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第一章:アナザーニューワールド

60 昭和のヤンキー

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 しかし突然、そんな幸せ空間に不吉な声が届いた。


「お? なんだありゃ? 相棒! 変な物がこっち来てるぜバーロー。」


 ブライアンの声で、俺は幸せな妄想世界から戻る。


「砂煙……なんだあれ? え? 嘘だろ! なんでこの世界に……?」


 俺は、思いもよらぬ光景に目を見開いた。


「あれは? バイクと自転車……というより暴走族?」


 パラリラパラリラ!!


 そう。前方から突然現れたのは、昭和の匂いが漂う田舎のヤンキー集団。どう考えても場違いなその集団に驚きが隠せない。しかし、それをみたマリリン達は違った。その目に殺意を宿し始める。


「あれは……鬼族! もしかしてあいつらが村のみんなを!」

「鬼族……ゆるさない……仇!」


 マリリンが怒気の篭った声で叫ぶと、ヒヨリンもまた静かに怒りを表す。


「え? 鬼族って和服じゃないのか? 確かによくみると角が見えるな。だが、もしあいつらが村を襲った連中なら、ただではすませねぇぞ!」


 鬼族と聞いて、俺も怒りの闘志が滾ってくる。そして互いに近づくにつれ、その集団がよく見えてきた。

 その集団の先頭には、ファイアーボール模様の赤い単車に跨がる白い特攻服を着た鬼族がいる。そいつは、襟足の長い金髪リーゼントに角が生やした男だった。そして後ろには、中学生が無理してヤンキー仕様に変えたような自転車に跨る緑色の体をしたゴブリンが50人程連なっている。この世界でゴブリンとは始めた会ったが、その容姿は今までアニメで見てきたゴブリンと全く同じであった。


「おう、おめぇら! ちっと止まれや! あん? 聞いてんのかコラ! 止まれっつてんだよ!」

 先頭のヤンキー鬼が単車を横に滑らせて止まり、ブライアンの進行を妨げる。


「ブライアン、止まってみんなを降ろしてくれ。」

 
 今にも襲い掛かってきそうなそいつらを見て、俺は急いでブライアンを停止させた。すると、みんなを降ろしたブライアンは馬化を解除し、殺気立つ。


「おう、相棒。あいつらは俺っちがやっつけいいか?」

「ああ、よろしくっと言いたいところだけど、その前に一つ確認することがある。少しだけ我慢してくれ、ブライアン。」

「わかったぜバーロー。」


 俺の言葉にブライアンは拳を握り締めたまま止まった。


「シン、あのトサカ男、火の使い手ニャ。気を付けるニャ。」


 アズが俺にそう伝えると、俺は無言で頷く。なんとなくだが俺にも感じる。あいつは強い! すると、目の前のヤンキーは背中から金属バットを取り出して俺達に向けた。


「ごちゃごちゃくっちゃべってんじゃねぇよ! おめぇら、最近刀持ってた鬼族と喧嘩したか? ああん? 5秒以内に答えろや!」

「あ? それが人に聞く態度か、おい。そんなことよりも、お前らこそ昨日人族の村襲ったりしてないだろうな?」

「なんだとコラ? おめぇらの話なんざ聞いてねぇんだよ。俺が質問してんだよコラ、やんぞオラ?」


 ヤンキー鬼がそう言って一歩づつ近づいて来ると、挑発された事にブライアンは冷静を失って歩み始める。


「お? やんのかチビ。頭に尻尾生えてんぞバーロー。俺っちは鬼族には手加減できねぇぞ。」

「あん? てめぇこそ、なんだそのアゴは? アゴで笑いとってんじゃねぇぞコラ?」


 二人は顔面を近づけると、ブライアンは見下ろすように、ヤンキーは顔を斜め上にあげてメンチを切り合う。今にも戦闘が始まりそうだ。だが、まだ早い。重要な事が聞けていないぞ。


「ブライアンちょっと下がってくれ。」


 俺も二人に近づくとブライアンの肩に手をかけて、後ろに下げた。


「おい、そこのヤンキー。刀もってた奴らはお前の仲間か? そいつらなら、俺がぶっ飛ばしたぞ。文句あんならこいや、相手してやるよ。その代わり俺の質問にも答えろ、人族を攫ったのはお前か?」

「ああん? お前が? 随分と弱そうじゃねぇか。そいつらは俺の舎弟だ。うちの若いもんがお世話になったみたいじゃねぇか。」

「質問に答えてないぞ、人族を攫ったのはお前かって聞いてんだよ!」

「はぁ? いちいちひ弱な人族のことなんざ覚えてねぇよ、まぁどうしても聞きてぇなら、力ずくで聞いてみろや。それが鬼族のルールっちゅうもんだ。それに俺は、ただ強い奴と喧嘩してぇだけだ。まずは、この馬づらからボコってやんよ。」


 そう言うと、いきなりヤンキーはバットでブライアン目掛けてフルスイングする……が、ブライアンは軽々とそれを片手で受け止める。


「なんだチビ。よわっちいな。おうちに帰ってババァの乳でものんでなバーロー。」


 今度は逆にブライアンがバットを受け止めた逆の腕で殴りかかる……が、バックステップで躱された。


「やるじゃねぇか、あご割れ。おいてめぇら、邪魔が入んねぇように周りの奴らをやっちまいな。」

「おう、おめぇら聞いたか? 総長がタイマンだ。誰にも邪魔させんじゃねぇぞ。」


 その声で周りにいたゴブリン達は一斉に木製のバットやチェーン等を手に持ち始めた。どうやらブライアンとヤンキー鬼を一騎打ちさせるために俺達に襲い掛かってくるようだ。


「おい、あご割れ。てめぇは俺とタイマンだコラ!」

「お? タイマンってなんだバーロー?」

「一騎打ちってことだよ! このカスが!」


 その声を開始の合図に、二人は正面からぶつかり合うのであった。
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みんなの感想(3件)

花雨
2021.09.12 花雨

テンポがよく、読みやすくて私好みの作品です♪♪他の作品も見てみたいです(^^)

キミちゃん
2021.10.07 キミちゃん

いつもありがとうございます。
色々あり、しばらく小説から離れていましたがまた更新をしていきたいと思います。

解除
スパークノークス

おもしろい!
お気に入りに登録しました~

キミちゃん
2021.09.12 キミちゃん

いつもありがとうございます!
本当に感謝です。

解除
宝条咲玖
2021.09.11 宝条咲玖

序章から話のテンポが良く、疾走感を感じながらスムーズに読めます。
穏やかな日常から主人公がどこへ導かれていくのか、ハラハラしながら続きが気になってたまりません(。>ㅅ<。)
アレがアレとは盲点過ぎました(泣)←ネタバレ防止な代名詞乱発ッ!!

キミちゃん
2021.09.11 キミちゃん

感想ありがとう😭
今日明日で大分公開するので、是非楽しんで下さい!

解除

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