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第一章:アナザーニューワールド

48 地中に生えし恐怖の生物

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 しかし、そんな事を露ほども知らない者達がその場にはいた。


「キャーー! 化け物! ヒヨリン、逃げて! 化け物が来たわ!!」


 広場に響き渡るマリリンの絶叫。


「んん? どうしたの?」


 ヒヨリンは眠気眼を擦りながら、目の前に映る珍状に目を向けると……そのまま失神した。


 バタッ……!

 
 ヒヨリンが見たもの……それは地中に生えている


  アゴが三つに割れた化け物の顔


だった。


「ヒヨリン! ねぇヒヨリンしっかりして! なにしたの! この化け物め!!」


 マリリンは、地中に生えている化け物を睨みつけて叫ぶ。
 すると地面から今度は手が生えてきて、鼻をほじりながらその化け物(ブライアン)は言った。


「お? 土の中って温かくて気持ちいいな、このまま寝ちまいそうだぜバーロー」


 !?


 突然手を生やした化け物の奇行に、マリリンは後退る。
 しかし、守るべき者(ヒヨリン)が後ろにいる今、引くわけにはいかない。


「よくもぬけぬけとそんな事を! 何が狙いよ! もうすぐ強い人がくるんだからね!!」


 マリリンは得体のしれない化け物に対し、牽制するように言い放つ。
 しかし、ブライアンは自分に対して言われたとは思わず、その言葉を全く気にせずに辺りを見渡した。


「お? チビ助がいるじゃねぇか、お? そういえば相棒はどこだ? ふぁ~……。」

 
 そしてブライアンは、丸くなって寝ているアズを発見すると、そのまま寝てしまう。

 --その直後、更に上から何かが降りてきた。


 トンッ!


「わりぃ、遅くなっちまった。お~い、ブライアン生きてるかぁ~? っておま。埋まってるじゃねぇかよ……きもっ!! やばっ! まじでネタかよ!」


 俺は、ふわりと広場に降り立つと、地中に埋まっているブライアンを見て大爆笑。
 一方、人外ではない、同じ人族の容姿の者が降りてきたのを見てマリリンは俺に尋ねてきた。


「あなたは……もしかしてシンさんですか?」


 俺は、その声に振り返り、そこにいる美女を見つけて固まる……。
 そこにいたのは、この世界で初めてみた本物の人間……いや美女だった。


 う、うそだろ!? めっちゃいい女じゃん!
 この子が攫われていた子?
 おっしゃあぁぁ神様! グッジョブ!


 俺は心の中で盛大なガッツポーズを決めている。


「そうです、私が変なおじ……じゃなかった! シンです。」


 興奮しすぎて変な事を口走りそうになる俺。
 ちょっと、突然すぎてテンパってしまった。


「そう、やっぱりあなたがシンなのね。まずは礼を言うわ。助けてくれてありがとう。私はマリリンよ。」


 マリリンは助けてもらったとはいえ、初対面の人間に気を許すことはできない。
 まだ緊張感が残る今、若干話し方はきつめになっていた。


 あれ? なんかちょっと怒ってらっしゃる?
 美人だけどとっつきにくそうだなぁ。
 マリリンね、なんかあだ名みたいだな。


「いえいえ、困っている人を見たら助けるのが人の道ってもんです。何があったか話してもらえますか?」


 俺はとりあえず浮かれる気持ちをひとまず置いて、状況を確認した。


「えぇ……いいわ。そうね、私からも話そうと思ったの。それより、そこで埋まりながら寝ている化け物は何? あなたが使役している妖怪か何か?」


 妖怪って……。 プフッ!
 ブライアンどんまい。
 だよなぁ……やっぱり俺の感性は普通だったか。


「こいつは俺の友人でブライアンです。こいつは馬族と人族のクォーターなんだ。見た目はこんなだけど、優しい良い奴なんで怖がらなくて大丈夫ですよ。」

「そう……。良かった、敵じゃないのね。あ! だとしたら、とても失礼な事言ってしまったわ! 後で謝らなくちゃ。本当はお礼言わなきゃいけないのに。」


 マリリンは自分の失態に気付く。
 助けてくれた相手とは露知らず、あまりに失礼な事を叫んでしまっていたのだ。


「多分ブライアンは、気付いてないと思うから平気だと思うけど……。でも今回、ブライアンが気付かなければ助ける事もなかったし、こいつがいなければ助けられなかったのは事実だから、お礼は言ってもいいかもね。俺が言うのもなんか変な話だけどさ。」

「そう。でも後で、お礼を兼ねて謝罪をするわ。あなた優しいのね。」


 マリリンは俺に微笑みながら言うと、さっきまでの固さがやっと無くなるのだった。
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