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第一章:アナザーニューワールド

20 森の守護神

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 俺達は再度大樹に向かい歩き始めた。
 段々と目的の大樹に近づくにつれ、その大きさが桁違いであるのがよく分かった。
 幹の太さだけで東京ドーム位の大きさであり、高さは異次元すぎて全くわからない。

 そして、大樹まで後少しといったところで、人の声が聞こえてきた。


「この先は何人も通すことはできぬ、直ぐに立ち去れ!」
 

 どこからか聞こえてきたその言葉には、尊厳さと怒りが込められているのが伝わってくる。
 俺達はその言葉を無視して進んでいくと、目の前に何か巨大な物が落下してきた。


 ドーーーーン!!


 落ちてきたのは巨大なパンダ。大きさは5メートルはありそうである。

 え? パンダ? っつかデカすぎ!

 俺はあまりの大きさに動揺するも、とりあえず話しかけてみる。
 相手が虫ではなく言語を介する動物ならば、もしかしたら対話できるかもしれない。


「ここがどのようなところかわからず来てしまった事は大変申し訳なく思っております。しかし、どうしても探さなければいけない大事な仲間がいるのです! ご迷惑をかけるような事はしませんから、通してもらえないでしょうか?」

 俺は丁寧にそのパンダに事情を説明し、何とか穏便に争うことなく進もうと考えていた。
 しかし、それは大きな間違いだったと知る。
 パンダ達は降りてきた瞬間から、俺とブライアンを問答無用で殺すつもりであったが、殺気に鈍感な俺は気付かなかったのだ。

 しかし、幾度も鬼族と争ってきたブライアンだけは違う。
 殺気に敏感であったため、すぐに動いた。
 ブライアンは俺の前に立ちふさがると、パンダの1匹が風を切る速さで俺の方へ接近してくる。
 そして、するどい爪を立たせた手を振りかぶって、殺しに掛かってきた。


「えっ?」


 俺は状況が飲み込めず呆気に囚われていると、ブライアンはなぜか俺の方に向き直して四つん這いになった。
 そして、襲い掛かってくるパンダに対して片足を垂直に蹴り上げ、馬キックで応戦する。

 パンダが振り下ろした爪は、四つん這いになったブライアンに届くことなく空振りし、ブライアンの馬キックが隙だらけになったパンダAの腹に直撃した。


 バコーーーーン!!


 パンダは馬キックにより、木々をなぎ倒しながら後方に吹き飛び、そして電池の切れたロボットのように動かなくなる。


 「相棒下がんな! こいつらと話すのは無理だ、俺に任せろバーロー!」


 そういうと、ブライアンは再び立ち上がり、今度は右手を振り上げて、もう一匹のパンダに突っ込んだ。
 ブライアンは、幼い頃から数多くの修羅場を潜ってきている。
 その戦い方は一見すると「馬鹿なの?」と思える行動に見えるが、実際には理に適っていて、その才能は他の馬族とは比べ物にならない。

 ブライアンは物凄い速さでパンダに近づくと、振り上げた右手をパンダに向けて振り下ろす

ーーが早すぎたせいで空ぶった……ように見えて、実は違う。


 どうやら右腕を振り上げて突っ込んだのは殴るのが目的ではない。
 俺は、その光景をみて目を疑った。


「え? なんでそこでヒップアタック?」


 ブライアンは、振り上げた右手を空ぶることでその遠心力を利用し、体を反転させてパンダBの顔面にヒップアタックをかましたのだった。


「ヘイ! ホホーイ!!」


 奇妙な声を上げて繰り出したヒップアタックの威力は、さっきの馬蹴りとは比べ物にならない程の破壊力を有しており、直撃したパンダは「プギャーー!!」という情けない叫び声を上げながら、まるで某バイキン男のように空高く吹き飛んで消えていった。

 え? なにこれ?
 真剣バトルに突入したと思ったら、まだこれギャグパートなの?

 確かにギャグのような戦闘であったが、現実には銃を持ってしても到底倒せないような強大な敵に襲われて、瞬殺するという大金星。ブライアンは、まるで何事もなかったように俺のところに戻ると、気持ち悪い決め顔で「またつまらないものを斬っちまったぜバーロー。」とわけわからない事を言っている。

 だが、これだけは言わせてくれ。
 切れてるのはお前のアゴだけだ!


「おい……ブライアン。いやまじですっげぇけどさ、なんでいきなりぶっ飛ばしてんの? 俺は話し合いで解決しようとしてたのにさ。」

「お? 話し合いってなんだ? あいつらは最初から俺っち達を殺す気だったぜバーロー」

「いやいや、俺話しかけてたじゃん? まぁぶっ飛ばしたちまったもんはしょうがないけどさ、次からは戦う前に相談してよ。」

「お? よくわかんねぇけど、わかったぜ相棒!」


 俺はブライアンの突然の攻撃に苛立つものの、パンダ達は、話しかけているにも関わらず、問答無用で襲ってきたのも事実である。
 もしブライアンが動かなかったら自分は死んでいたかもしれなかったので、怒っていいのか感謝していいのか複雑な心境だった。
 
 
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