12 / 59
第一章:アナザーニューワールド
12 馬族秘技【バカ】
しおりを挟む
俺達はひたすら牧草や畑、田んぼしかない道を歩いている。
すると、不思議な光景を目の当たりにした。
「あれ? 馬じゃないか? 馬が歩いて畑を耕しているように見えるんだけど?」
「お? おお? あれは馬化(ばか)っていって、俺っち達はみんなできるぞ。馬化すると、疲れにくくて、早く走れんだ。」
「へぇ~、ブライアンもできるのか? つまり馬化したブライアンにのって洞窟まで行くってことなんかな。」
俺はそう言いつつも違う事を考えていた。
バカとは酷い変身ネームだな。
バカするって……プププ
思わず小さく笑ってしまう。
「俺っちのはすげぇぜ相棒、すげぇ馬化だぜ! 後で見せてやんぜバーロー。」
うん、知ってる。
凄いバカ
……プッ! プハ! プハハハハ……!
「うー腹いてぇ~もうやめて。これ以上笑わせないで!」
俺はついに腹を抱えて笑ってしまった。
「相棒、下痢か? 待ってるからその辺でしてきていいぜバーロー。」
「誰が下痢だよ! まぁある意味お前のせいで腹が下りそうだわ。」
しかしなるほどな、これが馬族の力を借りる理由か。確かにおんぶよりは現実的だ。
そうなるとやはり鞍と手綱は必須か。
そうこうしている内に、牧草地帯を抜けて藁ぶき屋根の家が立ち並ぶ集落のようなものが見えてきた。
「着いたぜ、相棒! じゃあ俺っちがすげぇ店紹介すっからよ、ビビッてちびんなよ!」
そう自信満々に言うブライアンの後ろを付いていくと、一軒のお店に入っていく。
「おう、オグラ! 邪魔するぜぇ、客連れてきたぞ。」
「はい、いらっしゃいま……帰れ!!」
店の奥から出てきたのは、オレンジ色のキャップ帽を被った、ブライアンより少し大柄な馬面の馬族だった。
純度100%の馬族である。つまりは顔が完全に馬。
「おう、オグラ、いきなり帰れはねぇだろ。せっかく俺っちが客連れてきたのによ。しかし相変わらずキャップが似合わねぇぜバーロー。」
そこでオグラは、ハッとブライアンの後ろにいる人影に気付く。
「なに? 客だと? おお、これはこれは人族の方ですね、いらっしゃいませ。ゆっくりご覧になってください。当店ではかなり希少な商品を扱っておりますので、よろしければ手に取ってご覧ください。」
ブライアンへの態度とはうって変わり、非常に親切なお客様対応である。
しかし、ゆっくり見てと言われてもなぁ……。
まぁ予想はしてたよ、信じた俺がバカだった……。
そう。ここに目的の物なんかあるはずがない。なぜならばここは……完全に虫専門のペットショップだった。
「なぁ、ブライアン。一応聞くけど見せたいものってなに?」
「おう、これよ! カブトムシとクワガタが戦っているところを見れる籠だぜ! すげえだろ!」
俺はその言葉を聞いて無表情になった。
凄いのはお前の頭だろ……。
「さて、他の店に行くか……。」
俺の切り替えは早かった。
「お? 相棒は虫が苦手か? 男のくせにだらしないぜバーロー。」
ちょっと残念そうなブライアン。
だが俺は、ブライアンを無視して店の外に出た。
すると、向かいの店に鞍が並んでいるのを発見する。
意図せずに早めに目的の店が見つけることができたため、俺は昆虫大戦争(笑)に夢中なブライアンを置いてそのお店に入ることにした。
店内にはピンク色のリボンをつけて、若干他の馬族よりまつげの長い馬顔の馬族いる。
どうやらその馬族が店員らしい。
「いらっしゃいませぇ~。あらん。イ・イ・男……。うっふ~ん。どちらの商品をお求めですか? 今なら私がなんとニンジン1本で買えますわよ。」
バチコーン!
盛大な音のウィンク音が部屋に鳴り響く。
「うわ……。」
どうやらこの馬族は牝馬らしい。
得体のしれない身の危険を感じた俺は、無表情で告げた。
「いえ、それは結構です。鞍と手綱がほしいです。」
だがしかし、その牝馬は簡単には引き下がらない。
「あらぁ、もう……。照れ屋さんなんだからぁ。私の事も買ってもいいのよーん。私を買ってくれたら、そんなものただであげちゃうわん。」
その牝馬は俺に近づくなり、腕を絡めて自分の押し売りを始める。
俺の顔が青ざめていくのがわかった。馬面に女性らしいボディライン。俺には色んな意味で刺激が強すぎたのだ。
グイグイ来すぎだろ。
馬面ヒロインは願い下げです。
俺は、これ以上ここに居たら自分の貞操が危ういと焦り、早急に商品を選ぶ。
「あ、じゃあ、これとこれ下さい。」
故に速攻で店先に置いてあった鞍と手綱を手にとって渡す。……のだが、さっきからこの牝馬がしつこくくっついてきて離れない。ダメだ……意識が飛びそうだ! 頑張れ俺! 後少しだ!
「んもー、イケズ……。でもそんなところもス・テ・キ。」
いや、もうほんときついっす!
誰か俺に目隠しを売ってくれ!
「あの……それよりも、その二つでニンジン何本ですか?」
「鞍が10本で手綱が5本になりますわぁん。」
俺は牝馬の猛烈アピールを捌きつつ、料金(ニンジン)を尋ねると意外に安かった。
随分と少ないな。
これなら貰ったニンジンで十分足りる。
ということで……俺はテーブルの上に、バックパックから出したニンジン15本を置くと、
「ありがとうございました!」
とだけ告げて、ダッシュで店を飛び出した。
すると、不思議な光景を目の当たりにした。
「あれ? 馬じゃないか? 馬が歩いて畑を耕しているように見えるんだけど?」
「お? おお? あれは馬化(ばか)っていって、俺っち達はみんなできるぞ。馬化すると、疲れにくくて、早く走れんだ。」
「へぇ~、ブライアンもできるのか? つまり馬化したブライアンにのって洞窟まで行くってことなんかな。」
俺はそう言いつつも違う事を考えていた。
バカとは酷い変身ネームだな。
バカするって……プププ
思わず小さく笑ってしまう。
「俺っちのはすげぇぜ相棒、すげぇ馬化だぜ! 後で見せてやんぜバーロー。」
うん、知ってる。
凄いバカ
……プッ! プハ! プハハハハ……!
「うー腹いてぇ~もうやめて。これ以上笑わせないで!」
俺はついに腹を抱えて笑ってしまった。
「相棒、下痢か? 待ってるからその辺でしてきていいぜバーロー。」
「誰が下痢だよ! まぁある意味お前のせいで腹が下りそうだわ。」
しかしなるほどな、これが馬族の力を借りる理由か。確かにおんぶよりは現実的だ。
そうなるとやはり鞍と手綱は必須か。
そうこうしている内に、牧草地帯を抜けて藁ぶき屋根の家が立ち並ぶ集落のようなものが見えてきた。
「着いたぜ、相棒! じゃあ俺っちがすげぇ店紹介すっからよ、ビビッてちびんなよ!」
そう自信満々に言うブライアンの後ろを付いていくと、一軒のお店に入っていく。
「おう、オグラ! 邪魔するぜぇ、客連れてきたぞ。」
「はい、いらっしゃいま……帰れ!!」
店の奥から出てきたのは、オレンジ色のキャップ帽を被った、ブライアンより少し大柄な馬面の馬族だった。
純度100%の馬族である。つまりは顔が完全に馬。
「おう、オグラ、いきなり帰れはねぇだろ。せっかく俺っちが客連れてきたのによ。しかし相変わらずキャップが似合わねぇぜバーロー。」
そこでオグラは、ハッとブライアンの後ろにいる人影に気付く。
「なに? 客だと? おお、これはこれは人族の方ですね、いらっしゃいませ。ゆっくりご覧になってください。当店ではかなり希少な商品を扱っておりますので、よろしければ手に取ってご覧ください。」
ブライアンへの態度とはうって変わり、非常に親切なお客様対応である。
しかし、ゆっくり見てと言われてもなぁ……。
まぁ予想はしてたよ、信じた俺がバカだった……。
そう。ここに目的の物なんかあるはずがない。なぜならばここは……完全に虫専門のペットショップだった。
「なぁ、ブライアン。一応聞くけど見せたいものってなに?」
「おう、これよ! カブトムシとクワガタが戦っているところを見れる籠だぜ! すげえだろ!」
俺はその言葉を聞いて無表情になった。
凄いのはお前の頭だろ……。
「さて、他の店に行くか……。」
俺の切り替えは早かった。
「お? 相棒は虫が苦手か? 男のくせにだらしないぜバーロー。」
ちょっと残念そうなブライアン。
だが俺は、ブライアンを無視して店の外に出た。
すると、向かいの店に鞍が並んでいるのを発見する。
意図せずに早めに目的の店が見つけることができたため、俺は昆虫大戦争(笑)に夢中なブライアンを置いてそのお店に入ることにした。
店内にはピンク色のリボンをつけて、若干他の馬族よりまつげの長い馬顔の馬族いる。
どうやらその馬族が店員らしい。
「いらっしゃいませぇ~。あらん。イ・イ・男……。うっふ~ん。どちらの商品をお求めですか? 今なら私がなんとニンジン1本で買えますわよ。」
バチコーン!
盛大な音のウィンク音が部屋に鳴り響く。
「うわ……。」
どうやらこの馬族は牝馬らしい。
得体のしれない身の危険を感じた俺は、無表情で告げた。
「いえ、それは結構です。鞍と手綱がほしいです。」
だがしかし、その牝馬は簡単には引き下がらない。
「あらぁ、もう……。照れ屋さんなんだからぁ。私の事も買ってもいいのよーん。私を買ってくれたら、そんなものただであげちゃうわん。」
その牝馬は俺に近づくなり、腕を絡めて自分の押し売りを始める。
俺の顔が青ざめていくのがわかった。馬面に女性らしいボディライン。俺には色んな意味で刺激が強すぎたのだ。
グイグイ来すぎだろ。
馬面ヒロインは願い下げです。
俺は、これ以上ここに居たら自分の貞操が危ういと焦り、早急に商品を選ぶ。
「あ、じゃあ、これとこれ下さい。」
故に速攻で店先に置いてあった鞍と手綱を手にとって渡す。……のだが、さっきからこの牝馬がしつこくくっついてきて離れない。ダメだ……意識が飛びそうだ! 頑張れ俺! 後少しだ!
「んもー、イケズ……。でもそんなところもス・テ・キ。」
いや、もうほんときついっす!
誰か俺に目隠しを売ってくれ!
「あの……それよりも、その二つでニンジン何本ですか?」
「鞍が10本で手綱が5本になりますわぁん。」
俺は牝馬の猛烈アピールを捌きつつ、料金(ニンジン)を尋ねると意外に安かった。
随分と少ないな。
これなら貰ったニンジンで十分足りる。
ということで……俺はテーブルの上に、バックパックから出したニンジン15本を置くと、
「ありがとうございました!」
とだけ告げて、ダッシュで店を飛び出した。
0
お気に入りに追加
16
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる