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エピローグ

11 腐りきった国

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 そんな中、葬儀場の中にいるシルクの心境は複雑だった。

 最愛の妹、そして職務を全うしたロイヤルガード達との別れに悲しみにくれたい気持ちも強かったのだが、ここの雰囲気があまりに想像と違い過ぎて、悲しみよりも怒りの方が強くなってしまったのであるる

 ここに悲しみはない……

 それがシルクの率直な感想だった。

 ここに参列している殆どが、戦死者達の死を悼む様子はなく、ただ儀礼的にその場に参列しただけにしか見えない。
 それどころかこの後の会食についての話や、全く関係のない事を談笑している者達さえいる。

 ここには戦死者の家族もいるというのに……あまりにこれは酷すぎた。

 泣いて悲しむ遺族の見える距離で談笑する貴族達。

 そいつらの命が今日まであるのは、一体誰のお蔭であると思っているのか?
 その様子を目にした遺族の気持ちを考えた事はあるのか?

 そんな怒りと疑問が浮かび続けるシルクは、もはや葬儀に集中できない状況だった。


(私に力があればこんな風にはさせなかった……。遺族……いや、本当に死を悲しんでくれる国民全てを参列させるべきなんだ。こんな葬儀になってしまってすまない、ローズ。)


 シルクは知っていた。


 この会場の外に、参列を希望した多くの人が集まっていることを。
 そしてその者達こそ、本来この葬儀に参加する資格があることを。

 しかし、その者らを入れないように命令したのが王である為、シルクにはどうする事もできなかった。


 父はこの葬儀が始まる前にいくつかの事をシルクに伝えている。

 一つ目は、この葬儀に併せて今後の国の在り方について説明する事。
 二つ目は、捕らえている貴族を本日をもって解放し、以前の役職に戻す事。
 三つ目は、亡くなったロイヤルガード達の家族に弔慰金(ちょういきん)等は渡さない事。

 一つ目と二つ目は事前に聞いていたため既に諦めていたが、最後の三つ目だけは納得できるものではなかった。

ーーしかし

 国の要人の為に死ぬ事は騎士の本懐であり、それに対して特別な対価を支払う必要はない。

 と言って一蹴すると、更には

 葬儀も行うつもりはない

 とあまりに無慈悲な事を話す次第。

 弔慰金はともかく、国の為に戦って亡くなった者を弔わない等あってはならない。

 故に、シルクはその後も粘り強く父を説得し、何とかローズの葬儀と一緒に弔う事を約束してもらったのだが……

 こんな葬儀になるとわかっていたならば、むしろ一緒に葬儀をしない方が良かったと後悔する。
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