなかった。
とはいえ、それだけの一大事にしては人類側が8500人は少なすぎる様にも感じる。
人数的にはそれほど大差なく感じるが、魔物と人ではそもそものスペックが違いすぎるため、少なくとも魔物の数の三倍は人が欲しいところだった。
本来なら全世界からもっと集まるべきであったが、流石に遠く離れた国から纏まって集まるには時間が足りず、また、町としてもこれ以上の人を受け入れるキャパはない。
そんな訳で、今この街にいる人員で、この未曾有の危機を乗り越えるしか滅びの運命を回避する方法はないのである。
ちなみに今回の配置は、
町の外周に兵士 二千人
迎撃部隊 兵士 二千人 冒険者 二千人
遊撃部隊 兵士 千人 冒険者 千人
そして、マーダ神殿の町の中は
町防衛部隊 修行僧百人 冒険者二百人
宮殿防衛部隊 修行僧二百人
となっており、基本的には守りが中心である。
そして人間側の先頭には、当然ビビアン率いる勇者パーティが布陣していた。
「見えてきたわね……。」
「はい、敵の数は多いですがこちらも負けてはいません。私達は基本的に強敵中心に立ち回りましょう。」
ビビアンの声にマネアが返すも、二人の顔には、特に緊張は見られない。
「サクセス君は間に合わなかったわね。何かあったのかしら……あ、ごめんビビアン。」
二人の会話に入ったミーニャは、戦力として期待していたサクセスがまだ到着していない事に疑問を抱き、それを口にするが、直ぐにその口を閉じる。
何故ならば、自分よりもそれを気にしていたのはビビアンであり、それは今、口にする事ではなかった。
(これから戦闘なのに、私は何余計な不安をビビアンに与えてるのよ!)
と、内心で自分に毒付くミーニャ。
しかし、ふとビビアンを見ると、その顔に不安は微塵も感じられない。
むしろ、これからの戦いに向けて、目をギラギラさせている様にも映る。
「大丈夫よ。むしろ好都合だわ。サクセスが来る前にあいつらを倒せば、サクセスの危険が減るわ。」
そう答えるビビアンは、ミーニャの予想に反して冷静だった。
どうやらビビアンは、これまで色々と経験をした事で精神的に成長していたようである。
その姿を見たミーニャは、心強く思うと同時に安心した。
そんな事を全く知らないブライアンは、普通にそのまま会話に入る。
「そうでござるな。サクセス殿の雄姿を見れないのは残念でござるが、ここは吾輩達で倒しましょうぞ。吾輩は他の部隊に指揮を出します故、勇者様はご自身の戦いに専念していただいて結構でござる。」
そう。
今回の作戦で、ブライアンは一緒には戦わない。いや、ビビアンのパーティとしては、というのが正確だ。
これだけの大部隊であるが故に、誰かがそれを指揮しなければならず、その指揮官こそがブライアンである。
当初、神官長はその指揮を勇者であるビビアンに願い出たが、ビビアン自身が面と向かってそれを拒否した。
そこで白羽の矢がたったのがブライアンである。
王国戦士長の肩書きは伊達ではないし、勿論、それに見合った経験もあった。
その為、部隊指揮はブライアンが取ることになり、ビビアン達は遊撃として好きに暴れ回ることになっている。
実際、これは間違いのない選択だった。
確かに個人戦力であれば、ビビアンの右に出る者はいないが、部隊の指揮となれば話は変わるし、正に宝の持ち腐れと言えよう。
故に今回の戦いにおける布陣としては、現状がベストに違いない。
そしてブライアンの言葉を受けたビビアンは、少しだけ顔を下に向けると、すぐに顔を上げて戦場を睨みつけた!
「わかったわ、面倒くさい事は今までシャナクに任せてきたけど、今回はアンタに任せるわ。アタシは雑魚共を蹴散らして、シャナクを見つけるのに専念するわね。」
「承知したでござる。それでは、勇者様。全軍に向けて一言願い申す。」
そうお願いされたビビアンは、馬に跨ると全軍が見える位置に移動すると、全軍の視線が一気に集まる。
「みんな聞いて! アタシが勇者ビビアンよ! 今回敵の数が凄く多いわ! 中には強力なモンスターも多いと思うの。でも安心して、そういう奴らはアタシが全部倒すから、アンタ達は死ぬ気で町を守りなさい。危なくなった奴は町に下げて回復させてあげて! そして最後に……この戦い、絶対勝つわよ!!」
その激しくも透き通った声が戦場に響きわたると、周辺一帯が一気に興奮の熱に包まれて、夕立の様な大歓声があがった。
「ウオーー!! やるぞおらぁ!」
「ミーニャ様! 勝ったらオラにご褒美を下さい!」
「おで がんばる!」
「キャーー! ビビアン様素敵ーーー!」
「俺、この戦い終わったら結婚するんだ……!!」
一部死亡フラグのような事を叫ぶ男もいたが、男女問わず一気に士気が高まった。
そして遂にモンスターの殆どは森を抜けて大草原に入ってくる。
巨人系・昆虫系・スライム系・けもの系・ゾンビ系・あくま系・自然系・鳥系
あらゆる系統のモンスターがその姿を現わした。
そしてその一番後ろの上空には、手足が六本生えた邪悪なモンスターが浮いて、気持ち悪い笑みを浮かべている。
「……シャナクは見えないわね。まぁいいわ、あの一番後ろの奴がボスかしら?」
不自然に空に浮いている禍々しいオーラを放つ魔物。それをビビアンが指を指しているのだが……隣にいるマネアがそれを見て肩を震わせていた。
「あ、あれは……ビビアン様気を付けてください。あのモンスターは伝説の破壊神……魔王ドシーです。」
どうやらマネアにはアレが何かわかっていたらしい。その言葉と表情は、その破壊神がどれほど危険であるかを物語っている。
しかし、それを聞いてもビビアンは怯まない。
それどころか、自分の獲物を見つけたといった、獰猛な顔つきになっている。
「ふん、丁度いいわ。あいつを倒せばシャナクの居場所がわかるかもしれないね。アレはアタシがやるわ!」
破壊神を目にしても全く動じないビビアン。
「でもおかしいわね、噂のデスバトラーがいないわ。あと、魔王はもう一人いるはず。ビビアン、油断しないでね。」
確かにミーニャが言うように、この場所にデスバトラーがいないのはおかしい。
ミーニャもまた、内から湧き出る嫌な予感が消えないでいると、ビビアンはそんな二人を見つめて言った。
「わかってるわミーニャ。アタシは一人で戦っているわけじゃない、みんなで戦うのよ。だから、お願い。アタシに力を貸して!」
その言葉はこれまでのビビアンと全く違う。
自分の事しか考えず、仲間を心から信頼していなかったビビアンはもういない。
そしてその言葉を聞き、全員が力強く頷いた。
遂に決戦の時は来た。
果たしてこの戦いの後、一体どんな結果が待ち受けているのであろうか……。
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