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エピローグ
6 シルクの決意
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シルクはその手紙を読み進めていく内に、涙が止まらなくなった。
そこに書かれていたのは、もう存在しないローズの未来。ローズが求めていた未来そのものだった。
妹の気持ちは当然気付いていたし、いつかそんな事になるだろうとは思っていた。
どうやらこれは、今回の事が起きる前にローズが書いていたものらしい。
しかし、その未来は決して訪れることはない。その未来を守ってやれなかったのは自分だ。
それが胸を苦しく締め付ける。
そして、ローズは言った。
兄さまならば、きっとこの国を良くしてくれると。
ローズは心の底から信じていた。
こんな、無力で情けない兄を……。
なんとも言葉に言い表せない感情が、その胸に溢れ出てくる。
すると、ふと最後にローズが言った言葉を思い出した。
「私のもう一つの夢はね、カリーが夢を叶える事なの! だから、あなたは生きて! あなたが生きていれば、私は死なない。私はカリーの夢と一緒に生き続けるわ!」
ローズはカリーの夢と一緒に生き続けている。
体はなくとも、ローズは生きている!
あいつの……夢に……。
なら……私がするべき事は……。
シルクは手紙を大事に封筒に入れると、それを胸にしまった。
「王子……。」
「何も言うなゼン。わかっている。大丈夫だ、私にはやることがある。私の為に散っていった仲間達、そしてその家族の為に、私財を全て投じてでも手厚く対応するつもりだ。」
ゼンとしては、涙を流すシルクの心を案じただけであるのだが、シルクはそれに気づかずに自分への言葉……いや決意を口に出していたのである。
だが、ゼンは何も言わない。
理由はどうあれ、シルクの目はあの日以前の目に戻っていたからだ。
シルクは決意した。
自分が今後為すべき事の為に全てを捨てる事を。
ローズの夢は自分が叶える。
ローズが叶えられなかった夢こそが、自分が叶えるべき夢……そしてそれこそが、自分の生きる意味だ。
だがその前に王子としてやらなければならないこともある。自分の……いや王子として最後にやり遂げなければならないこと。
それが全て終われば……
そこに書かれていたのは、もう存在しないローズの未来。ローズが求めていた未来そのものだった。
妹の気持ちは当然気付いていたし、いつかそんな事になるだろうとは思っていた。
どうやらこれは、今回の事が起きる前にローズが書いていたものらしい。
しかし、その未来は決して訪れることはない。その未来を守ってやれなかったのは自分だ。
それが胸を苦しく締め付ける。
そして、ローズは言った。
兄さまならば、きっとこの国を良くしてくれると。
ローズは心の底から信じていた。
こんな、無力で情けない兄を……。
なんとも言葉に言い表せない感情が、その胸に溢れ出てくる。
すると、ふと最後にローズが言った言葉を思い出した。
「私のもう一つの夢はね、カリーが夢を叶える事なの! だから、あなたは生きて! あなたが生きていれば、私は死なない。私はカリーの夢と一緒に生き続けるわ!」
ローズはカリーの夢と一緒に生き続けている。
体はなくとも、ローズは生きている!
あいつの……夢に……。
なら……私がするべき事は……。
シルクは手紙を大事に封筒に入れると、それを胸にしまった。
「王子……。」
「何も言うなゼン。わかっている。大丈夫だ、私にはやることがある。私の為に散っていった仲間達、そしてその家族の為に、私財を全て投じてでも手厚く対応するつもりだ。」
ゼンとしては、涙を流すシルクの心を案じただけであるのだが、シルクはそれに気づかずに自分への言葉……いや決意を口に出していたのである。
だが、ゼンは何も言わない。
理由はどうあれ、シルクの目はあの日以前の目に戻っていたからだ。
シルクは決意した。
自分が今後為すべき事の為に全てを捨てる事を。
ローズの夢は自分が叶える。
ローズが叶えられなかった夢こそが、自分が叶えるべき夢……そしてそれこそが、自分の生きる意味だ。
だがその前に王子としてやらなければならないこともある。自分の……いや王子として最後にやり遂げなければならないこと。
それが全て終われば……
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